論文の英訳で研究者が苦労すること10選

論文の英訳で研究者が苦労すること10選

自然科学分野で採録されている論文の90%以上英語で出版されています。また、研究成果をより多くの人々に届けることは研究者の責務の1つです。したがって、国際英文誌で論文を出版することは、非英語圏の研究者にとっても避けては通れないものでしょう。論文がより多くの人に読まれることで、被引用数が増える、共同研究や新たな研究プロジェクトにつながるチャンスが増える、ほかの研究者が知見を応用し科学の進歩に貢献できるチャンスが増える、といったさまざまなメリットが生まれます。


しかし、英語に苦手意識を持つ日本人は少なくありません。実際、EFEducation First)による英語能力指数ランキング2021年版)では、日本は112ヶ国中78位に位置しています。さらに、2011年の調査開始以来、日本は10年連続で順位を下げており、日本人の英語への苦手意識は改善するどころかますます高まっているとさえ言える状況です。


高等教育を受けた研究者であっても、同様の苦手意識を持つ人は多いのではないでしょうか。英語論文を執筆する場合も、まずは慣れ親しんだ日本語で草稿を書き、日本語を英語に翻訳するというプロセスをたどる研究者も多いでしょう。この記事では、論文を英訳するときによくする苦労をリストにまとめています。これらを参考に、自分の英語への苦手意識を整理し、今一度英語論文の執筆に向き合うきっかけになれば幸いです。

 

論文の英訳で研究者が苦労すること10


1. ライティングスタイルの違い

日本語では理由や事実を述べた後にそれらを結び付ける「結論」を書くのに対し、英語では結論となる「トピックセンテンス」で文章を始め、その後に理由をつなげるのが一般的です。この違いを認識しないまま日本語で書いた文章を直訳してしまうと、海外の読者を混乱させてしまうかもしれません。


2. 語順の違い

日本語と英語は、パラグラフの構成が異なっているだけでなく、文章単位の構成も異なっています。日本語は主語→目的語→動詞という順番で構成されているのに対し、英語は主語→動詞→目的語という順番になっているということだけを見ても、両言語がいかに遠い存在であるかが分かるでしょう。


3. 単語の選択

たとえば、「~が期待できる」を英訳するときに、「~is expected」という言葉が真っ先に頭に浮かぶかもしれませんが、文脈によっては「~is promising」という言葉を選択した方が適切な場合があります。選ぶ単語によっては意図するニュアンスが伝わらなくなってしまう可能性もあるので、単語選びは慎重に行う必要があります。


4. 冠詞の使い分け

名詞に「a」や「the」をつける習慣のない日本人にとって、冠詞は最大の悩みの種の1つでしょう。しかし、いらぬ誤解を招かないためには、不定冠詞(aan)と定冠詞(the)を正確に使い分けることはきわめて重要です。


5. 可算名詞と不可算名詞

英語には可算名詞(数えることができるもの)と不可算名詞(集合形式を表わすもの:「information」、「performance」など)がありますが、可算形式を持ちながら不可算形式での使用が好ましい単語(「data」、「research」など)もあるので注意しましょう。


6. 時制の使い分け

科学論文で使うべき時制は、IMRaD形式のセクションごとに異なります。たとえば、イントロダクションでは単純現在形、結果と考察では過去形で書くのが一般的です。


7. 能動態と受動態の使い分け

英語論文において、能動態と受動態の使い分けは昔から議論されているテーマの1つです。能動態は行為者を強調する文体であり、受動態は行為者が登場せず非人称的である代わりに冗長で分かりにくくなりがちな文体です。伝統的に、科学文章は「I」や「we」などを使用しない受動態が好まれてきましたが、近年では「研究論文とは分かりやすいものでなければならない」という考えのもと、米国医師会(AMA)や米国心理学会(APA)をはじめとする学術団体が能動態の使用を奨励するケースが増えています。


8. 大文字・小文字の使い分け

定数(Avogadro numberなど)、技術名(Raman spectroscopyなど)、反応名、プロット名(Koutecky–Levich plotなど)が人物にちなんで名付けられている場合、それらは固有名詞なので、語頭を大文字にします。ただし、「faradaic(ファラデー)」(faradaic currentなど)や「coulombic(クーロン)」(coulombic efficiencyなど)、「ohmic(オーム)」(ohmic dropなど)などのように、人物由来の名称であっても大文字にしない場合もあります。


9. 和製英語

日本には、ネイティブスピーカーには通じない「和製英語」と呼ばれる言葉が存在します。それらを和製英語であることを認識しないまま、英語に置き換えて使ってしまった場合、ネイティブスピーカーに通じないだけでなく、場合によっては誤解を生む可能性もあります。何気なく使っている単語が正式な英語であるかどうか、改めて確認する必要があるかもしれません。


10. 翻訳剽窃

過去に和文誌で出版した論文を英語に翻訳したものを英文誌に投稿すると、「翻訳剽窃」、または二重出版と見なされ、トラブルに発展する可能性があります。日本語で出版済みの論文の翻訳版を英文誌に投稿する場合は、出版元の和文誌と投稿先のジャーナルに必ず確認するようにしましょう。二重投稿や許容される二次出版の詳細についてはICMJEのガイドラインを確認してください。

 

学術翻訳サービスという選択肢


以上の苦労をすべて乗り越えたとしても、ネイティブスピーカーでない限りはその英訳の精度には疑問が残るでしょう。また、学術論文においてはネイティブスピーカーであるということ以外にも、その分野の専門知識を有する専門家でなければ、それが誤訳であるかどうかの判断も困難です。したがって、国際英文誌の水準を満たす論文に仕上げるためには、ネイティブスピーカーと分野の専門家の両方が、英訳した論文をチェックするというプロセスが非常に重要と言えます。


エディテージの論文翻訳サービス(プレミアム学術翻訳サービストップジャーナル学術翻訳サービス)は、一般的な翻訳会社が提供する翻訳サービスとは一線を画しています。正確な学術翻訳を提供するのは当然として、ネイティブスピーカーによる校正を含め、経験豊富な専門家、編集者、トップジャーナルの査読者が、論文が出版されるそのときまで著者をサポートし続けます。

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