25億ポンドが「ゴーストリサーチ」に消えた(英国)

25億ポンドが「ゴーストリサーチ」に消えた(英国)

不当な科学に異議を申し立てる英国の慈善団体「Sense about Science」が6月2日に発表したレポートによって、ある事実が明らかになりました。英国政府が政策立案のために資金を拠出した研究の記録が残されておらず、研究結果の発表が遅れているケースも複数あったのです。この調査は、研究結果の発表が遅れている原因を探るために元控訴院裁判官のステファン・セドリー卿 (Sir Stephen Sedley) の主導でSense about Scienceが実施したものですが、結果的に、より大きな問題が明るみに出ました。


英国政府が委託する研究には、毎年約25億ポンドが計上されています。しかしレポートによると、英国政府には、過去に助成対象となった研究に関する記録が残っていませんでした。調査団が調べた政府機関の24部門のうち、政府の委託によって行われた研究プロジェクトのリストを提供できたのはたった4部門でした。それ以外の部門は、拠り所となる記録が何もなく、追跡調査を実施するにはコストがかかりすぎると主張しています。この混乱した状況を受け、調査団は、政府が委託する研究を「ゴーストリサーチ」と名付けました。「国家のアーカイブでは検索不可能で、政府職員の記憶の中にのみ存在する」ためです。


そのほかにも、例えばフードバンク、移民、薬物使用などについて、「政治的に厄介な」研究を政府が抱え込んでいることについても懸念が出されています。政府による政策の発表に合わせて研究結果の発表が遅れたと思われる事例も見られました。Sense about Scienceの代表であるトレーシー・ブラウン(Tracey Brown)氏は、「政府委託の研究を信用してほしいなら、そして一流の研究者と契約し続けたいなら、政府もそれにふさわしい行動をとらなければならない」と述べています。


レポートでは、政府が研究結果を迅速に公開して一般市民や研究者がアクセスできるようにすること、さらに、政府機関が研究記録の追跡管理の優先度を高めることが勧告されています。政府の広報担当官は同レポートに対し、「政府が実施することすべてに透明性、開放性、説明責任が確保されるようにすることに取り組んでおり、本レポートはこの点に寄与するものと考える」と述べています。


参考記事:

UK government slammed for losing track of its own research

Publish research promptly, not when it suits you, ministers told

U.K. government isn’t tracking policy-related research

Whitehall’s missing millions: Government has no record of how it spends £2.5bn each year on public policy research

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