査読者としての不安に打ち克つには

査読者としての不安に打ち克つには

初めて査読依頼を受けたときの緊張感は、今でもはっきりと覚えています。当時すでに5本の論文を出版しており、テニュア職への昇進を待っている状態ではありましたが、研究者としてはまだまだ未熟だと思っていました。それでも、編集者が私の論文を読んで査読依頼を出してくれたこと、専門家として認められたことが嬉しくて、依頼を受けることにしました。しかし、いざ依頼を受けてみると、大きな不安に襲われたのです。


私はこう自問しました。「自分は専門家として一人前なのだろうか?」、「私にこの仕事が務まるだろうか?」、「自分の研究にまだまだ改善の余地がある状態で、ほかの研究の審査などできるのだろうか?」。10誌以上で8年間査読を経験した今でも、ときおり「自分には必要な専門性が備わっていない」という不安に襲われます。しかし、経験を重ねる中で、この不安感に打ち克ち、著者が望む建設的なフィードバックを提供するための戦略を立てられるようになりました。
 

  • 査読を始める前に、「自分には、求められる専門性も、十分な経験と業績もある」と言い聞かせます。当然、すべてを知っているわけではありませんが、ある程度のことは知っています。それで十分なのです。必ずしも論文著者より優秀である必要はなく、ただその論文を査読するに値するレベルであればいいのです。このように自分を励ますことで、程よい心構えで査読に臨むことができます。
  • ジャーナルのscope and mission(領域と目的)と査読者ガイドラインを、毎回必ず読みます。何年も査読を担当しているジャーナルであっても、目的やガイドラインをしっかりと頭の中に叩きこんでおきたいからです。
  • 最初はペンを持たずに論文を読みます。画面で読むことが多い昨今でも、極力コメントの入力は避けています。このプロセスは、「こうあるべき」といった自分の考えを挟み込まず、著者が書いた内容を尊重して完全に吸収するために行なっています。ペンを持たないことで、校正をしたくなる衝動も抑えられます。たとえば、句読点の使い方などで気になる点があっても、細かな点を修正するのは私の役割ではありません。このようなことにこだわっていると、論文の構造や中身を評価するという本来の目的を見失ってしまう可能性があります。
  • 2回目に目を通すときは、全体的な改善点を考えながら読みます。論文の冒頭で説明しておくべきことはないか?未定義の概念や、セクション間の不自然な流れのせいで内容が分かりにくくなっていないか?方法セクションや結論に、説明が不十分な点はないか?2回目は、このような欠点だけでなく、論文の長所(研究結果の中でどの点に説得力があるか、同分野の研究者として結論のどの部分が魅力的か、分野にどのような影響を与え得るか、研究のもっとも重要な点は何か、等)をメモしながら読み進めます。
  • 次に、気になる点を列挙したリストを見直しながら、各部分を改善するためのアドバイスを書き足します。査読は建設的な行為であるべきなので、「ここが良くない」と言うだけでは不十分です。査読者は、良くない部分をどのように改善できるかをアドバイスできなければなりません。ほとんどの場合、解決策は1つではないので、私はいつも、自分の提案だけが正解ではないと伝えるようにしています。必要なのは、前に進むための可能性を著者に示すことです。
  • 総括コメントを書くときに大切にしているのは、「共感」です。査読者の仕事は、間違いをすべて指摘して著者をこき下ろすことではなく、可能な限り最高の論文に仕上げられるよう著者をサポートすることです。ですから、欠点を直すための建設的で丁寧なフィードバックと併せて、論文の長所についてポジティブなコメントを添えるようにしています。コメントは、「自分が著者の立場ならどのように言われたいか?」、「これを書くことで著者の助けになるか、あるいはただ傷付けることになっていないか?」という視点で書いています。


査読依頼を受けるたびに、初めて依頼を受けたときの「自分は査読者にふさわしくないのでは?」という不安を思い出します。しかし私は、この気持ちを、それに囚われるのではなく、査読者としての目的を明確化させるのに役立てています。著者が同じような不安に陥るようなことは、絶対に書きません。査読者も著者も共に専門家であり、相応の存在意義を持っています。私は、そのような感覚を強化したいと願いながら、査読に取り組んでいます。

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