福引ツイッターキャンペーン:受賞者インタビュー(3)

福引ツイッターキャンペーン:受賞者インタビュー(3)

2013年1月に実施した新年福引ツイッターキャンペーンにご参加頂き、見事A賞を受賞した3名の方にお話を伺いました。第2弾は公益財団法人 神奈川科学技術アカデミーで常勤研究員としてご勤務されている博士(工学)落合剛さんにインタビューしました。

 

まず、このツイッターに当選された際のご感想を

実はツイッターをするのもエディテージを利用するのも初めてで、何もかも初めてでした。勢いで応募してみたら、3人しか当たらない賞に当選してびっくりしている次第です。アカウントにKyokoという名前が入っているのですが、実は今年結婚したばかりでして、Kyokoは娘が生まれたらつけようと考えている名前です。当選者のアカウントとして出ていたのでびっくりしました。ちょうど海外へ年に2-3回は行くので、このようなカバンがいくつあっても足りない感じだったので非常に嬉しいです。

 

落合さんのご研究について教えてください

主に研究しているのは光触媒とダイヤモンド電極を使った環境浄化です。具体的な成果としては、企業さんと共同で新しい光触媒フィルターを開発して空気清浄器を作り、製品化しています。今までの光触媒式の空気清浄器は表面に酸化チタンを焼き付けたセラミックフィルターを使っていました。この中を空気が通る間に、UVランプでばい菌や悪臭を分解する仕組みです。しかし、セラミックは重くて、かたくて、もろいという性質があります。そこで、TMiPTMという新しい光触媒フィルターを作りました。チタンの0.2㎜厚のメッシュで、その表面に酸化チタンを焼き付けてあります。チタンなので柔軟性があり、丈夫で軽いので、効率的に反応ユニットの設計ができます。例えば、UVランプに巻きつけたり、挟み込んだりとか、自由に設計ができます。設計のちょっとした違いで、空気清浄器の性能が大きく変わってくることもわかりました。

 

これはどのような製品ですか?

冷蔵庫やクローゼット用の小型脱臭装置です。TMiPTMを電極として使い、放電で空気をプラズマ状態にし、発生する紫外線で光触媒反応を起こしています。さらにプラズマによる有機物分解反応も起こるので、小さくてもばい菌や悪臭を分解してくれます。ショッピングサイト からでも購入できるようになっています。1個3千円位です。このようにして、用途に合わせた製品の開発が可能です。今後は、空調のダクトなどに設置できる業務用の空気清浄機なども開発していこうと、企業さん達と野望を語っています。このような研究を通して、神奈川県の公的な研究機関の研究員として、産学公の連携を図っています。企業さんとの共同研究のほかにも、大学の学生さんを外研生として受け入れて、研究指導もしていたり、夏休みに子供向けの実験教室を開いたりもしています。

 

落合さんはいろいろな方と研究をされているのですね

はい、共同研究先の企業さん以外にも、いろいろな大学の先生方とも親しくさせていただいています。東京理科大学の客員准教授の立場も頂いていて、理科大で先生方や学生さんと研究することもありますし、慶應大や神奈川大の学生さんがKASTに来て研究することもあります。KASTには合計で10人以上の学生さんが来て一緒に研究をしています。指導する研究員は4人で、ちょうど大学の研究室のような感じです。  それぞれ違うテーマで研究をしていて、外国人研究者とも英語でディスカッションしたりしますし、とても良い環境です。また、出身の研究室によって全然雰囲気が違いますから、いくつかの大学の学生が集まって、議論をするというのは、おたがい良い刺激になると思います。

 

学生の方は英語論文の勉強をはじめていらっしゃいますか?

右も左もわからないような4年生の学生さんもKASTに来られるので、論文の英語に関しては最初はみんなかなり戸惑っていますね。私も学生時代そうでしたので、その気持ちがよくわかります。まずは、論文の内容の何が大事なのかを、しっかり読みとるように指導していきます。そのうちにすらすら読めるようになっていきますね。

学生の頃は英語が苦手で、論文を英語で書くなんてとんでもないと思っていました。しかし、苦労して論文を読んでいるうちに、「面白い研究成果を知ってほしい」という思いで研究者たちは論文を執筆している事に気が付き、私も文法などを気にせずにとりあえず書き始めてみました。それ以来、何が新しいのか、何が面白いのかという事が伝わるような論理の流れをしっかり作ることを重視して書くようにしています。最近は論文を投稿すると、「内容は面白いが、英語の修正が必要だ。」というコメントが返ってくることもあります。これからは投稿前にエディテージを使わせていただこうと思っています。

 

今まではどの様にして英語のチェックをしていたのですか?

