一般の人に科学をうまく説明するための簡単な6つの方法

一般の人に科学をうまく説明するための簡単な6つの方法

 「塊茎作物(tuber crops)って何ですか?」と化学技師が尋ねました。彼は、塊茎作物を専門とする研究施設を見学している駆け出しの農業研究者たちのグループに同行していました。

迅速で簡単明瞭な答えが返ってきました。
「塊茎作物とは、成長の極性が反対になっている作物のことです('Tuber crops are those crops in which the polarity of growth is reversed.')」。科学を一般向けに説明するという技について論じるとき、このやり取りがいつも私の頭によみがえってきます。有名なCOIK(知られている場合にだけわかる)の誤謬の完璧な例です。

一度何かを知ったり理解したら、それを「知らない」でいることはできません。
科学者でない人向けに文章を書く科学者は、科学を知らない人の視点から書くのを難しいと感じます。著者と読者の間に立つエディターが重要な役割を担う、つまり素朴な読者の役を演じるのは、こういう場合です。


ジャーナルの研究論文は(インパクト・ファクターの高いジャーナルであればよりのぞましいですが)、科学者にとって一番大切なものです。一般向けに文章を書いている科学者と仕事をする場合、エディターは、研究者仲間に向けて論文を書いているのではなく、もっと広い読者層に向けて文章を書いているのだということを、科学者に思い出させなければなりません。
-名声や優先権がほしくて書いているのではなく、誰かのために書いているのです。
-自分の研究の妥当性を証明するためというよりは、研究を説明するために書いているのです。
つまり、すぐれたサイエンス・ライターでいる必要があるのです。

すぐれた科学的文章とは一般に、どんな特徴があるのでしょうか?
それを見つけ出すために、私は印象的な科学的文章をたくさん調べました。
参考にしたのは、

(1) 2000年から年次巻として出版されているBest American Science Writing seriesの掲載記事・文章、

(2) 一般向け科学書で最高のものに贈られる王立協会科学図書賞(the Royal Society prize for the best-written science book1 )を受賞した本、

(3) anthologies such as the Oxford Book of Modern Science Writing2 (リチャード・ドーキンス(Richard Dawkins)編) やFrom Creation to Chaos: classic writings in science3 (イギリスの週刊科学雑誌 New Scientistの前エディター、バーナード・ディクソン(Bernard Dixon)編)といった選集、

(4) インターネットで入手できる関連資料、でした。これらの資料は、科学を説明するため、共通の戦術を使っていました。



以下では、その中のいくつかをご紹介しましょう 。一般向けの文章を書く科学者と一緒に仕事をするエディター、そして科学者自身にも、それらの戦術が役に立つことがわかるでしょう。

1. 例を挙げる
多くの抽象的な概念は、例を挙げることによって本質的なところで学ぶことができます。'The part of the visible spectrum with wavelength ranging from 495 nm to 570 nm' (「可視スペクトル領域で波長が495~570nmのもの」)は、正確かもしれませんが、'green-ness' という概念を理解するには難しすぎます。これに対し、'the same colour as that of grass or fresh leaves' (「草や新鮮な葉と同じ色」)は正確ではないかもしれませんが、非常にうまく意味を伝えています。


2. 比喩を使う
時には、著者に適切な比喩を考え出すよう指示する必要があります。比喩は新しいものを古いものに、知らないものを知っているものに結び付けるのに役立ちます。
輸送調査委員会(Transportation Research Board)が、輸送技術で使われている用語、'through-put maximization'(「スループット最大化」)を一番上手に英語に 「翻訳」したものに1000ドルを与えたところ、優勝者 (サイエンス・ライターのポール・ハッセ(Paul Hasse)) は比喩を使っていました4

「車道での車の流れは、米粒をじょうごに注ぐようなものです。ゆっくりと注げば、流れは均等になりますが時間がかかります。速く注ぐと、じょうごが詰まってしまいます。
1時間でほとんどの車を移動させるのが、最適な速さです
('Car-flow on a road is like pouring grains of rice through a funnel. Pour too slowly, the flow is even but it takes longer: pour too fast, the funnel is clogged. The optimum speed is that which moves most cars per hour.')」。


