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トランプ政権、気候変動に関するパリ協定からの離脱を宣言

Jayashree Rajagopalan | 2017年9月29日 | 2,232 ビュー
トランプ政権、気候変動に関するパリ協定からの離脱を宣言

ドナルド・トランプ米大統領は、2年前に成立したばかりの気候変動の取り組みに関するパリ協定からの離脱を力強く宣言し、ホワイトハウスでの記者会見で、米国は「パリ協定の見直し、あるいは米国の経済、労働者、納税者らにとって公平な新たな取り決めについて交渉を開始する」と述べました。


この宣言の通り、協定を結んだ際の取り決めを米国がこれ以上果たすことはないでしょう。この取り決めには、発展途上国の温室効果ガスの排出量削減の促進や、気候変動影響への対応を強化するプログラム/プロジェクトを支援する、緑の気候基金への財政支援も含まれています。


2015年に採択されたパリ協定では、190ヶ国以上が団結して温室効果ガスの排出を削減することで、世界の平均気温上昇を、産業革命前と比較して1.5~2℃未満に抑えるという目標が掲げられています。同時に、海抜が低い島諸国の保護や、発展途上国/未開発国の化石燃料への経済依存の軽減が目指されています。


トランプ氏は「この協定では、気候変動への取り組みより、他国が米国から金銭的利益を享受することに重点が置かれている」と述べています。このホワイトハウスの方針には、同氏が説明するように、米国内の石炭産業の救済と石炭鉱業セクターの雇用率の低下を防ぐ意味合いがあります。また、この方針は、トランプ氏が共和党支持者に約束した「アメリカファースト」政策に沿うものでもあります。ニューヨークタイムズ紙は、トランプ氏は、パリ協定に従い続けた場合に米国経済のどのセクターが収益と雇用を失うことになるかを指摘することで、自身の判断を正当化していると報道しています。同氏はほかにも、同協定により2025年までに国内の雇用が270万人分喪失すると主張しています。


トランプ氏の声明に対する反応

トランプ氏による決定は、国内外のさまざまな機関から強い反発を引き起こしました。発表後数時間のうちに、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)は、パリ協定が「単一締約国の要請に基づいて再交渉することはない」との声明を発表しました。


米国の主要企業25社(アップル、フェイスブック、マース・インコーポレイテッド、モルガン・スタンレー、3M、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、コカコーラ、デュポン、ゼネラル・エレクトリック、ゴールドマン・サックス、ジョンソン&ジョンソン、JPモルガン・チェース、P&G、テスラ、バージングループ、ウォルト・ディズニー・カンパニーなど)は、パリ協定離脱の撤回を求める抗議文をトランプ氏宛てに発表しました。


革新的なクリーンテクノロジー市場を拡大することで、パリ協定は雇用や経済成長を創出することができます。米企業はこれらの市場をリードする立場にありますが、協定からの離脱によってそのような機会も失われ、報復措置に晒される可能性もあります。


ヘマン・タネジャ(Hemant Taneja)氏は Tech Crunchへの寄稿で、「石炭/石油産業は、高度なエネルギー関連の雇用の増大に伴って衰退するだろう」と指摘しています。ジェイ・インスリー(Jay Inslee)ワシントン州知事は、米国内の複数の州知事を代表し、トランプ氏の決定に対して次のように反対の意思を表明しています。「大統領が飛ばそうとしない飛行機のコックピットに、我々州知事が乗り込んで、これを飛ばすつもりです」。


また、複数の企業や州が独自に温室効果ガス削減への取り組みを続け、よりエネルギー効率が高いシステム構築を目指す意思を表明しています。フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏は、「パリ協定からの離脱は、環境にも経済にも悪影響を及ぼし、子どもたちの将来を危険に晒すものである」と批判しています。


オレゴン州立大学(コーヴァリス)の海洋生態学者で米海洋大気庁前局長のジェーン・ルブチェンコ(Jane Lubchenco)氏は、トランプ氏の今回の動きについて、「 大半の米国人やビジネスリーダーの意向を露骨に軽視するものであると同時に、米国人の健康、安全、経済的幸福を放棄した無責任かつ無神経な行い。国内外の最貧層の人々への影響を無視した道徳的問題と、科学的エビデンスを軽視する深刻な無教養の問題」を表していると述べています。


今後の展開

トランプ氏は離脱の意思を表明しましたが、米国は依然としてUNFCCCの一員であり、「環境問題について、米国が世界をリードする」ことを誓約しています。さらにパリ協定には、4年間は離脱できない規定があるため、トランプ氏が思い通りに事を進めるのは容易ではないでしょう。最終判断が下されるのは、(次期米大統領選の時期と重なる)2020年11月以降となります。今回のトランプ氏の動きは、他国にクリーン/グリーン・エネルギー産業をリードするチャンスを与えることにもなります。いずれにせよ、同氏の離脱表明に対する一般的な反応はネガティブなものです。パリ協定に調印している諸外国がこの問題にどう対応するのか、米国の離脱表明が国内外に即座に影響を与えるのか、今後の動向が注目されます。



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