データ共有を拒んだ著者の論文査読を拒否:査読者の対応に賛否

データ共有を拒んだ著者の論文査読を拒否:査読者の対応に賛否

心理学の分野で起きているデータシェアリングと透明性に関する論争が、再び世間の注目を集めています。米国心理学会(APA)が発行するジャーナルの顧問編集者、ゲルト・ストルムス(Gert Storms)氏は、著者から論文の元データの共有を拒まれたために査読を拒否したことを理由に、辞職を迫られています


ルーヴェン・カトリック大学(ベルギー)の心理学部教授を務めるストルムス氏は、データの透明性や共有の重要性を啓蒙する Peer Reviewers' Openness Initiative(査読者の開放性に関するイニシアチブ)を支持する研究者の1人です。このイニシアチブでは、規定の条件を満たさない論文に対して「査読を引き受けない、出版を認めない」ことを約束する査読者を募っています。データ共有を拒んだ著者の論文の査読依頼をストルムス氏が断ったのも、このイニシアチブに則ったということでしょう。


この問題は、ストルムス氏が、APAのJournal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition誌の顧問編集者として論文の査読にあたっていた際に、オープンデータを支持する意思をジャーナル側に伝えた2016年に端を発しています。同氏が査読を拒否すると、ジャーナル側は、編集委員会から身を引くよう求めました。ストルムス氏はこの要求も拒否し、「ずさんな科学を阻止する」という自身の責務を果たし続ける意思を表明しました。


ストルムス氏と共通の考えを持つ2人の編集者、ロバート・ハートスイカー(Robert Hartsuiker)氏とマーク・ブリスバート(Marc Brysbaert)氏は、Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition誌の編集者、ロバート・グリーン(Robert Greene)氏に、ストルムス氏支持を訴え、「ストルムス氏が辞職するなら自分たちも辞める」と訴えました。ハートスイカー氏は、「議論や批判的な声を受け止めず、ただ辞職を求める」ジャーナル側のやり方は不誠実であると批判しました。一方、グリーン氏によると、ストルムス氏の立場はAPAの方針(論文の投稿時や判定プロセス中に、データの共有を義務付けない)に反しており、著者に過失はないため、支持できないとしています。また、「現状では成り行きを見守ることしかできませんが、編集委員会からストルムス氏を追い出すつもりはありません。評議会で何らかの進展があるでしょう」と述べています。


心理学の分野でこのような論争が起きたのはこれが初めてではなく、過去にも、研究不正や再現不可能な研究結果に関する問題が複数回発生しています(例: オランダの心理学者ディーデリク・スターペル(Diederik Stapel)氏が執筆した高評価の論文に、いくつものデータの捏造・改ざんが存在したことが明らかになった)。カリフォルニア大学デービス校の心理学者、シミン・ヴァジール(Simine Vazir)氏は、透明性のない論文のインパクトや価値を測るのは、「ボンネットの中を確認せずに中古車を購入するようなもの」であるとして、査読中や出版後のデータ公開の必要性を説いています。ストルムス氏が支持するイニシアチブは、科学研究にはびこるこれらの問題に対処するために立ち上げられたものです。


学術コミュニティの一部は、Twitterでストルムス氏への支持を表明しており、オープンサイエンス支持者からは大きな反響が巻き起こっています。APAの評議会では、データシェアリングや透明性に関する方針の見直しを検討する必要があるでしょう。


この問題についてどのようなご意見をお持ちですか?ストルムス氏の立場を支持しますか?査読者から依頼があれば、データを共有しますか?下のコメント欄からご意見をお寄せください。


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Peer-review activists push psychology journals towards open data

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