ヒト胚のゲノム編集について遺伝学者が議論

ヒト胚のゲノム編集について遺伝学者が議論

「我々は人間だ。遺伝子組み換えラットではない」

エドワード・ランフィア(Edward Lanphier)、サンガモ社長、在ワシントンDC再生医療連合(Alliance for Regenerative Medicine)会長


ヒト胚に、生殖細胞系列の改変という遺伝子操作技術を用いることは許されるのでしょうか。この倫理的問いは物議をかもし、遺伝学者の間に論争を巻き起こしました。2015年3月5日、MIT Technology Reviewが、CRISPR/Cas9やジンクフィンガーヌクレアーゼなどのゲノム編集技術でヒト胚のDNAを改変するというテーマの研究論文を出版すると発表しました。ヒト胚への遺伝子改変は次世代へと継承されていくため、これは超えてはならない倫理的一線だと主張する研究者もいます。

MIT Technology Reviewの記事が出た後、体細胞(非生殖)のゲノム編集技術の研究に携わっているエドワード・ランフィア氏とその同僚たちは、ネイチャー誌にコメント投稿を行いました。彼らは、たとえ研究であっても科学者はヒト胚の遺伝子を改変すべきではない、と訴えました。その理由として、「現在の技術を用いてヒト胚のゲノム編集を行うことで、次世代に予想外の影響をもたらす可能性がある」こと、そして「完璧な青い目」をもつなど、「治療目的でない改変」に誤用される可能性があるため、と述べています。また、このような「倫理に対する侵害」は、非生殖の体細胞における遺伝子編集技術の利用までも禁止にしてしまう可能性がある

としています。

全面的に生殖細胞系列の改変に反対する研究者がいる一方、マサチューセッツ大学ウースター校のノーベル賞受賞遺伝学者クレイグ・メロー(Craig Mello)博士などのように、生殖細胞系列の編集に賛成する研究者もいます。その理由は、癌やHIVなどの生命に関わる病気から人間を守ることが可能となるためです。ハーバード・メディカル・スクール(ボストン)の遺伝学者ジョージ・チャーチ(George Church)博士は、「安全性に関わる問題がなくなり、行なってもよいことなのだという一般的合意ができる」まで、ヒト胚に対する遺伝子改変は禁止されるべきだと考えています。またチャーチ博士は、遺伝子編集は、ヒトに対して実施される前に、動物で注意深く観察されるべきだと述べています。そうすることで、対象とした以外の場所に意図しない突然変異を招くのではないか、とする研究者の懸念にも対応できるようになるからです。

ユタ大学(ソルトレークシティー)の遺伝学者デーナ・キャロル(Dana Carroll)博士は、この倫理的問題を解決する方法を提案しています。博士は、全米科学アカデミーのような、医療の専門家と利害関係者が含まれる国家機関を整えて、生殖細胞系列編集のプラス面・マイナス面をきちんと比較評価するようにすべきだと考えています。

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