非英語ネイティブ研究者が学術出版における課題を克服するには

非英語ネイティブ研究者が学術出版における課題を克服するには

中国人土壌学者の葛体达(Tida Ge)博士は、中国科学界の新しい世代を代表する研究者です。これまでに70本の論文を発表、2つの特許を取得しており、2013年のLu JiaShi Young Talent Award等、名誉ある賞の数多くの受賞によってその才能が認められています。国家自然科学基金委員会(National Natural Science Foundation of China)などの研究機関の一員としてプロジェクトにも参加しています。華中農業大学(Huazhong Agricultural University, China)で土壌・植物栄養学の科学士号、青島農業大学(Quindao Agricultural University, China)で作物栽培・農業学の科学修士号(MSc)、上海交通大学で植物学の博士号(PhD)を取得し、英国のバンガー大学(Bangor University)や日本の愛媛大学で客員研究員を務めた経験もあります。主として、地下の土壌・植物・微生物システムにおける栄養素の性質に注目した研究を行なってきました。現在は中国科学院亜熱帯農業生態研究所の副所長を務めています。

本インタビューでは、英文ジャーナルでの出版という課題を克服するための実践的なアドバイスを、葛博士自身の経験に基づいてお聞きしたいと思います。

葛体达博士与英国班戈大学教授进行田野调查

駆け出しの研究者だったころ、英語で学術論文を書くという経験は博士にとってどのようなものでしたか? 特別な困難はありましたか? ご自身の経験に基づいて、エディテージの読者にアドバイスをお願いします。

最初はやはり、言葉の壁のせいで難しかったです。査読者に対して実験方法や研究結果を分かりやすく書くのに苦労しました。英語を書くときに、中国語風の文体や構文になってしまいがちだったので、私の英語は不自然な「中国英語」(“Chinglish”)のようになっていました。この問題を克服するためには、分野の一流ジャーナルから出版された論文を読み続けて少しずつ語彙を増やし、学術的文章でよく使われる表現を学んでいく必要がありました。また、直接英語で書き、英語で考えることが必要でした。最初に発表したSCI論文は、私の学術的な英文が出来上がったことを示すものとなりました。

他にも、最初の頃に学んだことがいくつかあります。第一に、学術論文が出版されるかどうかを決めるのは、著者の文章技術ではなく、論文の内容だということです。第二に、優れた序論(introduction)を書くことが必要だということです。序論の役割は、テーマの概要や、類似した研究結果を紹介するためだけではないと思います。その論文が貢献し得る可能性を伝えることで、査読者の注意を引くことができます。また、タイトルも重要です。斬新であるだけでなく、研究の主要テーマと研究方法を具体的に表現したものでなければなりません。研究の材料や方法について詳しく記述し、必要であれば統計も含めましょう。そうすれば読者に、あなたが研究に十分力を注いだことが伝わります。これらの点に注意すれば、論文が編集者や査読者に受け入れられる確率は高まるでしょう。

査読者は、1つの論文に対して矛盾する見解を示すこともあり、そうすると著者は板ばさみ的な状況に陥ります。そのような状況を経験したことはありますか?査読者からの矛盾したコメントへの対処法について、アドバイスを頂けますか?

はい、これは著者、特に若手研究者がとても混乱してしまう状況です。査読者から矛盾するコメントをもらったら、できるだけ慎重に対処するようにしましょう。まず、査読者が指摘した主な問題点を1つ1つ確認し、自分の研究の内容や価値を変化させることがなければ、査読者の提案を受け入れるようにします。この方法は、経験から自分で学んだことです。その後で、妥当な提案に基づいて訂正を行います。ジャーナル編集者や査読者が著者の視点を理解しやすいように、査読コメントに対する自分の修正について適宜説明を添え、丁寧に自分の見解を述べましょう。

博士は、地域の中国語ジャーナルと国際的な英文のジャーナルの両方とやり取りした経験をお持ちです。両者に違いはありますか?

とくに違いはありません。私がやり取りをしたことのある国際ジャーナルの編集者は、丁寧で専門性を持った人がほとんどでした。言語の障を克服すると、編集者の意図を素早くつかむことができるようになり、出版プロセスをスムーズに切り抜けられるようになりました。

様々な理由から、ジャーナル査読者の評価や判定は必ずしも客観的でないと考える人も多くいます。分野の専門家ではなかったり、著者の意図する論理や視点を明確に理解していなかったり、論文を丁寧に読まずに適当な結論を出したりすることがあるという意見ですが、実際にそのようなことがあると思いますか?

そのような状況はあり得ると思いますが、私自身はほとんど経験がありません。多くのジャーナルでは、分野の専門家を査読者として推薦する制度があります。私は、査読者は客観的だと思っていますよ。査読が公平でないと感じるなら、著者は、専門家として丁寧にそのことをジャーナル編集者に伝えるべきです。なぜ評価が公平でないと思うのかを、はっきりと説明するのです。丁寧かつ論理的に反論すれば、ジャーナル編集者の印象に残り、著者はそうした状況にスムーズに対処できるようになっていくでしょう。


葛博士はインタビュー続編で、関連分野の研究で第一人者でありつづけるための実践的アドバイス等についてお話しくださいました。

 

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