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査読のエキスパートに聞く:査読にまつわるQ&A

査読のエキスパートに聞く:査読にまつわるQ&A

 [本記事は、ウォルターズ・クルワーWalters-Kluwer)社のウェブサイトに掲載されたジム・フィッシャー(Jim Fisher)氏(同社マーケティング・マネージャー)による記事を、許可を得てここに再掲載したものです。]


1977年に女性として2人目のノーベル賞(医学・生理学賞)を受賞したロサリン・ヤロー博士は、医学に革命をもたらした放射免疫測定技術の共同開発者として、歴史にその名を刻んだ研究者です1


しかし、その論文は当初リジェクトされていました。The Journal of Clinical Investigation誌の1955年当時の見解は、「示されたデータは示唆的ではあるものの、現時点でそれ以上の肯定的評価を下すことは適切でない2」というものでした。このような経験をしたノーベル賞受賞者は、ヤロー博士に限りません。科学界では、このような事例がほかに7回も起きています。


査読は、議論の余地のあるテーマです。ヤロー博士に起きたような事例は、論文出版における査読プロセスのメリットについて、研究者に疑念を抱かせかねないからです。査読システムには確かに欠陥があるものの、その必要性は否定できません。査読は、助成金の配分、論文の出版、研究者の昇進、ノーベル賞授賞者の決定のための手段となっています3。その中でももっとも重要なことは、質の高い査読が果たす、研究者への基本的な役割です。質の高い査読は、研究の門番として、2つの役割を果たすことができます。1つは、編集者が論文の取扱いを決定する際の参考情報を提供することです。もう1つは、有意義な指摘や提言により、著者に論文を修正して再投稿するチャンスを与えることです4-5。ヤロー博士はそのチャンスを活かしました。彼女はリジェクト後も研究を続け、タイトルを若干変えた論文を1956年に発表しました。その数年後には、かつてのリジェクト通知を講義の中で紹介することを楽しんでいました6


とくに若手研究者にとって、査読者の仕事はベールに包まれていることでしょう。しかし、世界の一流の査読者たちが何を重視して査読を行なっているかを知ることは、非常に重要です。そこで私たちは、Publonsの仲間たちに連絡を取りました。(この場を借りて、同社マーケティング部門長のトム・カリー(Tom Culley)氏とコミュニケーションマネージャーのジョー・ウィルキンソン(Joe Wilkinson)氏に感謝の意を表したいと思います。)彼らの力添えのおかげで、Publons Peer Review Award 2017年)受賞者であるコロンビア大学のジョン・クーパー(John Cooper)博士とベルン応用科学大学のマヤ・ザムスティン=シャハ(Maya Zumstein-Shaha)教授に、インタビューを行う機会を得ることができました。


2人の査読者について


ジョン・クーパー(John Cooper)博士:成人の股関節・膝関節の再建外科学を専門とする外科医。熱心に研究に取り組むかたわら、研修中の外科医や研究員の指導も行なっている。現在のテーマは、患者の転帰に着目した股関節・膝関節の置換術および再置換術、前方アプローチ方式による股関節置換術、人工関節感染、人工関節周囲骨折などの合併症、さまざまな人工装具の故障モード等。


マヤ・サムスティン=シャハ(Maya Zumstein-Shaha)教授:ベルン応用科学大学保健学部の看護科学教授/看護科学修士プログラム副リーダー。高度実践看護や専門職種間の協働、倫理的問題、理論開発、腫瘍看護学などをはじめとする看護の新たな役割やサービス提供モデルに関する研究を行なっている。


Q&A


1. 査読を行うにあたって、編集長は査読者に何を求めているのですか?

クーパー博士:編集者が査読者に求めているのは、一般的に、論文の重要ポイントをまとめ、その研究がジャーナルの対象領域における重要な課題を評価するものであるかについての意見を述べることです。方法論については、論文で使われている統計的方法論を評価できるだけの知識を自分が持っているかどうか、研究デザインに方法論的な問題がないかどうかを見きわめます。さらに、研究結果が明確に示されているかどうか、研究の今後の課題について述べられているかどうかを評価することも求められます。考察については、結果から得られた知見の文脈内で、改善の余地があるかどうかを評価します。最後に、結論が妥当かどうか、飛躍しすぎていないかをレビューします。


ザムスティン=シャハ教授:私は過去20年間にわたって論文を査読してきました。査読を依頼されるのは、各ジャーナルと信頼関係を積み上げてこられたからだと思っています。ときには、著者のリクエストに基づいて査読依頼が来ることもあります。


2. 世界中の研究者からの論文投稿が増えている中で、査読のアプローチに変化はありましたか?


