研究助成金を獲得するための新戦略

研究助成金を獲得するための新戦略

研究助成金は現代の研究者にとって非常に大きな問題です。不況の影響で、ここ十年以上、多くの国でGDPに占める研究助成金の割合が減少しています。国の研究助成の縮小と相まって、競争が増加したため、大学の研究者が新しいプロジェクトを始めるのは大変難しくなっています。もっと大変なのは、若手研究者が研究費を受けることです。

ある研究によると、NIH(National Institutes of Health)グラントR01受給者の平均年齢は43才ということです。つまり、若手研究者は、自分のプロジェクトを始めようと思うまでに15年以上も研究室の仕事をして過ごさなければならなりません。また、小さな研究所では研究費を受けることも時には難しく、国の研究助成の大半が、比較的大きく有名な大学に行ってしまいます。

国あるいは民間の研究費への申請という退屈な仕事を終え、だいたい一年かそれ以上回答を待った後に、プロジェクトへの助成金調達に失敗したとしたら、研究者の苛立たしさといったらないでしょう。こうした状況に対処するため、欧米の研究者は、「クラウドファンディング(crowdfunding)」と呼ばれる代わりの助成元を準備してきました。2009年、Kickstarter というウェブサイトが立ちあげられ、美術、音楽、その他クリエイティヴなプロジェクトに対し資金調達のプラットフォームを提供しました。その後数年の間に、このサイトをモデルとして、科学研究への助成プラットフォームだけを目的とするウェブサイトが他にも立ちあげられました。例えば、MicroryzaPetridishFundaGeekなどです。

どのようなしくみになっているのでしょうか?プロジェクトの提案を簡単にまとめたものが投稿されます。プロジェクトが検討しているテーマに強い思い入れのある人は、そのプロジェクトに寄付することができます。資金調達者が目標額を集めるまでには、通常、数週間から2カ月くらいの一定の期限が定められています。資金提供者のリストがサイトに掲載されるので、プロジェクトの信頼性確立や、資金提供の見込みがある人の気持ちを動かすのに役立ちます。クラウドファンディングのサイトは資金調達全体の何割かを占め、資金提供者は一定額の寄付を誓約すると謝礼がもらえます。クラウドファンディングのサイトは、新しいプロジェクトを始めたい研究者にとって、サポートプラットフォームとしての機能を果たしています。

けれども、システム特有の難しさがないわけではありません。クラウドファンディングを通じた資金提供は、そのための手順に大変な労力を要します。プロジェクトを売り込んだり、資金提供者を探したりするには、役に立たないクラウドファンディングがほとんどです。また、プロジェクト推進と資金提供者を探すためソーシャルメディアを使うことは、特に、資金提供者が単独で行う時は、時間の浪費になる可能性があります。さらに、ソーシャルメディアの利用が極めて得意でなければならないし、利用者にずっとアクセスしてもらう必要もあります。プロジェクト推進とは別に、資金を提供してくれるグループにプレゼンを行わなければならないかもしれません。友人や同僚を誘い、一人ですべてやるのは難しいので、友人や同僚を誘い助けてもらう必要も出てくるでしょう。

とはいえ、こうした難しさはあっても、クラウドファンディングにはクラウドファンディング特有の長所があります。これを使えば、国が投資してくれなさそうな、より「リスクの高い」プロジェクトにも資金を提供してもらえる可能性があります。また、クラウドファンディングでは、資金提供者から直接寄付を受け取るので、研究者は一般の人々に対するいっそうの責任を担うことになります。もう1つの特徴は、資金提供を受けるプロジェクトは、社会全体と関係があるものが多いということです。クラウドファンディングのサイトでは、強い思い入れのある問題はどれか利用者が特定できるようになっており、関係のあるプロジェクトに資金提供を行うことで、その問題の解決に役立つというしくみになっています。実際のところ、資金提供者の多くは、あるプロジェクトが取り組んでいる問題に影響され、その問題を解決したいと思っている人たちです。

けれども、資金提供を行うにはある程度のリスクもあります。サイトでの援助を受けて始められた研究プロジェクトの多くが、まだ完遂していません。また、当局による監督がないため、ウェブサイトにプロジェクトを投稿する研究者の正当性が保証されない可能性があります。主要な政府系研究所によりクラウドファンディングのサイトが立ちあげられれば、こうしたリスクは最小になるでしょう。政府系の研究所であれば、研究者の正当性を精査することもできます。伝統的な助成元の代わりにはなれませんが、資金提供が困難なこんにち、クラウドファンディングは、科学者にとって頼りになるリソースであることは間違いありません。


 

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