人はなぜソーシャルメディアで広告をシェアするのか?
デジタルマーケティングでソーシャルネットワークの力を活用するには、製品・ブランド・企業に関するコミュニケーションを促進する方法を理解することがきわめて重要です。いわゆる「ネット上の口コミ(electronic word-of-mouth、E-WOM)」に関する研究では、広告の受け手への影響に注目することが多いですが、チョイ(Choi)教授率いる研究チームは、個人が広告をシェアするそもそもの理由とその方法について調べました。
チョイ教授は、「広告の受け手がどのくらい早い段階で購入を検討するのかを確かめるためにこの研究を考えました」と説明し、「また、広告のデザイン(テキストか画像か)によって、広告がシェアされるかどうかに影響があるのか否かも調べました」と話しています。さらに、ソーシャルメディアではシェアする相手を選ぶことができるという点を考慮して、E-WOMにおける社会的結び付きの強さの影響にも着目したと言います。
研究チームは、韓国でソーシャルメディアの利用率がもっとも高い世代は20代であるという事実を踏まえ、大学の学部生を調査対象に選びました。調査ではまず、翌週または翌年に引っ越しをするという内容のシナリオを被験者に読ませ、その後、テキストまたは画像の家具広告を見せました。その後、ソーシャルメディアを使って友人や一般の人々にその広告をシェアしたいかどうかを聞きました。
その結果、消費者はよりつながりの深い相手に広告をシェアする傾向があることが分かりました。また、購入時期や広告のフォーマットも、ユーザーが広告をシェアするかどうかに影響を与えていました。
この研究結果は、デジタル時代を生きるマーケターたちへの有益な知見となるでしょう。たとえば、ユーザーが友人に広告シェアする傾向が強いことを踏まえれば、消費者のオンラインコミュニティを作ってコミュニティ内の関係性を強めるなどの戦略がとれます。また、商品購入のタイミングに広告デザインを合わせることにも着目する必要があります。というのも、チョイ教授によると、「高頻度で緊急性の高い購入には商品画像がシェアされやすいのに対し、低頻度で緊急性の低い購入には、テキスト形式の広告の方がシェアされやすい」からです。
Internet Research誌で発表されたこの研究は、出版元からその功績が認められ、エメラルド社「Emerald Literati Awards for Excellence 2018」奨励賞を受賞しました。
この研究は、韓国政府が助成する韓国基礎科学支援研究院による支援によって行われました(NRF-2014S1A5-A2A0101-5688)。
参考資料
著者: | Yung Kyun Choi1, Yuri Seo2, and Sukki Yoon3 |
論文タイトル: | E-WOM messaging on social media: Social ties, temporal distance, and message concreteness |
ジャーナル: | Internet Research |
DOI: | |
著者所属: | 1 Dongguk University, Republic of Korea 2 University of Auckland, New Zealand 3 Bryant University, USA
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東国大学校(Dongguk University)について
1906年ソウルに設立。各種分野をカバーする13の大学(カレッジ)で構成され、慶州市や高陽市、ロサンゼルスにもキャンパスがある。独立研究を行う1300人の教授と、1800人の学生を要する。分野間の交流が強みで、IT、バイオテクノロジー、CT、仏教などの分野を横断した研究が奨励されている。
ユン・キュン・チョイ(Yung Kyun Choi)氏について
ミシガン州立大学(イーストランシング)で博士号を取得。現在は東国大学校で広告PR学科の教授を務め、メッセージの一致効果、バーチャルなソーシャル環境における消費者の行動、異文化間の広告効果などについて研究している。International Journal of Advertising誌の最優秀査読者賞のほか、最近ではEmerald Literati Awards for Excellence 2018の奨励賞を受賞しており、広告・マーケティング関連のトップジャーナルで論文を出版している。2016~2018年にはKorean Scholars of Marketing Science(KSMS)の会長を務めた。
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