「私たちは基本的に、著者の側に立った活動をしています」

「私たちは基本的に、著者の側に立った活動をしています」

クラリンダ・セレジョ(Clarinda Cerejo)は、エディテージ・インサイトの編集長として、研究者のためのマルチリンガル・ラーニングやディスカッション・プラットフォームの運営・管理を行なっています。クラリンダは、非英語ネイティブの研究者が国際英文学術誌で論文を出版するためのサポートを11年以上続けており、学術編集者/トレーナーとして、研究者が論文出版の過程で直面するプレッシャーや困難を間近で実感してきました。その経験から、論文出版や講演を通じた著者教育や、著者とジャーナルのコミュニケーションを促進する活動に熱心に取り組むとともに、編集長としてエディテージ・インサイトを支えています。


エディテージ・インサイトの創設から4年が過ぎたのを機に、2013年の起ち上げ当時を振り返ってみたいと思います。エディテージ・インサイトが起ち上げられた経緯、そのビジョンと目的、将来の計画などについて聞くのに最適な人物は、編集長であるクラリンダ以外にいません。今回のインタビューでは、エディテージ・インサイトがたどってきた道のりや今後の展開などについて、クラリンダ自身の視点で語ってもらいました。

エディテージ・インサイトの成り立ちを教えてください。いつ、そしてなぜこのようなサイトが起ち上げられたのでしょうか?

エディテージは、言語校正出版支援といったサービスの枠を超えたサポートを、研究者に提供するよう努めてきました。出版サポートを通して著者の皆さんと交流する中で、彼らが文章能力の向上や業績を積むことに熱心であること、出版プロセスを成功させるための情報やアドバイスを常に求めていることを知りました。経験豊富なアドバイザーはそう簡単に見つかるものではありませんし、見つかったとしても、そのような人物に、若手研究者に付きっきりで出版プロセスをナビゲートするような時間的余裕はないはずです。さらに、非英語ネイティブの研究者が、英米などの英語を母語とする研究先進国と歩調を合わせようとしても、言語がその障壁になってしまうという大きな問題がありました。


2012年に行なった著者とジャーナル編集者へのアンケートで、著者たちが次のようなことを求めていることが分かりました:

(1) ジャーナルにおける出版プロセスや選定基準の透明化

(2) 出版倫理についての、自分たちの母国語での情報

(3) ジャーナル編集者や査読者とのコミュニケーションに関するガイドライン

(4) 出版プロセスの専門家にリアルタイムで質問ができるようなシステム


一方、ジャーナルは著者に対して次のようなことを求めていました:

(1) ジャーナルの対象分野にマッチする論文の投稿

(2) 研究不正へのジャーナルの対応方法の把握

(3) カバーレターの書き方や査読コメントへの返答の仕方の理解


以上のことから、著者とジャーナルの間にある隔たりを埋め、あらゆる立場の研究者に手を差し伸べ、非英語ネイティブの研究者に学術界の最新情報を(それぞれの言語で)届けられるようなグローバル・プラットフォームが求められていると確信しました。そのようなプラットフォームがあれば、学術出版界に計り知れない価値をもたらせるのではないかと考えたのです。そのような理由から、エディテージ・インサイトは、英語中国語日本語韓国語での情報発信を行なっています。

起ち上げ当初のビジョンはどのようなものでしたか?現在までの間に、そのビジョンはどのように変わりましたか?また、ビジョンはプラットフォームにどのように反映されていますか?

私たちのビジョンは当時も今も変わっておらず、世界中の研究者にとってもっとも信頼のおける最大のリソースになることです。取り組みの内容には、世界中の研究者に手を差し伸べること、研究者のあらゆる疑問に答えられる態勢でいること、学術界の専門家に意見をシェアしてもらうこと、業界のトレンドや進展に関する見解をシェアすること、研究者たちの移り変わるニーズに対応すること、そのニーズに応えるために全力を尽くすこと、などがあります。これらの取り組みが一定の成果を挙げていることは、数字を見れば明らかでしょう。たとえば、私たちは現在までに2500件以上のコンテンツを提供しており、サイトには毎月200ヶ国以上から20万人の読者が訪れ、Q&Aフォーラムでは何百という質問に回答しています。


