日本医学コミュニケーションセンターの先駆者 バロン教授インタビュー③「英語で医学論文を書く研究者へのアドバイス」

日本医学コミュニケーションセンターの先駆者 バロン教授インタビュー③「英語で医学論文を書く研究者へのアドバイス」

J.パトリック・バロン教授は、the Journal of Gastroenterology、Breast Cancer、the Journal of Bronchology、Allergology International、the Journal of Cardiac Surgeryといった幅広いジャーナルでエディターや編集顧問をされています。

1975年、日本の医科大学に情報センターを作るというアイデアを初めて提案されました。それにより出てきたのが、医学情報センター、医学論文に対するセンター内サポート、日本国内から外国への情報のコミュニケーションといった革新的なアイデアです。現在はCOPE (出版倫理委員会;Committee on Publication Ethics)における、日本向け国際アドバイザリー・グループ(International Advisory Group for Japan)の一員です。
詳しい経歴につきましては、3部からなるこのインタビューシリーズの第1部をご覧ください。

 

COPE (Committee on Publication Ethics)の一員として、日本で新たに出てきた倫理的問題につてCOPEに助言を与え、こうした問題を扱うときの文化による違いを気づかせていらっしゃいます。あなたのお考えでは、倫理問題を解決するため、日本のジャーナルや出版社はCOPEなどの団体について、どのくらいよく理解していると思われますか?

 

私とCOPEのつながりでいうと、COPEが行っている大変すばらしい活動をアジア、特に日本、韓国、中国の団体へ広めていくことに大きな焦点を当てています;フローチャートをわれわれの無料の教育文章サイト www.ronbun.jp で発表する (登録の必要なし、広告なし、東京の大鵬薬品のご厚意による支援); 研究が調査中であるとき、著者の権利が確実に保護されるようにするため、利用できる方法論があることに気づかせるようにする。日本、韓国、中国の多くの団体が、利益の相反、出版倫理などに違反する可能性を、どう扱ったらいいか理解していません。COPE は、フローチャートだけでなく、会議やアーカイヴを通じて、自分たちの出版物に関する良質で堅固な倫理システムを開発し、考えうる倫理的問題に対処することに心からの関心を持つ人々へ、非常に重要な情報を大量に提供していると思います。

 

数多くの一流ジャーナルでエディターや編集顧問をされていますが、ジャーナルが論文に何を期待しているか教えていただけませんか?つまり、掲載に値する論文とはどのような論文ですか?

 

たくさんのジャーナルにかかわらせてもらい、本当に運がよかったです。エディター、査読者、読者が論文に主に期待しているのは、新しいことや、それが物事の現在のやり方に与える影響だと思います。ですからこのことが、質問の2つ目(掲載に値する論文とは)につながっていきます。非常に重要な質問です; 本質的な質問です。論文が掲載されるかどうかを決めるときの決め手となる質問であることも多いです。つまり、それほど興味を惹かれない論文であった場合、主流ジャーナルでは掲載されない可能性が高いです。しかし、臨床診療に影響を与え、患者の治療に重要な影響をもたらす可能性がある論文の場合は明らかに、査読者、エディター、読者の注意を引くでしょう。ですから、論文を書くとき、「序(introduction)」でリサーチクエスチョンが何であるか示すことが必要不可欠なのです; 「方法(methods)」で書かなければならないのは、何を測定するために、なぜそれらの方法を用いているのか、です; 「結果(results)」では、主な研究結果は何か、を書きます;「考察(discussion)」では、何をすることが目的だったか、何を示したが、そして研究の限界を書きます。

 

これまでの35間で、何千もの医学論文と抄録をご覧になってきたはずです。医学分野でEILEnglish-as-an-International Language;国際語としての英語)を使う著者が特に注意しなければならない点を明らかにしていただけませんか?

 

わかりました。確かに、過去45年くらいの間には、数万の論文を編集し、日本語から英語に翻訳し、1ダースもの医学教科書、5万を超える抄録やプレゼンテーションを編集してきました。まず強調したい第一点は、文章を明快に、わかりやすく書くということです。民間のメディカル・エディターの利用をお勧めしたいです。が、それより、本当に期待しているのは、もっと多くの医学部が学部内のコミュニケーションセンターを設置し、外部団体との連絡を不必要にしてくれることです。これは一種の共生プロセスです。言葉を変えれば、あなたが新しい編集補佐あるいはエディターとして病院に来た場合、最初は診療科の様々な治験責任医師の力(長所)を知りませんが、そのうちわかるようになるでしょう。彼らの得意とするところが何かも学ぶでしょう。論文を編集するときには、何ができて、何ができないのか、理解できないことは何か、治験責任医師たちがあなたに教えてくれるでしょう。ですから、できるだけ多くの医学部にコミュニケーションセンターを設立することが不可欠だと思うのです。コストは高くないですよ; 基本的に、健康で知的なエディター1名とアシスタントをフルタイムで雇用するコストだけです。それにより、膨大な量の論文を検討してもらい、掲載へと送り出すことができるのです。

 

外国語でのコミュニケーションを学んできた人として、他の分野のEIL研究者に何かアドバイスをいただけませんか?

 

第一に、私は有名な胸部外科医のジョン・ベンフィールド(John Benfield)博士と、著名な言語学専門家のクリスティーン・フィーク(Christine Feak)博士に、私は心から賛同します。お二方は、すばらしい結果は、言語/文章の専門家と、論文を書いている専門家との協力により獲得されるものだという見解を強く提唱してきました。だからこそ、編集サービスを利用しているならば (論文の謝辞では、そのサービスについて取り上げなければなりません)、同じエディターに自分の論文を扱ってもらいたいとはっきり示すべきだと私は思うのです。そうすれば共生関係を築くことができますし、それによって互いから学ぶことができるでしょう。

 

医学・医療分野のEILの研究者に、何か一言ご助言いただけないでしょうか。

英語を完璧にし、自分が見せたいと思っていることを見せることが重要だと私は考えています。だからこそ、著者がエディターと自由に接触でき、その逆も可能な施設内設備が、より良い効果的な論文発表をもたらすと考えているのです。したがって、非英語圏、非ヨーロッパ言語圏の著者の皆さんに送る私からのアドバイスはこうです: 周りにいる人で、あなたの論文をすばらしいものへと編集してくれる人と、良好な関係を築く方法を考えるようにしましょう。

 

バロン教授、ありがとうございました。

 


【バロン教授へのインタビュー記事

バロン教授インタビュー①「医学英語で日本における学術コミュニケーションの障壁を乗り越える」

バロン教授インタビュー②「日本における医学英語- 専門家はいかにコミュニケーションをとっているか」

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