査読トレーニングを導入して、研究への信頼を育もう

査読トレーニングを導入して、研究への信頼を育もう

「査読を学術出版の中心的存在と考えるなら、研究者を育成する上で、査読者になるためのトレーニングが不可欠でしょう」

ここで、次のような2つの場面を思い浮かべてみてください。

場面1:ジャーナルに論文を投稿すると、論文を査読に回したという連絡が来ました。あなたは、査読者には経験豊かな専門家が任命されたのだろう、そして、論文をより良いもの磨き上げるために役立つフィードバックが得られるだろうと期待します。

場面2:今度は、反対の立場です。あなたはジャーナル編集者で、出版を検討したくなる興味深い原稿を受け取りました。著者には、論文を査読に回すと伝えました。苦労して査読者も見つけました。あなたは査読者に、論文に大きな問題がないかを専門的見地から検討して指摘してくれるだろう、そして、原稿が出版に値するか否かの判断を助けてくれるだろうと期待します。

2つの場面に共通しているのは、著者も編集者も、査読に信頼を寄せている点です。査読は科学の発展に不可欠であるということは、多くの研究者が認めるところです。建設的な査読は、論文の持つインパクトを増大させ、ジャーナルにも、質の高い研究論文を出版できるというメリットをもたらします。つまり、査読のクオリティに多くのことが委ねられているのです。


査読における課題


ここ数年、論文の出版点数はうなぎ登りに増加しています。国際科学工学医学出版社協会(STM)が発行した報告書によれば、2018年には300万本を超える論文が出版されました。

これはつまり、ジャーナルに、ひいては査読プロセスに、投稿論文が殺到しているということです。ジャーナル編集者は、初回審査をパスした原稿に対して、査読者を選任します。ジャーナル編集者は、日頃から専門家たちとの繋がりを築いており、査読を依頼する際は、その専門家たちに声をかけます。しかし一流の研究者である専門家たちは先約も多いため、依頼を断られてしまうこともあります。そうなると、編集者は頭を抱えることになります。もちろん、依頼が承諾されるケースも多いですが、ここで疑問が生まれます。査読者は、本当にすべての原稿を自分でレビューしているのでしょうか?

201910月にeLifeが発表した論文によれば、査読プロセスには若手研究者が多く関与していながら、編集者側は多くの場合それを知らず、自分が依頼した専門家本人が査読を行なっていると考えているということが明らかになりました。この研究は、500人の研究者を対象にした調査に基づいたものですが、その結果からは、見習い研究者が「共同査読」という形で関与しているケースが多く存在する実態が浮き彫りになりました。

懸念すべき点は、調査参加者のうちの約50%が、主任研究者(PI)による支援やフィードバックなしに、適切なトレーニングも受けないまま、単独で査読レポートを作成していると回答したことです。これを受け、一部の研究者たちは、学術出版の頑健性に疑問を呈しました。米マサチューセッツ州の幹細胞系バイオテック企業Asymmetrex社の創業者で研究医のJames L. Sherley氏は、「経験不足の査読者が論文査読という重要なプロセスを担うのは、著者に害をもらす行為です」と話しています。


正式な査読トレーニングの重要性


James L. Sherley氏は、ジャーナル出版は「研究者としてのキャリアを左右し、研究者の生活を支え、政策に影響を与え、研究資金獲得の成否に関わり、科学や医学を発展させ、学術関連企業を支え、強い影響力を持つもの」であると指摘し、健全な出版の重要性を訴えています。そして、査読のトレーニングを「アカデミアにおけるキャリアの過程で提供すべきであり、トレーニングの各段階で、健全な出版の重要性を伝えるべき」と話しています。

事実、ほとんどの研究者が、査読の正式なトレーニングを受けた経験を持っていません。「研究者人生を通して、数百あるいは数千もの論文の査読を依頼されるにも関わらず、査読のトレーニングを受けた研究者はごくわずかで」と話すのは、査読者の評価に力を入れるニュージーランドの企業Publons社で広報責任者を務めるJo Wilkinson氏です。Wilkinson氏は、論文の審査員として十分なスキルを有さない研究者もおり、そのような場合はトレーニングが重要な役割を果たすと述べています。


査読のための専門的なサポートと正式なトレーニング


多くの研究者は、論文を査読するという実践を通じて査読者としての経験を積んでいます。正式なトレーニングが存在しない中で支えとなるのは、上司やジャーナル編集者です。Taylor and Francis社が2015年に発表した、査読に対する学術界の見方を扱った白書によれば、調査対象者の著者6,300人のうち60%が、「査読に関するワークショップや正式なトレーニングを受ける機会が欲しい」と回答しています。

キャリアの浅い研究者にとって、査読は、自らの知識を披露する機会です。査読者として認められれば、分野の専門家として受け入れられ、経歴や評価を大いに高めることに繋がります。一方で、査読のクオリティは、ジャーナル編集者が研究者の業績や出版物に寄せる信頼にも大きな影響を与えます。こうした点からも、査読の正式なトレーニングを受けることは、重要な意義を持ち得るのです。

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査読は研究プロセスに不可欠な存在です。短所もありますが、科学界では依然として重用されています。査読への信頼を向上させ、より頑健な査読システムを構築するためには、トレーニングを求める査読者の要望に応え、研究者の育成における必須項目として組み込むことが重要でしょう。

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参考資料:

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