米国立衛生研究所、研究者への助成金に制限を設ける新方針を発表

米国立衛生研究所、研究者への助成金に制限を設ける新方針を発表

米国立衛生研究所(NIH)が先日発表した大幅な方針転換は、生物医学界から波紋を呼びそうです。NIHは、従来のモデルから離れ、研究者が受け取れる助成金に制限を設けるための点数制度を導入する計画を明らかにしました。これについてNIHは、若手や中堅の研究者がより助成金を受けやすくするための措置であると説明しています。


研究者は、ポジションに関係なく、助成金なしでは研究を進めることができません。しかし、経験の浅い若手研究者が助成金獲得のための過酷な競争を勝ち抜くのは至難の業です。NIHによると、同所が交付する助成金の40%を獲得しているのは申請者のわずか10%で、助成金受領者の平均年齢は42歳でした。そこで、すべての申請者に公平に助成金を交付するため、さらには助成金交付件数を増やすため、NIHは助成金支援指標(Grant Support Index、GSI)という新方式の導入を計画しています。この制度では、助成金の規模や複雑さに基づいて、助成金の種別ごとに特定の点数が割り当てられます。研究者が得られる点数の上限は21点で、これはR01助成金(NIHが交付しているもっとも標準的な助成金)を3度受けられる計算です。点数が上限を越えてしまった場合は、規定の範囲内に収まるように総額が調整されます。


NIH所長のフランシス・コリンズ(Francis Collins)氏は、この方針転換によって新たな助成金1600件の交付を創出でき、影響を受ける可能性がある研究者は全体のわずか6%(現時点で上限を越えている助成金受領者)であると話しています。この新方針について注目すべきもう一つの点は、必要な予算は研究領域によって異なるため、単に金額に重点を置いたものではないということです。NIHが進もうとしている方向が正しいと感じている研究者は多いようです。米実験生物学会連合(メリーランド州ベセスダ)の政策副事務局長ハワード・ガリソン(Howard Garrison)氏は、「より多くの研究者に助成金を交付しようとすることは、健全な取り組みと言えるでしょう」と述べています。


とは言え、方針転換には批判が付きものです。NIH委託研究事務局の前局長サリー・ロッキー(Sally Rockey)氏は、「研究者が他の助成機関から支援を受けている可能性もあるので、NIHが20%の制限を強制することはできないはずだ」と述べています。


また、研究者が助成金の取り分を増やすことに力を入れ、GSIの上限を越えないよう調整する可能性があることから、この方針転換が共同研究の流れに影響を及ぼすのではないかと懸念する人もいます。研究者の今後の申請プランにも関わってくるため、一度に申請可能な件数を明確にすることが求められます。NIHは、業界関係者や同所諮問委員会と協議の上、2017年下半期中にこの新方式を展開する予定です。


参考資料:

NIH to limit the amount of grant money a scientist can receive

NIH grant limits rile biomedical research community

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