査読における透明性の重要度:ケーススタディ

査読における透明性の重要度:ケーススタディ

事例:ある著者の論文がリジェクトされました。3人の査読者のうち、2人からは建設的なコメントとともにポジティブな評価を受けました。ところがもう1人の評価は極めてネガティブなもので、ほかの2人がまったく指摘していない部分について、クオリティや科学的根拠を著しく欠いているとのコメントが出されました。ただ、査読報告書には包括的な評価が書かれているだけで、改善のための具体的な助言などは一切ありませんでした。何より驚きだったのは、研究で一切使用していない実験方法を使用したことを批判するコメントがあったことです。


著者は、論文のクオリティに関するセカンドオピニオンを得ようと、エディテージの出版前査読サービスを利用することにしました。エディテージによる査読結果は、ほかの2人の査読者と同様の評価でした。この結果から、3人目の査読者の評価が不当であるという確信を得た著者は、対応策についてエディテージにアドバイスを求めました。


対応: 私たちは著者に、2人の査読者の評価ともう1人の査読者の評価に乖離があることを根拠に、ジャーナルの判断に抗議するよう助言しました。著者は、当該査読者のコメントの不備、すなわち改善のための助言が皆無であった点と、使用してもいないメソッドに言及していた点を示すことで、編集者の関心を引くことができました。


編集者はこの査読者に疑念を抱きました。調査の結果、その査読者には利益相反があり、査読依頼を引き受けた時点でそれを申告していなかったことが分かりました。査読者の研究テーマは著者のものと非常に近く、リジェクトすることで著者の論文出版を遅らせて、自分の結果を先に発表しようと目論んでいたようです。編集者は査読者の身分を明らかにはしませんでしたが、査読者の所属先にこの事実を伝えることを約束しました。著者の論文は、ほかの査読者に送られて再審査されることになりました。


まとめ:出版規範委員会(COPE)は、査読者が遵守すべき倫理ガイドラインを提供しています。この文書によると、査読を依頼された人物は、(個人的、金銭的、知的、職業的、政治的、信仰的)利益相反の有無やそれが生じる可能性について申告しなければならず、別のジャーナルに内容がきわめて近い論文を出版する予定がある場合は、依頼を断らなければならないとしています。利益相反の有無について判断できない場合は、ジャーナルに相談するべきでしょう。


しかし、一部の査読者は、透明性の保持に後ろ向きになって、利己的な目的を満たそうとします。競合相手の論文の査読依頼が届いても、利益相反があることを申告せず、その論文がリジェクトされる方向に持っていこうとするのです。シングルブラインド・ピアレビュー(一重盲査読)やダブルブラインド・ピアレビュー(二重盲査読)の場合、著者には査読が不当に行われたかどうかを判断する材料がありません。これは、査読者に非倫理的な行為があった場合、著者にとってきわめて不公平なシステムと言えます。


不正査読に手を染めると、以下のような事態が待ち受けている可能性があります:

  • ジャーナルのブラックリストに載り、データベースから名前が抹消される
  • 学術界に悪評が轟く
  • 関連機関や所属機関に不正を行なった事実が伝えられ、機関から何らかの処罰を受ける


査読は科学出版の土台を支えるものです。完全な透明性を確保して査読プロセスの公正性を守ることは、関係者全員の義務であると言えるでしょう。


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