アクセプトかリジェクトか、はたまた修正か?より良い査読で学問を発展させる

アクセプトかリジェクトか、はたまた修正か?より良い査読で学問を発展させる

 [ウォルターズ・クルワー(Wolters-Kluwer

)社向けに作成された記事を、許可を得てここに再掲載しています。執筆者: Elizabeth S. Karlin(スタッフエディター)Jennifer Campi(シニアスタッフエディター)Mary Beth DeVilbiss(Academic Medicine誌マネージングエディター)]


査読とは、研究テーマや適用された方法に関する専門知識を持つ学者(peer)が、研究の評価(review)を行うことです。査読の目的とは―これが本記事のテーマですが―、出版論文の質を最大限まで高めることです。査読者は、ある種の陪審員として、普及させるだけの価値がある研究かどうかを見極めます。


査読プロセスは、昔からほとんど変わっていません。研究者は、実施した研究や調査の報告書である原稿を用意します。そして、それを適切なジャーナルに送ります。通常、原稿は内部でのチェックを受けます。そして、担当編集者(編集長か共同編集者)が、原稿を査読に回さずにリジェクトするか、査読に回すかを決めます。担当編集者、ジャーナルの編集委員、ときには原稿の著者自身が、査読者候補を推薦します。たいていは、論文を自分でもたびたび執筆する専門家のグループから、23人の査読者が選ばれます。


この次のステップであるレビューは、学問に欠かせない要素です。編集者は必ずしも査読者の提言に同意するわけではなく、またそうする必要もありませんが、原稿に関する貴重な情報源として、査読者は頼れる存在です。編集者、読者、ほかの学者たち、そして科学の進歩の恩恵を受ける人々―つまり私たちの誰もが、研究に洞察を加え、その強みと弱点をつかみ、重要な欠陥を明らかにし、新しい発見に光を当てることを査読者に頼っているのです。


査読者が答えを出す重要な問いには、次のようなものがあります:

  • この原稿は既存の文献をさらに充実させ得るか? (テーマは重要なものか? 課題に関する見解を変え得るものか? 分野の発展に貢献するものか?)
  • デザイン(方法論)や議論(ロジック)に致命的な欠陥はないか?
  • 著者はこの原稿をどのように改善できるか?


上記の問いに答えるために、査読者は、報告書のイントロダクション、参考文献リスト、方法、結果、考察、結論の各セクションを吟味しなければなりません。以下に、各セクションについての問いと提案をまとめました。


イントロダクションと参考文献: テーマの性質、文脈、最新の報告のニーズを読者が理解できるような、文献に基づく十分な背景情報が提示されているか? 引用文献は、最新の研究から基礎研究までを網羅しているか? 文献は、さまざまな視点を示す、バランスの取れたものになっているか? 著者自身の目的、疑問、仮説が明確に述べられているか?


方法: 方法は、著者が研究したいと望んでいる課題や疑問に対して適切か? 別の研究者が研究を再現するための十分な情報が示されているか? 前提条件は明確か? 研究はいつどこで実施されたのか? 研究の対象者や参加者はどのような人か? ヒトや動物が関与する場合、必要な倫理的承認は得ているか? 手順や分析手法は説明されているか? 問題があらゆる角度から検討されているか?


結果結果は、方法に対応したものになっているか? あらゆる手順と分析の結果が報告されているか? 結果の有意性が、統計的かつ臨床的に示されているか?


考察と結論得られた結果が、別の前提条件や対象についても一般化できるかどうかを検討しているか? 結果のあらゆる意義が検討し尽くされているか? 結果が科学にどのような影響を与えるかを示しているか? 将来の研究への道筋や取り組みについて検討されているか? 結論で、何らかの限界およびその限界の影響について考察されているか?


査読を進める上で、これらの問いが役立つはずです。また、以下のリソースも有益です:


Review Criteria for Research Manuscriptss, 2ndEdition (www.aamc.org/reviewcriteria)

査読プロセス全体を把握し、評価すべき論文の各側面(タイトルやサマリー、アブストラクトやイントロダクション、結論や参考文献)を体系的に吟味するための、査読者のための包括的ガイドです。本書は経験豊富な学者と査読者が執筆し、Academic Medicine誌の共同編集者2名が編集を行いました。査読者のための便利なチェックリストが含まれ、質的研究、体系的レビュー、イノベーションの説明といった新しいタイプの原稿について説明しています。また、査読者としてのマナーにも触れています。新米査読者にもベテラン査読者にも役立つこのマニュアルは、難しい原稿と格闘する査読者、隙のない原稿を準備したいと願う著者、そして研究の実施・評価・応用・発信・考察について学んでいる学生(とその指導者)を支えるリソースです。


What Editors Want: An Overview for Reviewers/編集者は査読者に何を望んでいるのか(https://vimeo.com/academicmedicine)

編集者は何を望んでいるのか?という、査読者の一般的な疑問について答えるショート映像です。Academic Medicine誌の編集者とスタッフによるこのプレゼンテーションでは、査読者としてのマナー、査読の形式、査読の内容を扱っています。これは、同誌の膨大な査読者向けリソースの一部です。査読者の意見に関するガイドは、査読者向けページ「For Reviewers(http://journals.lww.com/academicmedicine/Pages/ForReviewers.aspx)からダウンロードが可能です。その他のビデオや練習課題も開発中です。


査読者向けワークショップ
Academic Medicine誌の編集者とスタッフが査読に関する基本情報を紹介し、その後で参加者にセッションを引き継ぐ、ダイナミックで双方向的なワークショップです。セッション参加者は小グループに分かれて、Academic Medicine誌に投稿された実際の原稿をレビューします。最後にプレゼンターと参加者で、原稿、査読のプロセス、そこから得られた気づきについて意見を交わします。今後のワークショップとイベントに関する情報は、ジャーナル(acadmed_online@aamc.orgt)にお問い合わせください。


Academic Medicine誌のブログ「AM Rounds」の査読者向けシリーズ記事 
査読について学び、そのスキルを向上させるためのおそらくもっとも有効な方法は、査読者自身の言葉に接することでしょう。全11回のシリーズ記事 (http://academicmedicineblog.org/category/peer-reviewer-resources)では、Academic Medicine誌のExcellence in Reviewing Award(最優秀査読賞)を授与された査読者が、良い査読を行なって優れた査読報告書を書くためのヒントを紹介しています。また、査読の利点と目的、さらには査読への愛も披露しています。


 

査読者と著者のために、査読の良いところを活用するこれこそが、最終的な目標です。CVの充実のほか、ときには受賞やCMEクレジットといった査読の実際的メリットに加え、学者たちには、他人の研究のレビューを続ける理由があります。然るべきレビューには時間と労力が必要ですが、それにもかかわらず学者たちが原稿の評価を行うのは、自分の研究分野の最新の知見に触れる機会が得られるからです。査読者たちは、学問のプロセスに参加しているのです。そして、自分たちを支えてくれたコミュニティに恩返しをし、あらゆる人の利益のために、科学を進歩させているのです。


画像提供shutterstock.com

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