数字が1つの指標になるのは事実ですが、私たちが正しい方向に向かっているかどうかの真の指標となるのは、読者の皆さんの意見です。設立4周年を機に読者の皆様から頂いた感謝の言葉の数々には、編集部一同、大変感激しました。今後も、自分たちができることと読者のニーズを満たす方法を、常に模索していきたいと思います。たとえば、大量のコンテンツや長いチュートリアルを読み切る時間がない研究者もいるだろうと考え、毎日5分で少しずつ学べるコーヒータイムコースというコーナーをスタートさせました。同様に、より深く自分のペースで学びたいという研究者には、インタラクティブ・ラーニングコースと総合ハンドブックというサービスを提供しています。読者から寄せられる11つのメールが私たちの喜びであり、新たなサービスを企画・提供するモチベーションになっています。ビジョンは設立当初から変わりませんが、プラットフォームは、読者のニーズに合わせて進化を続けています。

エディテージでは、編集者をはじめとする出版業界の専門家の視点を著者に伝えるコンテンツを数多く提供しています。編集者や出版社に著者への理解を深めてもらうために、どのような取り組みをされていますか?

当サイトの読者の多くは研究者ですが、ジャーナル編集者や出版界のリーダーなどもユーザーコミュニティに数多く参加しています。Q&Aフォーラムは、編集者にとって宝の山と言えます。なぜなら、著者から寄せられる質問を読めば、著者が困難に感じていることや不満に思っていることを把握できるからです。フォーラムで、自分の回答や意見を交えたコメントをしているジャーナル編集者もいます。とは言え、これは受け身の対応であることは承知していますし、ここに時間を割けないジャーナル編集者もいるでしょう。そのため、少し前に著者への大規模なアンケートを実施し、ジャーナル編集者や出版社の目に付きやすい関連ジャーナルにその結果を発表するという取り組みを行いました。


また、ジャーナル編集者や出版社が参加する、世界各地で開催されている大規模な学術会議にはすべて出席するようにしています。著者に焦点を当てたセッションやパネルディスカッションに参加して、著者の視点や困難を紹介しています。このように、私たちは基本的に、著者の側に立った活動をしています。

エディテージ・インサイトならではの困難には、どのようなものがありましたか?それをどのように克服しましたか?

201311月に起ち上げられたエディテージ・インサイトは、大きな夢を抱きながらも当時はまだ読者が少なく、予算も最小限で、何よりスタッフは3人しかいませんでした。私たち自身や上層部の人間に、エディテージ・インサイトには予算を注ぎ込む価値があり、理想とする形を実現できる力がある、ということを証明しなければならなかったのです。いわゆる「ゼロからのスタート」という典型的な環境でした。白熱した企画会議や、あらゆるコンテンツに関する議論と見直しの繰り返し。読者からコメントをもらったときの喜びや、ミスをしたときの落胆。トライ&エラーを重ね、夜遅くまで働くことも珍しくありませんでした。その中で、唯一正しいことだったと胸を張れるのは、(今もそうあるよう努めていますが、)読者の声を聞くということでした。Q&Aフォーラムは、初期の頃からのサービスです。質問が寄せられるたびに、著者たちが直面する困難について考えてきたことが、現在のコンテンツ戦略につながっています。また、早い段階から業界の専門家へのインタビューも開始しました。目標とするインタビュー数を達成するのに多少時間はかかりましたが、早い段階で彼らと出会えたことで、自分たちが前に進み続けるためのかけがえのない洞察力や自信を得ることができました。

次の一手は何でしょう?数年後、エディテージ・インサイトはどこにいますか?読者に伝えたいことはありますか?

私たちが情報を発信して読者がそれを受け取る、というステージはすでに超えていると考えています。エディテージ・インサイトが目指すのは、活気溢れる参加型のコミュニティです。月に20万人の読者が訪れるエディテージには、ありとあらゆる専門性と経験を網羅できるポテンシャルがあります。あとは、この大きな可能性を活かす方法を見つけるだけです。以上を踏まえて、読者の皆様にメッセージを送ります:


読者の皆様へ

皆様のご支援なしに、私たちがここまで来ることはできませんでした。ありがとうございます!今後とも、エディテージ・インサイトに一層のご支援とご協力を頂ければ幸いです。エディテージ・インサイトに参加・協力するには、さまざまな方法があります。Q&Aフォーラムで質問したり、ほかのコミュニティメンバーの質問に答えたりすることができますし、Researcher Voiceというコーナーでは、エディテージ・インサイトのゲストライターとして、ご自身の経験やストーリーをシェアすることができます。また、インタビューしてもらいたい人物のリクエスト、記事へのコメント、アンケート・クイズ・投票・パズルへの参加も可能です。知り合いの研究者にSNSで私たちのコンテンツをシェアして頂くこともできます。もちろん、りよサイトを作るためのフィードバックとして、私たちに直接メッセージを送って頂くことも歓迎です!

今後とも引き続きご支援のほど、よろしくお願いいたします。

クラリンダ

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