医学論文における "case"、"patient"、 "subject"の使い方とは?

医学論文における "case"、"patient"、 "subject"の使い方とは?

人が参加している実験について書くとき、研究者はデータのソースとなっている個人以上に、データそのものに注目しているものです。科学とは主観的なものではなく、そもそも客観的なものです。ですから、研究論文においてI や Weという人称はめったに使われず、受動態が好まれます。
 

個人に言及したり、cases、subjects、data points という語でさえ使用するのを避ける傾向があるために、おそらくAMA Manual of Style に、よく用いられる語や句の好ましい使用に関する一般的指導の一部として、このテーマについての特別な指導が含まれたのでしょう。

AMA Manual of Style では「特定の人について言及するときは、caseを使うと、匿名性が保たれる」という立場をとっています[1]


この議論に関連して2つの方向性があるようです。

1つ目は、プライバシーの侵害について医師を相手取った訴訟に関係があります。文章の中に個人を特定する情報が書かれていないときでも、患者は医師である著者に対し訴訟を起こすことがあるかもしれません。そうした可能性があるため、医学論文の著者は、できるだけ匿名性を保とうとします。


2つ目は、「政治的正しさ(‘political correctness’)」に関係があり、たとえばblindの代わりにvisually challenged、handicapped の代わりにdifferently abled を使うような行為がそれにあたります。subjectという用語であっても、人を表すために使われる場合、低い地位を示唆する語だと思う人もいるのです。医学論文の執筆をとりわけ困難なものにするこれらの留意事項に応えるのが、EQUATOR Network(Enhancing the QUAlity and Transparency Of health Researchを縮めたもの)といったネットワークで、研究論文の著者にツールキットの提供を行っています[2]。


医学分野の研究者は、利用できるガイダンスのあまりの多さに圧倒されているかもしれません。けれども、casepatientのどちらを使うか選ぶとき、 patient は具体的なものに使い、case  は抽象的なものに使うことを思い出すとよいでしょう: a case of hepatitis(肝炎)は、出来事に関する何もかもを排除した統計ですが、a patient suffering from hepatitisは、肝炎を患っているというだけでなく、そのcaseに関わる、性別、年齢、食習慣など他の多くの属性を持っています。言葉1つひとつにそれぞれの用途があり、熟練した書き手は慎重に言葉を選び取っています。


 

[1] AMA. 2007. AMA Manual of Style: a guide for authors and editors, 10th edn., p. 388. New York: Oxford University Press [and American Medical Association]. 1010 pp.

 

 

 

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