初めて査読をする人へのアドバイス:査読依頼を受け入れる

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初めて査読をする人へのアドバイス:査読依頼を受け入れる

査読は科学出版の基盤を成すものの1つであり、科学論文の質を評価する唯一の方法です。査読は、どのような研究も、公開前に専門家による厳密な審査を受けなければならないという原則に基づいて行われ、科学界全般や一般の人々にも関わるものです。査読者になるのは、その分野に精通した専門家とみなされている人です。査読者が研究の長所や短所に基づいて論文を評価すると、編集者はその評価をもとに、論文を受理するか掲載拒否するか、あるいは修正のための差し戻しを行うかどうかを判断します。査読プロセスは、編集者が掲載可否を決める際の判断材料の1つであることから、論文のみならずジャーナル自体の品質と信用を保つための拠り所でもあるのです。

出版論文数が増えるにつれ、研究者としての信頼が築かれ、編集者から査読の依頼を受けるようになります。狭い分野では、思いの外キャリアの浅いうちに査読の依頼を受ける著者も多いため、依頼を受けるべきかどうか分からないこともあります。初めて査読依頼を受けた場合、その依頼を受けるべきか戸惑うことも多いでしょう。その際に研究者たちが抱く疑問や懸念には、次のようなものがあります。

  • 自分には、この分野で専門家と呼ばれるほどの十分な経験があるのか?
  • 査読を行う論文に公正な判断を下せるだろうか?
  • なぜ査読に多くの時間や努力を払わなければならないのか? できれば自分の研究にもっと時間を使いたい。
  • 査読を行うとどのようなメリットがあるのか?
  • 論文の評価はどのように行えばよいのか?
  • 査読報告書はどのように書けばよいのか?

本シリーズでは、これらの疑問に答えることを目指し、初めて査読を行う人に、査読者が守るべき慣行のいくつかをご紹介します。

査読は純粋にボランティア(奉仕行為)であり、金銭的報酬はありません。また、かなりの時間と努力を投資することになる作業です。このため、初めて査読を依頼された人が、責任を持って引き受けることをためらい、時間と努力を自分の研究に使いたいと思ってしまうことも珍しくありません。しかし、自分が論文を投稿した時に、査読者からこの無償サービスの提供を受けたことを忘れてはいけません。つまり科学者は皆、科学界の一員として、ジャーナル出版システムがスムーズに機能し続けられるよう互いに助け合うことが求められているのです。


査読者が受ける査読のメリットとは?

査読によって経済的利益は得られませんが、具体的なメリットも十分にあります。査読経験を記載することでCV(履歴書)の見栄えが良くなるだけでなく、その分野の専門家とみなされることで、自分の評価を高めることができます。最近では、自分の査読活動をオンラインで公開し、査読活動に貢献したという記録を残すことができるPublonsというサービスを通じて、査読者たちの功績が認められるようになってきています。さらに、査読者になれば自然と分野の編集者や査読者のネットワークに入ることになり、協力し合う機会が増えます。また、査読は双方向型の学習プロセスと言えます。査読者は分野の発展に関する最新情報を得ることができ、査読する論文からさまざまなアイデアや技術、方法を学ぶことができます。若手研究者は、査読を行うことで査読者の視点が理解できるようになり、査読者が論文に何を求めているのかはっきりと認識できるようになります。それは、自分の論文を書く際にも生きてくるでしょう。


査読を引き受けるべきか?

査読を行うことの理論的根拠やメリットをお分かり頂けたでしょうか。査読依頼を受けることに前向きになった方もおられると思います。しかしここで、自分の能力に関する疑問が湧いてくるかもしれません。他人の論文を査読するということには間違いなく大きな責任が伴うため、確実に遂行できる態勢が整っていなければなりません。査読の依頼を受け入れる前に、次の3点を検討することが重要です

(1) 必要な専門的知識を持っているかどうか:査読者となるためには対象テーマを熟知している必要があり、研究の科学的な質、独創性、結果の重要性、影響を評価できなければなりません。

(2) 査読期限を守れるかどうか:査読期限を守ることは、評価につながります。仕事が山積していて、ジャーナル編集者が定めた期限内に完了できるか分からない場合は、査読を引き受けるべきではありません。

(3) 利益相反はないか:例えば、著者が友人または直接的な競合相手である、あるいは著者と以前論文で共著者だったことがあるなど、利益相反がある場合は、編集者にその旨を伝えて査読の依頼を断らなくてはいけません。

あなたがテーマを熟知しており、査読を期限内に終了できる見込みで、なおかつ利益相反に該当する事項がないならば、査読の依頼を引き受けるべきでしょう。

査読依頼を受け入れるかをどう判断したらよいかが分かったら、次は実際の査読を行う段階に進みます。そのためには、査読者としての責任と役割を理解し、研究の質を評価するための方法を知り、何といっても、査読報告書の書き方をしっかり押さえておかなくてはなりません。

これらについては、本シリーズの続編Reviewing a scientific manuscript responsiblyでご紹介します。

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