ジャーナルの成功はインパクトファクターで直接測れるものではありません

ジャーナルの成功はインパクトファクターで直接測れるものではありません

オックスフォード・ブルックス大学で出版とマイクロエレクトロニクスの理学士号を取得しているイアン・ストーンハム (Ian Stoneham)氏は、工学技術コミュニティのニーズに対応する最先端の国際的専門学会、英国工学技術学会(The Institution of Engineering and Technology, IET)出版部の発行人で、IETの研究や速報を扱うジャーナルおよび学術書籍全般を統括しています。その中には、ハイブリッドの研究ジャーナルが27誌、完全なOAジャーナルが1誌、専門的参考書籍シリーズ、会議録が含まれます。また、工学分野のアブストラクトと索引のデータベースであるInspecのコンテンツ採録戦略の管理も行なっています。ストーンハム氏は20年以上に渡って様々な出版業務に携わり、学術出版業界の事業運営および事業管理に対する理解を深めました。最近では、Faculty of 1000CMG/Springer Healthcareの出版にも関わっています。また、マーティン・ダニッツ(Martin Dunitz)社とテイラー&フランシス社では販売にも携わりました。

 

前回のインタビューでは、IETの歴史、展望、使命、リソースとサービスについて語って頂きました。今回は、OA出版モデルやハイブリッドジャーナル、ジャーナルのワークフロー管理など、出版に関するより広い側面についてお話を伺います。また、今日の出版環境におけるOAの役割と進化や、国際英文ジャーナルでの論文掲載を目指すESL(非英語話者)の著者が直面する課題についてもお聞きします。ストーンハム氏は、出版のトレンドとして今後はデータマイニング/テキストマイニングが定着して行くだろうという見解をお持ちです。学術出版のダイナミックな性質を考えれば、新たな査読システムが登場し、既存の専門誌から、様々な論文を共有するシステムに変わっていく日も近いかもしれないということです。

IETではOAジャーナルやハイブリッドジャーナルを出版していますか?

IET でOAジャーナルの出版を開始したのは2013年4月です。IETを利用する著者・研究者を全面的に支援するという信念に基づき、著者・研究者・資金助成者のニーズに応えて、IETで既にリソースとして確立されていたジャーナル、学会、ビデオ、書籍に準じる形でOAを開始しました。IETのジャーナルはすべてハイブリッドジャーナルです。例外はThe Journal of Engineeringで、これはゴールドOA式のメガジャーナルです。このジャーナルは科学的に健全な各種テーマの工学研究の論文を掲載し、学際的研究や新興分野の出版ニーズに応えています。


IETでのOA化は、研究者と研究の消費者のニーズに応じる形で行われています。つまり、著者に最適な方法で支援を提供するという意味です。研究機関レポジトリや分野別レポジトリへの論文登録を、強制的か自発的かを問わず、支援しています。IETのグリーンOA方針は最も自由度が高く、ほとんどのIETのジャーナルで、著者が機関レポジトリに論文の最終稿をすぐにセルフアーカイブできるようになっています。現在、唯一この方針をとっていないのはHealthcare Technology Lettersで、ゴールドOAアクセスではない論文に対し、12ヶ月間の公開猶予期間(エンバーゴ)を設けています。これは、PubMed Centralに含まれているためです。

先の質問の続きとして伺いたいのですが、今日の出版環境におけるOAの役割とは何だとお考えですか? 今後、どのように進化していくと思われますか?

現在、OAはかなり安定してきており、ほとんどの研究者はOAとは何か、またそれによって自分にどのようなメリットがあるのかを理解しています。でも、どのようなOAが利用可能なのかを学際的な工学コミュニティに完全に浸透させるためには、まだまだやらねばならないことが多くあります。研究者は、成果を発表したいと考えます。OA出版のビジネスモデルは、その結果として生まれたものというよりは、出版社と資金助成機関が主体となって築いてきたものです。しかし、研究論文の宣伝は著者におおいに関係があることであり、OAはその点で著者を支援することができます。OAモデルは完璧ではなく、出版社各社でばらつきがあります。ですから、将来的により洗練された新しい形式が出てくることは間違いないでしょう。

IETは数多くのジャーナルを出版しています。それぞれの成功はどうやって測るのでしょう?インパクトファクターだけで測定するのですか?そうでなければ、ストーンハム氏にとって、ジャーナルの質を測定する最善の方法は何ですか?

