査読者への返答のコツ:新米著者へのアドバイス

査読者への返答のコツ:新米著者へのアドバイス

[本記事は、ウォルターズ・クルワー(Wolters-Kluwer)社の著者向けニュースレターAuthor Resource Reviewに掲載されたコンテンツを、許可を得てここに再掲載したものです。著者:エリザベル・ヒーヴィー(Elizabeth Heavey

PhDRNCNM、ニューヨーク州立大学ブロックポート校看護学部教授兼大学院課程コーディネーター、Nursing2018編集委員)]


私は研究者として数多くの論文投稿を経験してきました。査読を経た論文は、査読者からのフィードバックとともに、私のもとに返ってきます。今では査読者への返答にも慣れましたが、最初の頃は苦労したことをよく覚えています。


はじめは、査読者からのコメントをどう受け止めてどのように返答すればいいのか検討もつきませんでした。初めて受け取った査読コメントを読んだときは、「この人たちは私の論文が嫌いなんだ」という誤った解釈をしてしまいました。取り乱した私は、論文を机の引き出しに押し込み、一時的に作業を放棄しました。


返ってきた論文を指導教官が気にかけてくれたのは幸いでした。コメントを読んだ彼女は、それが条件付きのアクセプトであることや、初めての投稿論文のフィードバックとしては悪くないことを説明してくれ、必要な修正を加えて再投稿するよう励ましてくれました。私はその通りにして、結局その年の後半に論文は出版されました。新米著者に、論文を書いて知識や専門性を還元することの重要性を説くことはあっても、受け取った査読コメントへの返答の仕方を教えることは少ないのではないでしょうか。査読コメントへの対応について指導すれば、新米著者の論文出版をサポートできるだけでなく、そのノウハウをさらに広めてもらうことができます。以下に、新米著者へのアドバイスを送ります。


考え方を改める


論文の不明瞭・不正確・不適切な場所を見つけ出すのは査読者の仕事です。出版前に分野の専門家のチェックを受けてOKが出れば、言うことはありません。


査読者は、論文の改善点を見つけてくれるのです。その批評やフィードバックを、個人攻撃と受け止めないようにしましょう。単に「優れた論文」というコメントをもらっても、研究者としての成長はありません。詳細に書かれた建設的なフィードバックを受け取った方が、多くのことを学べます。したがって、査読コメントの大半は、論文がアクセプトされることを目的として、要修正と判断された箇所が指摘されたものだということを理解する必要があります。


論文の強みを指摘してくれる場合もありますが、ほとんどの査読者は、著者がそのテーマの専門家であると想定して査読プロセスを進めます。したがって、査読者は改善が必要な点のみを指摘するケースが多いでしょう。また、ジャーナルがあなたの論文の出版に前向きであったとしても、フィードバックには改善すべき点だけが書かれているでしょう。


返答の3ステップ


ステップ1まずは感謝を示すところから始めましょう。全体を通して丁寧なトーンを心がけましょう。


ステップ2受けた指摘を箇条書きにして、それぞれへの明確な回答を用意しましょう。


ステップ3再び感謝を示して締めくくりましょう。


指摘の内容が難しいものであったとしても、まずは査読を行なってくれたことに感謝を述べましょう。フィードバックに賛同できない箇所があったとしても、査読に費やした時間と労力には敬意を払う必要があります。


回答をまとめる


些細な編集上および文法上のミスを指摘される場合があります。これらについては、必要な修正を行なった上で、まとめて以下のように回答しましょう:「ご指摘の文法エラーについて、論文内の該当箇所すべてを修正いたしました」。指摘された部分の修正抜けがないように、また査読者や編集者が見やすいように、修正箇所の行番号を示すことを推奨する専門家もいます1。その他の修正箇所についても、本文内で場所を示し、査読者の指摘に沿ってどのように修正を行なったかを説明しましょう。妥当と考えられる指摘や、修正が容易な指摘については、査読者の言う通りに修正しましょう。論文にダメージを与えない限り、査読者のコメントにはなるべく従うようにしましょう。


