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「ダブルブラインド・ピアレビューとオープン・ピアレビューには、それぞれ長所と短所があります」

「ダブルブラインド・ピアレビューとオープン・ピアレビューには、それぞれ長所と短所があります」

ジョン・バトラーアダム氏は、南アフリカ第2の老舗学術誌として複数の学問領域を扱うSouth African Journal of ScienceSAJS)誌の編集長(Editor-in-Chief)で、プレトリア大学のコンサルタントも務めています。過去には、フォード財団の大学院および高等教育のプログラム責任者、Eastern Seaboard Association of Tertiary InstitutionsCEO、ダーバン・ウェストヴィル大学副総長(教員)および社会経済学研究所所長を歴任しています。ペン州立大学で地理学、環境学、文学の博士号を取得したバトラーアダム氏は、長年に渡り、南アフリカにおける高等教育と研究に強い関心を持ち続けています。The Conversationに頻繁に寄稿するほか、SAJS誌で鋭い論説を多数執筆しており、出版経験は75件以上、学会発表経験は100回以上にのぼります。査読の経験も豊富で、査読そのものだけでなく、SAJS誌の査読者が直面する課題について深い理解を持っています。


本インタビューの前半では、南アフリカの学術システムや学術出版における「ポスト真実」に関する興味深いお話を伺いました。後半では、SAJS誌の編集長としてのご経験に焦点を当て、編集長としての責任、査読者探しの苦労、相反する査読コメントや著者の不正行為への対応方法などについてお聞きしました。この記事を読むことで、ジャーナル編集者による出版プロセスマネジメントへの理解が深まるはずです。

SAJS誌について詳しく教えて頂けますか?

1903年に創刊されたSouth African Journal of ScienceSAJSは、South African Medical JournalSAMJ)誌に次ぐ南アフリカ第2の老舗ジャーナルです。

これまでさまざまな組織がSAJSの出版を担当してきましたが、2009年からは南アフリカ科学アカデミー(ASSAfが出版元になっています。雑誌NatureScienceをはじめとする複数領域を扱う総合学術誌の中で、南アフリカ唯一の総合学術誌であるSAJSは、52誌中30位にランクインしています。


弊誌では、オリジナリティがあって、科学的に正しく、複数領域の科学者や読者に興味を持ってもらえるような論文を出版しています。


国内からの投稿がメインですが、アフリカ諸国(サハラ以南だけでなくアフリカ全土)、中国、インド、パキスタン、トルコ、ギリシャ、イギリス、米国などからの投稿もあります。


SAJSは盛況で、プレ投稿を含めると、ScholarOneを通じた投稿は年間900件以上あります。リジェクト率は、2016年は77%でした。また、多くの一流誌と同じく、「プレプリント」ジャーナルからの投稿も受け付けています。


2009年からは、購読・投稿・出版をすべて無料とするオープンアクセスモデルを導入しています。Web of ScienceおよびScopusに登録されており、SciELOの会員でもあります。


総合学術誌のSAJSには、各分野の専門家10人で構成された編集チームがあります。また、ジャーナルの核となっているのは、編集長(E-i-C)、マネージング・エディター、オンライン出版管理者のチームです。2016年以降は、オンライン専門のジャーナルとして、アクセスが無料の2つのサイト(http://www.sajs.co.za/https://issuu.com/sajs)と、4つのオンライン出版フォーマットを提供しています。


ジャーナルは、独立したE-i-Cを長として、ASSAfの委員会が任命した任期付きメンバーで構成された編集顧問委員会が、監視役を務めています。E-i-Cは、ジャーナル編集委員会の責任者でもあります。


SAJSには2つのセクションがあり、「フロント」と呼ばれるセクションでは、社説(通常はE-i-Cが担当する)、ニュース、意見書、論評、読者からの手紙、書評などを掲載しています。一方、研究セクションでは、査読済み論文、レター、レビューなどを掲載しています。

E-i-C としての主な責務はどういったものですか?

E-i-Cはジャーナルの「長」または「リーダー」であり、チームのサポートを受けながら、ジャーナルのコンテンツや質、制作・出版の期日通りの進行、出版の全プロセスの正常さ、編集・出版チームのリーダーシップ、ジャーナルのプロモーションなどについての責任を負う立場にいます。背負うべき責任の幅が広く、多くを要求される仕事で、何か不備があれば真っ先に首が飛ぶのがE-i-Cでしょう。


そのような責務を果たす中で、もっとも困難に感じているのはどのようなことですか?

まずは、E-i-Cを務める喜びを表明しておきたいと思います。私には、素晴らしい運営チーム(マネージング・エディターやオンライン出版管理者)と科学チーム(編集者10名のうち、半分は女性研究者です。私がこの仕事を始めた頃は、女性が10名中1名しかおらず、この状況を変えるためにさまざまな努力をしました)がついています。


困難としては以下のようなものがあります:
 

  • 査読者探し。期日通りに査読を終えるよう査読者に働きかけること
  • 対応が難しい著者への、親切かつ丁寧な対応
  • 早目の作業が望ましい各種タスクの締め切りの順守(多くのE-i-Cが残業によってこれを達成している)
  • (増加傾向にある)剽窃の検出とその対応。弊誌は複雑かつ厳格な方針を設けており、盗用の問題を解消するのに6ヶ月掛かることもある

査読者探しに苦労されているとのことですが、そういった状況にはどのように対応されていますか?