IETではジャーナルの成功を、研究コンテンツの質と、ジャーナル編集委員会の影響力によって測定します。インパクトファクターは便利なツールで、もちろんジャーナルの影響力を見る上で優れた指標ですが、ジャーナルの成功を直接的に測れるものではありません。IETの目標は、技術革新を支える高品質なコンテンツを出版し、引用だけでなく、ジャーナルの利用を増加させることにあります。これは、IETの使命である「情報を提供し、刺激と影響を与える」ということに直接関わってきます。高品質の研究があってこそ、グローバルな工学・科学コミュニティにとってより有益なジャーナルを作っていけるのです。


さらに我々は、Google Scholarの引用や、出版されてから引用されるまでの期間の短さを示すImmediacy Indexなど、その他の代替指標も参考にしています。論文の影響力や科学的重要性を正確に測定するその他の指標には、Eigenfactor、Scopus(スコーパス)引用に基づいた指標、SCImago Journal Rank (SJR)などがあります。

ジャーナルや出版社は、著者層を厚くするために国際化を促進しています。IETのジャーナルには、世界中から論文が寄せられていますか?

はい、もう何年も前から世界中から論文が集まるようになりました。ジャーナルの規定に合ってさえいれば、どの国からの論文も歓迎します。現在は中国とインドからの投稿が増加していますが、これらの国々の研究基盤は、従来から強い基盤のあった米国などの地域と互角といえます。様々な国が関わっているのは論文投稿だけではありません。ジャーナルの利用も世界中から行われていますが、これはIETのジャーナルが国際的に広まっていることを反映しています。

学術出版のダイナミックな性質と、出版を目指す熾烈な競争を考慮した場合、ESL(非英語話者)の著者が直面している課題は何だとお考えですか?IETは、ESL著者にどのような支援を行なっていますか?

著者の第一言語が英語でない場合、査読プロセスで言語が障壁となることも確かにあります。IETではそのことを理解していますが、著者が明確な記述を行えることは重要です。査読者には、可能な限り詳細で適切なフィードバックを行うようにお願いしています。また、エディテージとの提携を大変うれしく思っています。エディテージを通し、非英語ネイティブの著者による優れた研究コンテンツに注目することができ、学術コミュニティに伝えられる可能性が高まったといえるからです。

現在の出版環境は、従来のジャーナル出版ワークフローとは異なるトレンドで溢れています(出版後査読、オープン査読、共同出版プラットフォーム、メガジャーナルなど)。これらのうち、何が定着していくでしょう?

現在話題になっている「テキストマイニング」と「データマイニング」は確実に定着すると思います。技術が発達し、膨大なデータの分析能力が変化していくにつれ、データ分析や、分析結果の応用を補佐する新しい製品やサービスが出てくるでしょう。また、以前から言われていることですが、新技術によって新しい査読システムや、研究を広めるための新たな媒体が出現するだろうと思います。そういったシステムは、ゆくゆくは既存の専門誌と入れ替わり、様々な記録を発表するポピュラーな手段となるかもしれません。機関レポジトリや分野別レポジトリとリンクして研究を目につきやすくすることも、出版方式に変化をもたらし、ジャーナル出版の持続性に明白な影響をもたらすでしょう。顧客向けのビジネスモデルにもさまざまなタイプがあり、顧客層も急速に変化しています。出版や研究に利用できる関連メディアの範囲も広がっているので、新しいビジネス形態や、よりアクセスしやすいプラットフォームが必要とされています。関係者全員の未来がエキサイティングなものであることは確かでしょう。


ストーンハムさん、ありがとうございました!


情報開示:エディテージはIETと提携し、IETのジャーナルに投稿する著者に英文校正・編集サービスを割引料金で提供していますが、本インタビューはエディテージ・インサイトによって独自に行われたものであり、金銭的な利益相反はありません。


イアン・ストーンハム氏のインタビュー第1回はこちらです。

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