クーパー博士:著者の素姓は伏せられていることが多いので、論文の著者の国籍は分からないケースがほとんどです。しかし、膨大な件数の査読依頼が寄せられることもあり、そんな場合はすべてを引き受けることは不可能になっています。依頼を受けたときに考慮するのは、論文の内容であり、私の知見が論文にどのような価値を付与できるかということです。また、査読にどれくらいの時間を割けるのかについて、自分に正直になることも重要です。徹底的にレビューして適切なフィードバックを用意する時間を捻出できそうにない場合は、できるだけ早く断るようにしています。そうすれば、編集者はすぐに次の候補者を探しはじめられるので、査読プロセスの遅延を防ぐことができます。


ザムスティン=シャハ教授:アプローチはまったく変わっていません。著作の素姓は伏せられているのが普通です。


3. リジェクトの理由はどのようなものが多いですか?


クーパー博士:論文をリジェクトする理由でもっとも多いのは、以下の4つです:

(1) 方法論に関する懸念があり、その懸念が結果に悪影響を及ぼしている。

(2) 示された結果に対して、結論が正しくない、あるいは飛躍している。

(3) 誤字脱字や文法ミスなどが散見され、校正が不十分。

(4) 研究の質には申し分がないが、ジャーナルの対象領域から逸脱している。


ザムスティン=シャハ教授:論文をきっぱりとリジェクトするのは容易でなく、リジェクトには相応の理由が必要です。リジェクトを検討せざるを得ないときは、徹底的に見直すよう心掛けています。方法論的アプローチに不備がある場合は、リジェクトにつながることが多いように思います。そのような場合でも、その不備を具体的に指摘し、改善策を提案するようにしています。


4. フィードバックの中で、著者をどのようにサポートしていますか?


クーパー博士:ジャーナルにとって価値のある論文であろうとなかろうと、著者には建設的なフィードバックを行うことが大事です。私は著者に対して、リサーチクエスチョンへの回答となるように、結果をより明確に示すためのアドバイスを提供するようにしています。リジェクトされた論文であっても、臨床的インパクトを秘めた良質なデータが含まれていることは珍しくありません。問題は、その示し方なのです。論文の構成や構造、そしてリサーチクエスチョンの言い換えなどをアドバイスすることで、この問題は著しく改善することができます。論文に査読者の新鮮な視点を持ち込むことで、著者はデータへの新たなアプローチに気づけるのです。


ザムスティン=シャハ教授:私は、論文の長所からコメントするようにしています。その後で、改善の余地がある部分をできるだけ明確に指摘し、改善方法を提案します。また、役に立ちそうな参考文献などを紹介することもあります。


5. 査読付きジャーナルへの論文投稿を予定している新米著者に、アドバイスをお願いします。


クーパー博士:まずは、投稿先の対象領域に論文がマッチしているかどうかを確かめましょう。また、ジャーナルの投稿規定を順守し、誤字脱字、文法ミス、内容の誤りがないかなどを徹底的にチェックすることも重要です。査読結果がネガティブなものであっても、感情的にならないことです。ほとんどの査読者は、建設的な批評を行うことで、研究が本来持っているはずのインパクトを最大限に高めて論文を改善しようという気概を持って査読に臨んでいます。


ザムスティン=シャハ教授:論文は、すぐに書き上がることもあれば、何度も書き直さなければならないこともあります。経験上、論文を書き直す作業は非常に有益です。そうすることで、論文のメッセージをより明確にすることができ、重複箇所が見つかることもあります。また、専門分野が同じ友人の少なくとも1人に、相談役を頼みましょう。その人に論文を読んでもらって、分かりにくい部分などを指摘してもらうのです。複数の読者からフィードバックが得られる、論文執筆グループに論文を投稿してみるのもよいでしょう。そうすれば、一層完成度の高い論文に仕上がるはずです。また、ターゲットジャーナルの投稿規定は厳守しましょう。


参考資料:

  1. Kahn, C. R., & Roth, J. (2012). Rosalyn Sussman Yalow (1921–2011). Proceedings of the National Academy of Sciences, 109(3), 669-670. doi:10.1073/pnas.1120470109
  2. MacDonald, F. (2016, August 19). 8 Scientific Papers That Were Rejected Before Going on to Win a Nobel Prize. Retrieved August 28, 2018, from https://www.sciencealert.com/these-8-papers-were-rejected-before-going-on-to-win-the-nobel-prize   
  3. Smith, R. (2006). Peer review: A flawed process at the heart of science and journals. Journal of the Royal Society of Medicine, 99, 178-182.
  4. Milardo, R. M. (2015). Crafting scholarship in the behavioral and social sciences: Writing, reviewing, and editing. New York, NY: Routledge.
  5. Miller, S. A. (2014). Writing in Psychology. New York: Routledge.
  6. Roth, J. (2011). A tribute to Rosalyn S. Yalow. The Journal of Clinical Investigation. 121(8), 2949-2951. doi:10.1172/JCI59319.

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