初めて査読を行う人へのアドバイス:責任感をもって査読にあたる

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初めて査読を行う人へのアドバイス:責任感をもって査読にあたる

以前の記事で、初めて査読を行うときの不安や、査読依頼の受け入れの判断について考えました。査読を引き受けることを決めたら、それに伴う責任について理解することが重要です。


査読者としての責任

科学編集者会議(Council of Science Editors, CSE)の出版倫理に関する白書によると、査読者に期待されることは、公正な判断力と分野の専門知識だけではありません。査読者の責務には、以下のような項目も含まれます。

  • 論文の功績や科学的価値について、偏りのないフィードバックを適時に提供する
  • 論文の構成、科学的正確さ、独創性、ターゲットとする読者層との関連性、文章の簡潔さと明瞭さを評価する
  • 細部にまで目を配り、公正で建設的かつ有益な評価を下す
  • 個人的なコメントや批判は避ける
  • 査読プロセスの機密性を保持する
  • インフォームドコンセントの未取得の可能性や二重投稿の疑いなど、倫理的懸念があれば編集者に伝える

査読で最も難しいのは、論文の質を評価することです。まず何より、評価は全面的に客観的かつ公正なものでなければなりません。さらに、論文の科学的功績を判断するためには、その分野の専門知識を備えていることが必要です。そして、細かい点を見逃さず、ミスや論理上の欠陥、見過ごされがちな弱点などに気づくことができる能力が必要です。初めて査読をする人にとっては、とてつもなく困難な任務に思われるかもしれません。最初の査読の前に、自分が論文を投稿した際に受け取った査読コメントに目を通してみると、よい準備になるでしょう。ジャーナルの査読者向けの規定にも目を通し、査読基準が設けられているかどうかを注意深く確認しましょう。これらのことは、査読のために論文を読む際、何に注意すればよいのかを知る上で役立つはずです。


原稿の評価

査読を行う論文原稿を受け取ったら、素早く目を通します。「 A quick guide to writing a solid peer review(信頼性のある査読レポートの書き方ガイド)」と題した記事の中で、K. A. ニコラス(K.A. Nicholas)氏とW. ゴードン(W. Gordon)氏は、最初に論文原稿を読むときは「全体像の問題」に注意する必要があると説明しています。

この段階で注意が必要な事項

  • リサーチクエスチョンの重要度は高いか?
  • 研究に独自性があるか?
  • 研究分野およびターゲットとされる読者に関連性があるか?
  • すでに議論の行われているテーマか?
  • 既存の文献にとって、意義深い新たな貢献となるか?
  • 理解しやすい構成と文体で書かれているか?
  • 倫理的側面(利益相反、インフォームドコンセントなど)への対処ができているか?

論文を読みながら、メモをとりましょう。そうすれば、後で査読レポートに書くことを忘れずにすみます。1度読み終わったら、研究の要点を短くまとめてみましょう。ニコラス氏とゴードン氏は、査読者はこの段階で、その研究が出版可能かどうかを大筋で判断できるはずだと言います。方法や全体的な説明に重大な欠陥があって出版不可ということになれば、この段階で査読は終了となります。論文に致命的な欠陥がある旨を丁寧に説明し、裏付けとなる箇所を証拠として示しましょう。

2度目に読むときは、アブストラクト(抄録)から始めてセクションごとに区切って読み進め、それぞれの必要事項が網羅されているか確認しましょう。以下は、論文原稿の各セクションに含めるべき内容を確認するのに役立つ質問事項です

  • 抄録で研究の要点が要約されているか?
  • 序論で適切な背景情報が述べられているか?
  • 仮説と研究目的は明確に述べられているか?
  • 研究デザインには説得力があるか?
  • 方法は詳細に説明されていて、再現可能か?
  • 統計分析の手法は適切か?
  • すべての結果が報告されており、結果は妥当か?
  • 結果の解釈には説得力があり、データによって裏付けられているか?
  • 図表情報は理解しやすく、本文の情報と合致しているか?
  • 最新の文献が引用されているか?

読みながらメモをとって、小さなミスを訂正しましょう。さらに、ミスは重大なものと些細なものに分けましょう。こうすると査読レポートが書きやすくなります。


査読レポートを書く

論文原稿の評価が終了したら、査読レポートを書き始めます。書くときは、論文を2回読む中でとったすべてのメモを必ず揃えておきましょう。

  • 査読レポートの冒頭には、論文原稿に対する評価を簡潔にまとめた内容を書きましょう。
  • 研究についての印象をかいつまんで述べましょう。該当分野の既存の知識に役立つのか、ターゲットとなる読者が興味を持つかどうかを述べましょう。
  • その後で、個別のセクションに対するコメントに入ります。コメントは重大なものと些細なものに分けるとわかりやすいでしょう。
  • 論文の各セクションの内容と、構成や枠組みについてのコメントや提案を述べましょう。
  • 細かい点に関するコメントをまとめて書き出しましょう。(図表ラベルの誤り、スペリングや文法のミス、文体や書式のミスなど)
  • あまりに辛辣なコメントや、必要以上に批判的なコメントは控えましょう。自分がコメントを受ける側に回ったらどう感じるかを考えましょう。
  • できるだけ正直かつ建設的なコメントをしましょう。批判的な内容のコメントは、励ます調子で書き、問題に対処するための具体的な提案を含めるようにしましょう。
  • 編集者だけに見せるコメントの一覧を別途用意しましょう。
  • 剽窃、データ偽造等の倫理規定違反が疑われる場合は、編集者に報告しましょう。
  • 受理、掲載拒否、大幅修正あるいは小幅修正のどれが妥当であるかの判断を、理由を添えて編集者に伝えましょう。


査読は困難で大変な作業となる場合もあり、査読者に直接的な利益があるわけでもありません。しかし、査読プロセスは、科学研究と出版の公正さ・整合性の要です。このプロセスが維持されるよう努めることは、科学コミュニティの一員としての義務と言えるでしょう。査読者としての仕事は、科学コミュニティ全体にとって、非常に価値ある貢献なのです。

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