具体的に苦労しているのは、以下のような点です:

  1. 対象論文にふさわしい査読者の選定
  2. 査読依頼を引き受けてくれるかどうか
  3. 査読を期日通りに完了してくれるかどうか


査読者候補をリストアップし、リマインダーを自動送信してくれる機能が付いたScholarOneのサービスも利用していますが、このサービスだけで万事解決というわけにはいきません。

査読者コメントが相反している場合はどのように対応していますか?

以下のような対応策があります:

・編集者が、それぞれの専門性に基づいて判断する

・別途査読依頼を出し、妥協点を探ってもらう

E-i-Cが対応策を決定する(非常に稀)


否定的なレビューを免れない論文は、リジェクトします。

意図的ではないケースも含め、著者が研究不正を行なっていることに気付いた場合はどのように対応していますか?

弊誌の出版契約条項に反した著者には、各違反行為に応じた処置が適用されます。たとえば、弊誌以外のジャーナルにも論文が投稿されていた場合は、論文をリジェクトし、著者をブラックリストに登録します。剽窃行為があった場合(編集者に論文を割り当てる前に、iThenticateを使って剽窃チェックを行なっています)は、剽窃に関する方針に基づいて対処します。ただし、若く経験の浅い著者であると判断した場合は、話し合いの場を設けるようにしています。契約違反を犯したと断定された著者は、すべてブラックリストに登録されます。

著者の非倫理的行為を防ぐ上で、ジャーナルが果たせる役割はあると思いますか?どのような役割があるとお考えでしょうか。

倫理的な研究や出版慣行を実現するためにジャーナルができることは、いくつかあると思います。しかし、それほど簡単なことではありません。ジャーナルの役割としては、iThenticateなどのツールによる論文のチェック、剽窃に関する方針の設定、剽窃が検出された論文数の公表などがあるでしょう。ASSAfは、南アフリカのジャーナルに向けた最善の出版慣行のための規約を設けています。このようなガイドラインによって、研究者に、研究や論文出版のあらゆる局面で倫理的であるよう働きかけることができます。

論文投稿時のよくあるミスにはどのようなものがありますか?こうしたミスを防ぐためのアドバイスをお願いします。

この質問だけで1つのインタビューになりそうなので、簡潔にお答えしましょう。頻出するミスは、2つ挙げられます。1つ目は、ScholarOne経由でジャーナルに直接投稿する場合です。これは、ガイドラインを読んでいないということです。このような論文は即座にリジェクトされます。2つ目は、少なくともガイドラインを部分的に読み、規定通りに私宛てに論文をプレ投稿するものの、その他の要件を見逃してしまっているケースです。どちらも、ガイドラインをよく読んでいないという点が共通しています。


最初のタイプのミスは、ガイドラインを読んでいないという単純なものです。これは、著者自身だけでなく、私たちの時間も無駄にします。そして、不注意で怠慢という印象を編集者側に与えてしまいます。


こうしたミスでもっとも多いのが、ガイドラインを読んでいない(あるいはしっかりと読んでいない)ために、参考文献の引用フォーマットが誤っているというケースです。このようなミスを犯している著者には、論文を送り返し、ガイドラインを熟読するよう伝えています。


2つ目のタイプのミスでもっとも多いのは、英語の校正を行なっていないケースです。このような場合は、正しい英語に書き換えて再投稿するよう求めます。このような問題があまりにも多いため、Manuscript Centralを使って対応しています。

査読の話題に戻りましょう。SAJSはブラインド・ピアレビューを採用しているオープンアクセス誌ですが、査読の透明性(オープン・ピアレビュー)についてどのようにお考えですか?従来のブラインド・ピアレビューよりも有効だと思いますか?また、SAJSが透明性の高い査読プロセスを将来的に取り入れる可能性はありますか?

ダブルブラインド・ピアレビューにはメリットがあり、検討の余地があると考えています。このシステムなら査読者の誠実性を保てますし、著者側も、「査読者から個人的な理由や科学的見解の差異で不当な評価を受けるのではないか」という不安を感じなくてすみます。とは言え、小さな学術コミュニティでは、より大きなコミュニティに所属している人でない限り、論文の研究テーマや文体から、著者をある程度推測できてしまいます。よって、国際的に見ても完全無欠なシステムとは言えないのです。また、ダブルブラインド・ピアレビューには、著者が不当な非難を浴びるリスクがあります。査読者が、匿名性の陰に隠れて、攻撃的、性差別的、人種差別的なレビューを行う可能性があるからです。その点、オープン・ピアレビューなら、このような不当な行いを防ぐことができるでしょう(もちろん、その背後にある本心までは変えられませんが)。


両方のシステムには、それぞれの長所があり、(論文の深刻な問題を検出できない可能性を含めた)短所があります。しかし、科学的公正性を維持する上で、査読は欠かせないものです。SAJSは、ある人物が査読者としてふさわしくないという正当な理由がある場合は、その人物を指定できる権利を著者に与えることで、ダブルブラインド・システムの致命的欠陥の改善に努めています。しかしながら、このシステムを査読の新たなアプローチとして導入できる段階には至っていません。ただ、SAJSのように、分野ごとのプレプリントサイトに事前公開された論文を受け入れることは、投稿された論文がより厳正なものであることを保証する手段になるのではないでしょうか。


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素晴らしいインタビューをありがとうございました!査読プロセスや不正への対応について、大変興味深いお話を伺うことができました。


インタビューの前半もぜひお読みください:「地球温暖化は事実であり、他国の経済成長を妨害するための策略などではありません」

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