話題のヒューマン・ブレイン・プロジェクト、3年分の研究費を確保

話題のヒューマン・ブレイン・プロジェクト、3年分の研究費を確保

議論を巻き起こしているヒューマン・ブレイン・プロジェクト(Human Brain Project, HBP)は、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会から、今後3年間の研究資金を確保しました。その金額は年間8900万ユーロ(約115億円)にのぼります。

2013年10月に始動したHBPは、10カ年計画の壮大な学際的研究プロジェクトで、人間の脳について解明し、脳疾患を診断・治療するための新たな方法を開発することを目的としています。プロジェクトの研究資金10億ユーロの大部分はEUから拠出され、26ヶ国から数百人の研究者が参加しています。

しかし本プロジェクトは、始動後から様々な問題点が指摘されてきました。始動後一年もたたないうちに、研究者達はHBPの目標と研究領域が散逸してまとまりがなくなっていると感じるようになりました。このことから、脳科学者150名が署名をした公開書簡が欧州委員会宛に提出され、プロジェクトの「極端に狭いアプローチ」と、「神経科学のサブプロジェクト1件とそれに付随する18の研究室」が除外されたこと対する抗議が行われました。研究者らは、プロジェクトの運営に透明性が欠けていることにも懸念を表明し、これらの懸念への対処がなされなければプロジェクトをボイコットすると訴えました。これを受け、公開書簡で指摘された問題点に対処するための独立調停委員会が設けられるなど、HBPではいくつかの改革が行われました。

2015年11月現在のHBPの最新状況として、10月30日に、欧州委員会が今後3年間にわたってHBPに対する資金助成を行い、「HBPの法的立場を変更することにより、参加している多くの研究機関に権限を分散できるようにする」ことに合意しました。

HBPに対する研究者の信頼を取り戻すために欧州委員会は合意書に署名したものの、HBPに参加している研究者の中には、この動向に安心できないでいる人もいます。フランス国立科学研究センターのUnit of Neuroscience, Information and Complexity(フランス、ジフ=シュリヴェット)で局長を務めるイブ・フレグナック(Yves Frégnac)氏は、「合意書への署名は非常に意義ある進展ですが、その影響を評価するのは時期尚早です。我々はまだ懐疑的です」と述べています。

この野心的プロジェクトは、将来的には素粒子物理学の研究所であるCERN(欧州)やEuropean Spallation Source(スウェーデン)と並んで、永続的基盤となり得る国際研究機関となることを視野に入れています。

ユーリッヒ研究所(Jülich Research Centre)所長でHBP調停委員会の委員長であるヴォルフガング・マルクヴァルト(Wolfgang Marquardt)氏は、HBPにとって重要となる次の段階について、以下のようにまとめています。「HBPの課題は、たゆまぬ努力を続けることによって科学者と世間の信頼を取り戻すことです」。HBPは使命を果たすための歩みを始めましたが、その取り組みの成否については今後も見守っていく必要がありそうです。

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