北朝鮮は、核廃絶で科学界での存在感を高められるか?

北朝鮮は、核廃絶で科学界での存在感を高められるか?

20184月末、北朝鮮は核実験場を閉鎖することを約束し、この決定に伴って行われた韓国との南北首脳会談は、両国の関係改善を予期させるものでした。この前進を楽観的に受け止めれば、北朝鮮がより積極的に科学技術の発展に力を入れ、科学分野で国際的な存在感を発揮してくれることが期待できます。


北朝鮮はすでに科学研究への投資を行なっているものの、国際誌に掲載された論文はごくわずかで、韓国と比較するとその研究成果は十分とは言えません(2017年の論文出版数は、韓国の63000本に対し、北朝鮮は80本のみ)。このように、世界の科学に対する北朝鮮の貢献は、現状ではないに等しいと言えます。


しかし、世界の科学への北朝鮮の関わりが改められていることを示す事実もあります。最高指導者の金正恩氏は訪中の際、北朝鮮を「科学技術力および人材力を有する国家」にシフトさせていく考えを持っていることを明らかにしました。これまでは軍事力を強化するための研究に力を注いできた北朝鮮ですが、その研究分野は、材料科学、物理学、数学などにも徐々に広がりつつあります。


北朝鮮の核廃棄によって、同国の国際科学研究への関わりに拍車がかかると見られています。これまでは、中国、ドイツ、韓国との共同研究が大半を占めてきましたが、今後はさらに広範な地域との協力関係の構築が求められます。北朝鮮の研究者との共同プロジェクトに関わっているロンドン大学バークベック校の地震学者、ジェームズ・ハモンド(James Hammond)氏は、「科学は関係を構築することができるツール」であると述べています。


しかし、北朝鮮に課せられている国際制裁が、何らかの障壁になる可能性もあります。たとえば、米国人が北朝鮮に入国するには、特別な許可を受けなければなりません。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院(SAIS、ワシントンDC)米韓研究所のジェニー・タウン(Jenny Town)氏は、「共同研究に関心を示す人は多いでしょうが、制裁が厳しさを増す中では、その機会を十分に得ることは難しいでしょう」と指摘しています。


今回の政治的前進が、北朝鮮と諸外国との外交関係にポジティブな影響を及ぼすのか、そしてその関係性が世界の科学への北朝鮮の貢献にどのような役割を果たすのか、今後の動向が注目されます。


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参考資料:

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Bibliometric analysis of publications from North Korea indexed in the Web of Science Core Collection from 1988 to 2016

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