WAMEの取り組み – 世界の医学誌編集者のレベルアップを

WAMEの取り組み – 世界の医学誌編集者のレベルアップを

ロレイン・フェリス博士は、世界医学雑誌編集者協会 (World Association of Medical Editors, WAME) で事務局長と副会長を務めた後、会長に就任しました。また、同協会の倫理・方針委員会の委員長も務めています。トロント大学ダラ・ラナ公衆衛生学部教授であり、臨床評価科学研究所の上級科学研究員の肩書も持っています。現在は、トロント大学の研究(監督及びコンプライアンス)事務局に副事務局長補佐として出向。法律事務、研究倫理、研究の財政報告や監査に携わる他、研究不正行為の申し立てに対応する制度やプロセスの枠組みの策定に関わったり、全学的な委員会を通じ、委員長として研究の公正性に関する意識を高めるための活動を行なったりしています。

また、2誌のジャーナル:The International Journal of OccupationalEnvironmental HealthMedicine and Law, and Risk Management in Canadian Health Careの編集委員も務めています。

フェリス博士は、トロント大学で応用心理学の博士号を取得した認定心理学者であり、ヨーク大学オズグッド・ホール法科大学院では二種類の法律学修士号(裁判外紛争処理と行政法)を取得しています。関心を寄せる分野は、法医学政策、公衆衛生、女性の健康問題、医療サービス研究です。論文出版数は100を超え、ロバート・A.フレッチャー氏との共著である編集者見解(editorial)「査読付き医学雑誌における利益相反:解決困難な問題に対するWAMEの見解」は、WAME会員が編集を行う多数の医学・生物医学系ジャーナル誌に掲載されました。

WAMEの会長を務めるモチベーションは、どのようなものですか?

科学的医療による恩恵を広めて世界の人々の健康を改善させるというWAMEの使命は、非常に大切なものです。また私にとって、WAMEが非営利団体であるということも重要です。医学系学術誌に携わる編集者が世界規模で協力し合ってコミュニケーションを取れるよう支援し、編集レベルと専門性を向上させ、査読(ピアレビュー)や医学編集に関する研究を啓発している機関で働くことは、楽しくやりがいがあります。WAMEの職員、役員、委員長、委員は皆、こういった使命のために自分の時間を捧げているボランティアです。このように才能ある熱心な同僚たちと働くことができて、光栄です。

WAMEで取り組んでいる優先的な課題について、簡単に教えて頂けますか?

WAMEは大きな組織で(92ヶ国1000誌以上の学術誌からの会員数1915名)、優先的な取り組み事項は教育とアウトリーチ(啓蒙活動)です。2013年9月の戦略計画会議では、新会員に編集基準を教えること、補完的役割を担う他の国際機関に啓蒙活動を行うこと、そして会員へのサービス強化を優先することに重点を置くという報告書を出しました。

この戦略計画遂行のため、私たちはさまざまな教育・啓蒙活動に取り組んできました。優先的取り組み事項は、初のWAME医学雑誌編集者国際学会を開催することを2013年9月に発表した後に考えられたものです。現在、この学会は2015年10月2~4日にインドのニューデリーで開催される予定になっています。最近取り組みを始めたもう一つの重要戦略は、他機関と協力して透明性の基準を定め、学術出版の基準を定めることです。会員たちにとって役立つものになると期待しています。さらに、WAMEの新しいウェブサイトを開設して、会員へのサービスを強化するという取り組みも行いました。

優先事項を達成するために、WAMEはボランティアと会員の支援に頼っています。教育、倫理・方針、財務、会員、研究、ウェブサイトという6つの常任委員会があり、職員が4名いて、理事会があります。WAMEの仕事は、これらの委員会やグループが単独あるいは合同で行なっています。

WAMEは著者や学術誌にとって頼れる資料となり、国際ジャーナルの基準を確立しました。WAMEが学術的コミュニケーションの分野でどのように中心的存在になったのか、経緯を教えてください。

WAMEは1995年に、13ヶ国から集まった熱意ある医学編集者、医者、科学者のグループによって設立されました。彼らは、医学編集の基準が確立されておらず、医学編集者のトレーニングや編集者同士がつながる公的な機会がないことについて議論する国際会議に参加していました。以来、WAMEはこういった課題について話し合い、責任をもって教育と啓蒙活動を行い、努力を続けています。最初の国際会議参加者の多くはそのままWAMEの重要な会員となり、組織のリーダー的役割を果たしています。過去20年間、編集基準を確立しようと努力してきましたが、その間に多くのジャーナル編集者とのネットワークができ、彼らと協力して活動する機会を得ました。そのおかげで、編集者、出版社、査読者、著者からの信頼を得られるようになりました。

査読付き医学ジャーナルの編集基準を改善する上で、医学編集者のグローバルな協力やコミュニケーションはどれぐらい重要なのでしょうか。

科学はグローバルです。だからWAMEもまたグローバルなのです。編集基準を改善するためには、ジャーナル編集者やその他の関係者が査読や出版プロセスで直面する現状や障壁を理解することが重要です。この点は世界規模でみると違いがあるので、編集基準を改善しようとする場合、世界中のジャーナル編集者の協力を仰ぎ、必要な情報を共有してもらうことが必要不可欠です。WAMEはグローバルな組織として編集基準を改良することができていますが、これは、会員たちがこの仕事を支え、互いに進んでコミュニケーションをとり、それぞれの試みで協力し合ってきたおかげです。

医学編集に関する国際的なテーマや課題に関する最新情報は、どのように集めていますか?