ほとんどチェックせずに出していました(笑)。ですので、先ほど話したように、実験結果に対するコメントよりも「ここの英語を直せ!」というコメントが山ほどあり、それを全部直して完成、といったように大変時間がかかったこともありました。今回はエディテージに英文校閲をお願いし、直ぐに納品され、投稿して結果待ちの状態です。かなり時間を短縮することができそうで感謝しています。

 

ツイッターでは、「小中学校からの理科教育の充実。詰め込みではなく、興味を持った内容を生徒にとことん追究させ、レポートさせる。教師はそのレポートがどんなテーマででも、情報収集力と論理構成力の点において評価する。そういった教育によって、充分な研究能力が養える」とつぶやいておられました。

理科教育の充実というのは、半分くらい私のボスの受け売りです。私のボスは日本化学会の会長をしていた藤嶋昭先生です。先生には私が学生のころからとてもお世話になっています。「理科ばなれをくいとめるためには、小さいころから、理科が面白いという実感を持てるような教育が必要だ。」と常々おっしゃっています。KASTの光触媒ミュージアムの入り口には、たくさん科学絵本が展示してあり、自由に読めるようになっていますが、これは、先生の発案です。本をたくさん読んで、たとえば「空はなぜ青いのか?」とか「なぜ夕焼けは赤いのか?」など身のまわりの不思議なことに「ああ、そういう事か!」と納得して、理科を好きになってもらうために置いてあるのです。藤嶋先生は、お忙しいなか小中学校での出前授業も積極的にされたりして、理科教育の充実のための活動を続けていらっしゃいます。そんな先生の姿を見るうちに、私にも何かできないだろうか?と考えはじめました。ちょうどその頃、日本工業大学での化学の非常勤講師のお話をいただいたのです。

 

日本工業大学で化学の授業をされているのですか?

1年生と2年生を対象に「化学の基礎」と「環境と化学」の講義を持たせていただいています。機械や電気の分野がメインの大学なので、化学は一般教養になっています。だから教科書にとらわれずに自由に講義をしてください、と言われて、これは面白そうだと思いました。私なりに考えた結果、教科書の内容を覚えさせるのではなく、答が決まっていないような課題を出して、自分で調べ、納得いくまで考えさせる講義をすることにしました。

 

大学の講義で出す課題はどんな内容ですか?

例えば、「このバスの中にテニスボールがいくつ入るか答えなさい」というような問題や、「シーザーという人が死ぬ間際に息を吐いた。その息がもし仮に、地球上にまんべんなく広がって、それが今も残っているとする。そこで今、呼吸している私たちの肺の中にその息に含まれていた分子は何個位入っているのかを計算しなさい。」といった問題等です。これらは物理学者のエンリコ・フェルミのつくった問題から引用させていただきました。毎年、いくつかこの様な課題を出すのですが、解いてくる学生さんは、ちゃんと理論的に考えて解いてきます。いろいろ仮定しながら計算するので、答は必ずしも1つではないのですが、その過程がどれだけ確からしいか、説得力があるのかというところで採点をしています。特に今、インターネットが発達していますから、問題に関連する情報を自分で集め、論理的な解答をつくる。そういう力を評価するようにしています。こうした思考のトレーニングが、日本の研究力を高めることにつながると思っています。

 

教科書だけの授業ではなく、発想力等を養うような授業は楽しそうですね。

学生さんの授業評価アンケートによると、おかげさまで好評のようです。最近ではマイクロソフトやグーグルの入社試験でも先ほど話したようなフェルミ問題が使われることがあると聞いています。豊かな考察力や発想力をもつ人材が世界的に求められてきたわけです。そうした変化に対応できるような、理科教育の充実や研究力の向上に、私なりに貢献していきたいと考えています。

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