質問: 理論的枠組みは、学位論文に欠かせない要素ですか?

質問の内容 -
学部の教員の1人が、学位論文のフォーマットを見直す必要があるのではないかという提案をしました。委員会のあるメンバーは、論文が長くなりすぎないように、「理論」そのものを研究している研究でない限り、「理論的枠組み」のセクションを削除した方がよいと主張しています。しかし、私は、学位論文のフォーマットから理論的枠組みを削除する理由はどこにもないと考えており、上記の意見には納得できません。理論的枠組みは、すべての学術研究や概念的枠組みの基礎となるものであり、研究はそのような視点から行われるべきであると個人的には考えています。また、データ収集の過程で、データのまとめ方や分析にも制限を設けることになるので、やはり削除する理由は見当たりません。メンバーの多くが削除に賛成しており、私は少数派です。この多数派の判断は正しいのでしょうか?私の専門が社会科学であるために、理論的枠組みを重要視しすぎているのでしょうか?この問題についてご意見を頂ければ幸いです。
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回答:

学位論文のフォーマットから理論的枠組みを外すべきではないというご意見に、賛成です。その理由は以下の通りです。


すべての科学は、他者の知見の上に成り立っています。完全にオリジナルな普遍的価値を持つ科学は、存在しません。実験に基づく研究やエビデンスベースの調査はすべて、何世代にも渡って先人が築いてきた知見を土台として成り立っています。そして、実験によって先行研究の有効性を立証するのです。科学的研究とは、知識の基盤を洗練、調整、複製、批評することです。したがって、基礎的知識または「理論」とは、科学者が自分たちの研究を組み立てるための基礎となるものです。


また、学位論文の執筆者は学生であるということにも留意する必要があります。まだ研究者の卵である学生たちの研究は、不完全な基礎の上に組み立てられています。少なくとも、自らの研究の基礎となる先行研究に関する最低限の知識がない限り、真に科学の一員であるとは言えません。正当な科学研究を行うためには、現在行われている研究その研究が行われるに至った過去の知見との関係を明確に理解しておかなければなりません。これを理解せずして、学生が一人前の研究者になることはできないでしょう。


したがって、理論的枠組みを構成する基礎研究に触れないような論文を学生に書かせることは、分野に蓄積された知見の全体図における自分の研究の立ち位置を把握するための、全体論的視点の獲得を阻害することにつながってしまうと思われます。


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