研究体制刷新に対する努力により、中国は科学において世界的な影響力を持つようになるか?

研究体制刷新に対する努力により、中国は科学において世界的な影響力を持つようになるか?

科学的成果という点で、中国は世界をリードする国の一つであり、科学的研究と出版において世界的リーダーとして次第に頭角を現してきています。しかしながら、研究の発展や研究が持つグローバルな影響力を重要視しない研究管理に関連し、草の根レベルでの問題に取り組んでいるところです。こうしたことにより、中国政府は、資金提供から基礎的研究へ重点をおくことまで、すべてのレベルの問題を対象とした刷新プログラムを打ち立てるようになってきました。これらの変化が、中国の研究状況に革命をもたらす可能性があると、有識者は感じています。
 

長年にわたり、研究に多大な投資をしてきましたが、科学・テクノロジーへの資金提供が効率的に管理されていなかったことから、 研究プログラムの重複、質の低い研究者、研究資金の乱用、不適切な助成金配分といった根強い問題につながっていることを、中国は認識していました。さらに、中国はゲノム解読や宇宙計画のような先端研究分野で著しい進展を遂げていますが、基礎研究では遅れをとっています。その結果、政府は相当の公的医療制度コストを負担してきました。ですから、中国の研究がグローバルな影響力を増大させるにはどの研究に投資の価値があるかを判断するために、適切なパラメータを設定することが、急務の一つです。

こうした課題を特定することで、中国の財政部と科学技術部は先日、いくつか重要な分野での刷新を発表しました 。詳しく見てみましょう。

 

1. 資金提供のための新「五本の柱体制」の導入

中国の研究資金提供システムは、ゆがめられ腐敗しているとの批判を受けてきました。中国では、少額の助成金が厳格な評価プロセスを通過しているのに対し、高額の助成金は個人的な人間関係をもとに配分されているのが普通です。中国政府は、新「五本の柱体制」を打ち立て、研究の価値評価におけるこうした大きな不備のを検討するよう計画しています。

この体制によれば、重要な柱の一つとされている中国国家自然科学基金委員会(National Natural Science Foundation)は、研究プロジェクトの評価を担当することになります。再編成された資金は以下に配分される予定です:科学技術の主要プロジェクト、主要研究開発プログラム, 技術革新、人材・インフラ開発を目指した特別プロジェクト。  

 

2. トランスレーショナル・リサーチへの参入
 
中国は基礎研究の発展に専念したいと考えています。そこで、資金を基礎的調査に向けることを目的に、研究者、医師、患者を一同に集めることで基礎研究と臨床的応用の橋渡しをするよう意図された5つの機関の設立を計画してきました。これらの機関に所属する医師は、研究と同様に自分の仕事にも集中することができます。5つの機関の第一であるNational Centre for Translational Medicineは2014年上海に設立されました。医療の提供と基礎研究へのさらなる集中を意図して、こうした手段がとられているのですが、中国にとっては、給与とインフラの相違により海外で働いている中国人科学者・臨床医を引き寄せることは、なかなか困難であると思えるかもしれません。 

 

3. 中国科学院(Chinese Academy of Sciences (CAS))の刷新

中国の科学シンクタンクとして機能しているCASですが、体制と機能を大きく変更する過程にあります。CASの様々な機関を超え、関連したプロジェクトに関わっている研究者たちは、研究内容が重複していたり、知識を共有する機会を失っていることがわかりました。そこで、リソースをもっと効率的に利用し、連携を促進するために、研究者には今後、周辺的な進歩にしかつながらない数多くのプロジェクトに携わるよりも、少ないけれどもより重要な研究プロジェクトに携わることが勧められる予定です。
中国科学院では、研究分野をカテゴリーにまとめ、研究の重複がないように、また同じ分野の科学者が共同で研究できるようにしています。しかしながら有識者の中には、CASの非効率的な雇用システムと、科学者によりよい経営環境を提供している大学や個人の研究機関との競争にCASが直面していることを引き、こうした計画の遂行について懐疑的に考える者もいます。

 

中国による大規模な刷新計画は、科学領域の優れた人材とリソースを国が最適に利用することを妨げてきた、根本的問題を解決するのが目的です。仮に中国が、主要な公的資金援助システム、研究体制、システムのビジョンを作り変えることに成功し、数多くの難題を乗り越えることができれば、近い将来、科学力を持つ有力な国としての地位を確立できるでしょう。

 

記事「学術出版における中国の立ち位置とは?」もご覧になると、興味深く思われるかもしれません。

 

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