トランプ大統領の入国規制で科学界の懸念深まる

トランプ大統領の入国規制で科学界の懸念深まる

米国のドナルド・トランプ大統領は、就任後2週間も経たないうちに、イスラム教国7ヶ国(イラン、イラク、リビア、ソマリア、シリア、スーダン、イエメン)の国民に対して90日間ビザの発行を禁止する大統領令に署名しました。トランプ大統領はこの対応について、自国をテロ攻撃から守るための安全防護対策であるとしています。この決定により、米国で働いているこの7ヶ国出身の学術関係者たちは、パニックに陥りました。


研究開発をリードする米国には、例年、海外から学生や研究者が多く訪れます。しかし、今回の大統領令により、入国を禁じられた国々の多くの研究者や学生たちが中ぶらりんの状態になりました。母国への帰国が許されない人々もいれば、米国に入国するための書類が無効になり、空港に留まったままの人々もいました。学術関係者らは、今後のキャリアや人生に漠然とした不安を抱え、この敬意を欠いた決定に、不公平感を抱いているようです。カーネギーメロン大学経済学部のマリアム・サイーディ(Maryam Saeedi)助教は、次のように述べています。「 この国で生産活動を行なってきた我々は、ある日突然このような仕打ちを受けました。私たちはテロリストとみなされているのです」。


この決定は、米国での科学研究活動にさまざまな悪影響をもたらすでしょう。入国を禁じられた国々の研究者は、米国で開催される学会に参加できなくなります。アムステルダム大学天体物理学者のセルマ・デ・ミンク(Selma de Mink)氏は、自分が指導する博士課程の学生が、予定されていたカリフォルニアでの講演を実施できないだろうと明かし、学生のキャリアに影響が及ぶことを心配しています。政治的な混乱を理由に米国を永久に去ることを考えている学術関係者もいます。MIT博士課程在籍中でイラン出身のネオ・モーセンバンド(Neo Mohsenvand)氏は、苦境に直面している研究者たちの心情を次のように代弁しました。「イランもさまざまな問題を抱えていますが、少なくとも米国よりは希望を持てるのではないかと思います。この国でこれから何が起きるのか、想像もつきません」。


また、大統領令に反対する7000人以上の学術関係者(40人のノーベル賞受賞者を含む)が、「Academics Against Immigration Executive Order(学術界は入国禁止令に反対する)」と題した公開質問状に署名。今回の大統領令を「非人道的で、無益で、非アメリカ的」であるとした上で、「高等教育および研究に関する米国のリーダーシップが著しく損なわれる」と警告しています。また、アースデイ/地球の日(4月22日)には、ワシントンDCで「科学への情熱と科学界の支援・保護」を呼びかけるデモ、マーチ・フォー・サイエンス

が研究者たちによって行われました。このデモは、同様の集会を計画していた欧州8ヶ国の科学コミュニティによる支援を受けて実施されたものです。


米国における科学情勢は、混乱の渦中にあると言えます。トランプ氏が大統領候補であったときから、学術界では懐疑的な見方が多くありましたが、今回の大統領令によって、両者の溝はより広がりました。同令の改正を求める科学界の取り組みがどのような結果を生むのか、今後の動向に注目しましょう。


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