アクシオス・レビュー、査読サービス事業からの撤退を発表

アクシオス・レビュー、査読サービス事業からの撤退を発表

2017年2月23日、独立査読機関のアクシオス・レビュー(Axios Review)は、3月1日をもって業務を停止し、以後の査読依頼を受け付けないことをTwitterで発表しました。アクシオス・レビューの創始者/マネージング・エディターのティム・ヴァインス(Tim Vines)氏は、今回の決断の理由を次のように説明しています。「会社を運営していくのに十分なだけの査読依頼はありましたが、むしろその量に対応し続けることが難しくなってきました」。


アクシオス・レビューは、2013年にサービスを開始して以来、従来の出版システムに革新をもたらす可能性を秘めた企業としてその地位を確立し、2016年には非営利組織として再スタートを切ることを発表していました。同社が提供していた査読サービスは、「有料」、「独立」というコンセプトに基づいて提供されていました。著者がジャーナルに論文を投稿する前にアクシオスに査読を依頼すると、アクシオスは受け取った論文を厳格に審査し、ターゲットジャーナルの対象範囲や基準を満たしているかどうかを判断します。その上で、論文に適していそうなジャーナルにアプローチして、出版を検討する意思を確認します。このプロセスを踏むことで、著者は、ジャーナル選び→投稿→リジェクト→ジャーナル選び…、というストレスフルなループに陥るリスクから逃れることができるというわけです。アクシオスの編集委員会と査読者たちは、論文の質を高め、新規性の欠如や研究領域の不一致によるリジェクトの可能性を取り除き、論文が出版されるまでの期間を可能な限り短縮することを目指して、サービスを提供していました。


ヴァインス氏は、The Scholarly Kitchenのフィル・デイビス(Phil Davis)氏とのインタビューで、アクシオスの閉鎖を決断した3つの要因を挙げています。1つ目の要因は、アクシオスによる査読を経ても、さらに査読を行おうとするジャーナル編集者が多く、この追加査読の必要性に納得できずに不満を抱いていた著者らの存在です。ヴァインス氏はこの点について、「そのような著者は、ジャーナルの編集者が念には念を入れるという意味で、独自のルートで論文を査読に回したいと考えるのが当然であることを理解していなかったのでしょう。論文がアクシオスの査読を受けていたとしても、ジャーナル編集者は自由に判断を下すことができる、という点を著者に明確に示しておくべきでした」と語っています。


2つ目は、同社が査読費用を250ドルに設定して以降、成長が低迷したことです。費用が発生することに過剰に敏感になった著者らは、支払いを躊躇するようになりました。オープンアクセスの出版費用は、(生態学や進化論などの)分野によってはアクシオスの査読費用よりもはるかに高額です。加えて同社は、著者がジャーナルに支払うAPC(論文掲載料)から査読費用を差し引く契約

をBioMed Central傘下のジャーナルと結んでいました。この著者らの反応に、ヴァインス氏も驚きを隠せなかったと言います。


3つ目は、学術コミュニティの変化(アクシオスが提唱した新たな出版モデル)への適応力の乏しさです。「ビジネスの世界に転身した友人たちは、私たちの事業が失敗に終わったことに困惑しています。彼らは常に、コストと引き換えにどれほどの時間/労力を削減できるかという視点で、サービスを買うことの価値判断を行なっています。学術の世界では、投稿・再投稿を繰り返す実りのない数ヶ月をカットできたとしても、250ドルを支払うことをためらうのです。この事実から言えるのは、研究者たちが、自分の時間や部下/学生の時間を過小評価しているということです」。1年前にエディテージが行なったインタビューで、ヴァインス氏は次のように述べています。「学術コミュニティにおいて、独立査読サービスが学術出版の標準ルートになる日が来ることを切に願っています」。


Peerage of ScienceRubriqなども、独立査読サービスを提供する機関です。Peerage of Scienceのワークフローで特徴的なのは、投稿とレビュー、査読のレビュー、論文の修正/アップロード、最終的な論文の評価、などの段階別にサービスを選択できる点です。Rubriqにはさまざまな研究領域の研究者が在籍しており、2週間以内に査読を完了できることが売りになっています。どちらのサービスも、アクシオスのワークフローとは異なっていますが、将来的にアクシオスと同じ問題に直面するか、さらなる発展が続いていくのか、その動向が注目されます。


今回のアクシオスの決定は、独立型の、または移管可能な査読というコンセプトが、サービスとして長期的に持続可能であるか、という問いを投げかけています。従来型の学術出版ワークフローが深く根付いている現状において、学術界は、変化や新たな出版ワークフローに適応できるか否かを試されていると言えます。たとえば、論文を直接出版するわけではないアクシオスのような第三者に費用を支払うことへの著者の抵抗や、ジャーナルが独立機関による査読を信頼していない、などの課題に対する適応力が試されます。また、査読は対象研究領域に熱意を持つ個人が提供する無料奉仕活動である、との見方が一般的な中で、査読の商業化自体が従来のシステムに比べて受け入れられにくいという側面もあります。


アクシオス・レビューの撤退が、今後の査読システムの先行きを暗示するものとは言えないまでも、どのようなワークフローが長期的に持続可能なシステムとして成功するのか、また、出版コミュニティはそのようなワークフローの実現をどのようにサポートできるのかを、真剣に検討し議論する必要性が示されていることは確かでしょう。


参考記事:


新しい査読モデルについてどう考えますか?現在の査読システムに満足していますか?この問題についてご意見がありましたら、下のコメント欄からぜひコメントをお寄せください。

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