査読というシステムに改善の余地はあるか?

査読というシステムに改善の余地はあるか?

私は現在、自分の専門(電子線後方散乱回折法)に関連する出版論文を巡って、ちょっとした争いの渦中にいます。この問題を適切に解決するためのプロセスは、込み入っていて時間がかかります。この記事では、科学出版全体を改善するための、私なりの考えをご紹介したいと思います。


1. ジャーナルは有益なもの


私は、ジャーナルは付加価値を与えるものであると考えています。論文の出版数は増加の一途を辿っており、その質はさまざまです。ジャーナルに論文を投稿し、査読を受け、出版することで、研究成果が広範囲に発信され、議論を巻き起こし、これまでに蓄積された科学的知見に価値を加えるという、研究のあるべき姿が完成します。


ジャーナルやその出版元は、信頼できる科学的コミュニケーションのための、安定感のある、整備されて成熟した方法を提供することもできます。これらの方法は、営利目的の大手組織によるものから、新興のオープンアクセスによるものまで、多岐に渡ります。


ジャーナルという枠組みの中でのさまざまな出版方法の利点については、別の機会に議論したいと思いますが、プロセスへの付加価値にはコストが付き物であり、これらのコストを科学者や資金提供者の利益のために役立てられる方法を、合理的に考える必要があるでしょう。


2. プレプリントは重要な貢献を果たすかもしれない


プレプリントという文化に移行するだけで、科学をより迅速に広めることが可能になるだけでなく、科学コミュニティがさらに開拓されるようになります。プレプリントは、有料の壁や文化の壁を乗り越えることができ、高額な費用がかかる学会やエリート機関の一員でなければならないような、科学のための交流における制約を排除することができます。


とは言え、現時点では、プレプリントシステムが従来のジャーナルの構造に取って代わるべきではないでしょう。ジャーナル出版という形式は有効だと思います。なぜなら、出版後査読というシステムでさえ、論文の厳密さや質に対するチェックが十分に行えるとは思えないからです(同時に、これはウィジェットやデータ、コード、プロトコルによって技術移転が促される最高のシステムでもあります)。


その上で、科学者やエンジニアの支援の下で、私たちがプレプリントシステムの普及を目指せば、現在提供されているものの強化や成長につなげることができると思います。


3. 出版前査読は有益


出版前査読では、独立した立場から、(少なくとも)表面的なチェックを行うことができ、専門家同士で検討すべき議論に大きな穴を開けることができます。


研究者はあらゆることに通じているわけではなく、また既得権益(金銭面での直接的な対立、評価の衝突、自己投資、エゴなど)も存在するため、出版前査読も完全無欠なシステムとは言えません。


理想的なのは、出版プロセスに関わるすべての人が、熟練した査読を行なったことや、査読に貴重な時間を捧げたことに対し、金銭と名誉の両面で適切な対価を得られる状況です。そのような議論があれば、エゴや個人的な評価を気にせずに済むでしょう。しかし、我々は人間であり、このシステムは長年に渡って続いているものです。


出版後査読の登場は興味深い展開ですが、私のような時間的余裕のない人間には、このシステムの長期的な成長をサポートしようとする報酬やインセンティブの土壌が、今のところありません(また、現在の編集プロセスよりも多くのリスクに、個人を晒すことになります)。


4. 科学者には、論文における対立に対処するためのより良いトレーニングと経験が必要


私はこれまでのキャリアの中で、科学的見解の相違を2回経験しています。個人的にはどちらも、時間的・金銭的・エネルギー的・結果的に不毛に感じられ、実際に、時間・金銭・エネルギー・評判などのコストが生じました。私はこのようなプロセスを経る度に、(後知恵ではありますが)人々がどのように反応し、対立にどのように対処すべきかを学んでいます。


ブログやソーシャルメディアを介して、あるいはケーススタディによって、これらの問題をより幅広く探求する余地はあるでしょう。私の研究グループは最近、さまざまな執筆スタイルを試し、新たな技術やアイデアを知り、文化による研究報告スタイルの違いを追跡するための輪講を始めました。興味深いコメントや批評を題材にしながら、グループで議論できることを楽しみにしています。


前進するために


科学についてオープンに対話し、科学を前進させるにはどうすればよいのでしょうか?


その答えは、システムをオープンにすることでしょう。


査読コメントを公開し、オープンデータの共有を義務化し、著者にプレプリントの投稿を働きかけてサポートすることです。


科学論文の「信頼性」を維持したまま、チェックプロセスをよりオープンでバランスの取れたものにしていくことは可能です。プロセスをオープンにすることで、私たちは共に学びながらシステムを改善し、それぞれの専門性を伸ばしていくことができるのです。


システムをオープンにすることで、それぞれの科学コミュニケーションが改善されるはずです。そして、最高の研究成果をより幅広く届けること、重要な仮説を検証すること、理解を深めること、社会にとって最善の意思決定を可能にすること、といった本来の目的に向けて、システムを再調整することができるでしょう。

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ベン・ブリットン(Dr. Ben Britton)博士は、インペリアル・カレッジ・ロンドン王立工学アカデミーのリサーチフェロー兼上級講師です。この記事は、本人のブログMedium blogで公開されたものを、許可を得てここに再掲載したものです(元記事はこちらからご覧頂けます)。

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