情報を逃さないようにする方法は色々あります。役員と運営委員は世界中から集まっており、各々の経験と専門知識がWAMEでの仕事に生かされています。また、全会員が利用できるWAMEのリストサーブ(メーリングリスト)は活発に利用されています。これは、医学編集や査読のコミュニケーション手段として欠かせない、価値のあるものです。会員たちはこのリストサーブを利用して議論の場を設けたり、課題や動向について情報を共有したりしています。また、補完的な目的を担う他団体と議論や活動を行うこともあり、医学編集や査読における国際的な課題や問題に関する情報を集めるのに役立っています。

世界的な基を適用する際に、アジア、アラブ、中南米、アフリカなどの地域で、自治の面や実務面での障壁はありますか?

安定的なインターネットアクセスがなく、通信が遅すぎてバーチャル組織に参加できず、査読済みの文献にアクセスしにくいといった地域は世界中に多くあります。それでも、そういった地域の会員の多くはリストサーブに参加しているので、おそらくこのフォーラムの情報を受け取って、役立てているはずです。それはとても喜ばしいことです。小さな学術誌は、大規模な学術誌とは異なる困難に直面します。それは地理的要因で決まるものではありませんが、小さな学術誌の独自性を認識する必要があります。小規模学術誌の特別委員会を設けてその障壁について学び、よりよい教育や啓蒙活動の実践につなげられればと思っています。WAMEには、様々な規模の学術誌から集まった経験豊富なジャーナル編集者がおり、リストサーブでの議論を通し、時間を割いて他誌の編集者をサポートしてくれています。地理的側面から言えば、移動に関する制限が種々あるために、編集者がイベントに参加しにくいという障壁はあります。我々は世界各地の医学編集者グループ(EMAME, APAME,FAME等)と協力して仕事をしているので、各地域の編集者にコンタクトを取る際の助けにもなっています。

WAMEは、医学編集の専門性向上のカギは、「自主規制」と「自己批判」だとしています。これはどのように行うのでしょうか。

WAMEは、自規制を含めた専門性を向上させる団体です。我々は、ジャーナル編集者が査読や医学出版についての研究を支援し、その研究成果を自分たちの学術誌に掲載することを考えることが重要だと思っています。自分たちの学術誌の達成度をモニターし、その効果について外部の評価を得ることを、WAMEの方針を通じて会員たちに勧めています。方針の他にも、リストサーブでは、自主規制を奨励するフォーラムも提供しています。会員は査読や編集、出版プロセスに関する新しい研究についてよく議論しており、ベストプラクティスについて学び合っています。

利益相反の問題について、著者はWAMEの示す指針に従って対処していますが、学術誌側の透明性が欠如しているとして、著者側が懸念を表明しています。この問題についてどうお考えですか?

WAMEは、査読付き医学系学術誌における利益相反について、重要視される要素をまとめた声明を出しており、その中で「各学術誌は利益相反に関する自らの方針を述べるべき」と述べています。各誌の方針に従えば、著者、査読者、編集者の間で起こりうる利益相反について、透明性が高まるでしょう。WAMEには、学術誌の編集長とオーナー(例えば出版社)の関係に関する方針もあります。これは利益相反よりも広範な領域にわたるものであり、編集長が学術誌の編集内容について公正に対処し、全面的な権限を持つことの重要性を謳っています。WAMEは、社会的な信頼を確保するために、そして科学的医療による恩恵を広めて世界の人々の健康を改善するために、透明性は大変重要だと考えています。

WAMEは昨年、インドのニューデリーを訪れました。その時のイベントについて少し聞かせて頂けますか?

WAMEは、2013年11月にニューデリーで開催されたAll India Institute of Medical Sciences (AIIMS)のIndian Association of Medical Journal Editors (IAMJE)の年次大会に協賛しました。招待講演者の中にはインドや海外からの編集者も含まれ、全部で約180名が参加しました。主にインドの他の州からの参加者が多く見られました。メディカルライター向けと査読者向けの二種類のワークショップが同時開催されました。ワークショップとセミナーは実践的なセッションで、招待講演者や一般参加者が多数参加し、編集者が直面する実際の問題に取り組みました。

 

フェリス博士、どうもありがとうございました。

WAMEの前会長、Peush Sahni (ペーシュ・サーニ)博士は、2015年10月2~4日にインドのニューデリーで開催される第1回WAME International Conference for Medical Journal Editorsの開催を支援しています。WAMEはまもなく抄録の受理を始めます。今後の情報についてはWAMEのウェブサイトをご覧ください。医学系学術誌の編集者の方は、ぜひ参加をご検討ください。

免責事項:WAMEは、特定のサービスや製品を支持することはありません。

インタビュアー:Alagi Patel

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