 

3. 質問を投げかけ、それに答える
質問は、注意を集中させるのに役立ちます。子どもが言語獲得するときに行う決まりごととしても、質問・回答は重要です。
The Human Brain: a  guided tour5の中で、スーザン・グリーンフィールド(Susan Greenfield)は次のように述べています。

「そもそもなぜ突然ナトリウム・チャネルが開かなければならないのでしょうか? 言い方を変えれば、活動電位を引き起こすのは何でしょうか? 結局のところ、完全にランダムに生みだされた信号を有するのは、全く無意味でほとんどパラドクスといえます。夜の間ずっと、時々電話が鳴るけれども、電話の向こうに誰もいないという状況を想像してみてください」

彼女が比喩をどのように展開させているかにも、注目しましょう。


4. 発音や語源を示す
おそらく最も成功を収め、多くの作品を残したサイエンス・ライターのアイザック・アシモフ氏(Isaac Asimov)は、重要な科学用語がどのように発音され、またその語がどのように派生してきたかを示すことを決して忘れませんでした。読者に新しい用語を覚えてもらうためには、この方法も役に立ちます。


5. 言葉を使って絵を描く
具体的な単語を使い、色、形、大きさ、質感など詳しく言及すると文章が生き生きとします。
'Light air, wind speed 1–6 km/h''Light breeze, wind speed 7–12 km/h' という表現は、ビューフォート風力階級の分類としては十分正確です。けれども、同様のことを述べた、'direction of wind shown by smoke drift, but not by wind vanes' や 'wind felt on face; leaves rustle' は生き生きとした表現であるため、これを読んだコピー・エディターはビューフォートについてもっと知りたくなり調べ始めました6

次に紹介するのは、Ficus repens7(『オオイタビ』)でのダーウィンの言葉です。
 「オオイタビは、ツタのように壁を這い上がります。そして、ガラスの小片を軽く押さえるために若い細根が作られると、約1週間後に(私は数回見たことがありますが)、細根から透明な液体がほんの数滴放出されます。傷口からにじみ出るような乳白色の液体ではありません。この液体はわずかに粘り気がありますが、延ばして糸状にすることはできません。すぐに乾燥しないという驚くべき特性があります。
'Ficus repens climbs up a wall just like ivy; and when the young rootlets are made to press lightly on slips of glass, they emit after about a week’s interval, as I observed several times, minute drops of clear fluid, not in the least milky like that exude from a wound. This fluid is slightly viscid, but cannot be drawn out into threads. It has the remarkable property of not soon drying; a drop, about the size of half a pin’s head, was slightly spread out on glass.’)」

 

6. 状況の設定と重要性の強調
くもの糸の化学構造分析からブラックホールにいたるまで、研究を始めた最初の動機が何であれ、自分の研究テーマが読者にとっていかに難解かつ不可解であるかを、科学者はすぐに忘れてしまいます。けれども、科学者ではない人が興味を持てるようにするには、なぜ自分たちの研究が重要なのか、どうしたら有用であることがわかるか、広い視点から見るとどこに位置するかを、説明するよう努めなければなりません。科学者というものは、あまりにも早く詳細な部分に話を移しがちですが、うまく丸め込んで、自分たちの研究に関し適切な状況を設定するにさせないといけないのです

ティモシー・フェリス(Timothy Ferris8)は自著A Field Guide for Science Writersの序文で、サイエンス・ライターの仕事は過小評価されることが多いと警告しています。
 

サイエンス・ライターは「『本物の』物書きというよりはむしろ、通訳か翻訳家にすぎないと思われていることが、あまりに多い」。

このことは、一般向け文章を書く科学者を手伝っているエディターの仕事には、さらにいっそう当てはまります。けれども、プロのエディターであれば、評価されないからといって仕事に影響を受けるべきではありません。仕事それ自体がすでに報酬であるに違いないのですから。

さらに知識を深めるには、関連記事 How does the non-scientific community perceive science?をご覧ください

 

 

 

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