指摘に同意できない場合


フィードバックの内容に、賛同できないものや不本意または修正不可能な指摘が含まれていた場合の対処方法は、状況によって異なります。修正が不可能、または多大な労力を要する場合は、次のように回答しましょう:「○○が興味深い点であるとのご指摘には同意いたします。しかし、この内容は本論文の対象領域を逸脱するものです」2。また、修正を加えたことでワード数が増えてしまうことがあります。このような場合は、ワード数を増やさないようにすべきか、増えても問題がないかどうかを編集者に確認しましょう。査読者が指摘しているからといって、必ず従わなければならないわけではありません。反対に、査読者が間違っていると思ったからといって、必ずしもあなたが正しいというわけでもありません3


また、「大変興味深いご指摘ではありますが、現状のデータの範囲では回答することができません」といった回答も有効でしょう。このように回答する場合は、その指摘を今後の研究課題とする旨を伝え、指摘に対する感謝を示しましょう。説明が不完全な情報で査読者が混乱した可能性もあるので、誤って解釈された可能性のある箇所がないかを慎重に探しましょう。そのような箇所があれば、次のように回答しましょう:「フィードバックのご指摘から、△△についての説明が不十分であったことを認識したため、より明確な説明に修正いたしました」。その際は、修正箇所の行番号も示しましょう。自分が間違っていないことを説明する場合は、査読者への回答文ではなく、本文内に説明を加える必要があるでしょう。


査読者間で意見が異なる場合


複数の査読者から異なる指摘を受ける場合があります。そうなったとしても、落ち着いて対処しましょう。それぞれの査読者が、まったく異なる視点で論文を審査しているのかもしれません。すべての査読者に丁寧に返答してください。論文を改善するためにそれぞれの意見にどのように対処したのかを論理的に説明しましょう31人の査読者からは表を追加するよう指摘され、もう1人の査読者からは内容を追加するよう指摘されたのなら、2つの指摘を合体させて、必要な内容を追加した表を付け加えたことをそれぞれの査読者に知らせましょう。査読者の意見が食い違っている場合は編集者に相談することも有効なので、必要に応じて編集者にアドバイスを求めましょう。


修正を前向きに捉える


修正を求められるということは、査読者が論文に価値を見出しているということです。そうでなければ、その場でリジェクトされるからです。そこまでたどり着いたことの喜びをかみしめたら、論文を可能な限り正確かつ徹底的に修正しましょう。期日に従うことも重要です。迅速に修正することで、コンテンツの新鮮さが保たれるからです。修正が遅れると、類似した論文が先に出版されて、あなたの論文に出版価値がなくなってしまう可能性もあります。査読者への回答が用意できたら、提出する前に、指導教官などの信頼できる上司に一部をチェックしてもらうようにしましょう。回答は編集者だけが目を通すこと多いですが、査読者に送られることもあるので、適切な回答文を用意しておくに越したことはありません。


次のステップ


修正を完了して論文の再投稿を終えたら、「リジェクト」、「再修正」、「アクセプト」のいずれかが記載された通知が届きます。アクセプトされれば、大きな達成感を得られるでしょう。しかし、「アクセプト」は出版プロセスの終わりではありません。出版準備が進められる過程で、編集者からレビュー用の論文コピーが届くので、修正、変更、明確化などを要求された場合は、迅速に対応しましょう。この時点で作業が遅延すると、印刷が間に合わなくなる可能性があります。無事に論文が出版されれば、これまでの一連のレビュープロセスがようやく報われます。論文を出版したということは、専門分野に大きく貢献したということであり、個人としても専門家としても、偉大な達成と言えるでしょう。


参考資料

  1. van Hilte L. 3 top tips for responding to reviewer comments on your manuscript. Elsevier Connect. 2015. www.elsevier.com/authors-update/story/publishing-tips/3-top-tips-for-responding-to-reviewer-comments-on-your-manuscript .
  2. Mudrak B. Peer review: how to respond to reviewers. American Journal Experts. 2015. www.aje.com/en/arc/dist/docs/AJE-Responding-to-Reviewers-2015.pdf.
  3. Annesley TM. Top 10 tips for responding to reviewer and editor comments. Clin Chem. 2011; 57(4):551-554.

Reprinted from Nursing2017: April 2017, Vol. 47, No. 4, p. 49-51.

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