査読を俯瞰的に見る

査読を俯瞰的に見る

研究とは、いくつもの判断を伴う系統立ったプロセスです。そして、科学上の発見やブレイクスルーが私たちの生活や社会に与える影響を考えると、研究成果の伝達と普及はきわめて重要です。そのため、発信された成果や知見を検証することは非常に重要であり、ここで存在感を増すのが査読です。論文が受理されて発表される前に査読という形で品質管理を受けることには、さまざまな理由があります。

 

信頼できる研究を広めるための査読の役割:査読とは、研究の有効性を確認できる能力を持つ個人を介して、原稿の評価を行うことです。研究の有効性を検証して出版の妥当性を評価するために、研究や実験の内容を、関連分野の専門家による精査にかけるのです。つまり、査読者は査読業務を通じ、研究論文の信頼性と正確性を保証する手助けをしているのです。査読を受けた論文は、質の高さが保証され、査読を受けていない論文よりも高く評価されます。

 

査読の基本目的は、投稿論文がジャーナルの対象範囲に合っているか、研究対象が明確に述べられているか、観察対象に取り組むために適切な手順を踏んでいるかどうかを確認することです。査読者は、研究の方法論をチェックし、結果が方法論に沿ったものであるかどうかを確認し、成果の新規性やオリジナリティを評価します。また、読みやすさを評価し、内容が論理的に提示されているか、結論の根拠が示されているかを確認します。こうした作業の結果、論文著者は、研究成果を最善の形で示すための有意義な情報を受け取ることができるのです。

 

査読者にとってのメリット:査読を行うことには、目に見えない多くのメリットがあります。その一つは、自分の専門分野に関連する論文を発表に導くことで、専門分野を支援し、学術界に恩返する機会が得られることです。査読は、質の高い研究を改善する上で大きな役割を果たします。また、出版物の改善に貢献することは個人的な喜びとなります。さらに、査読に携わることで、分野の知識や出版動向に関する情報が得られるため、自身の論文執筆能力を高めることにもつながります。一般的に、査読には、科学の自己調整機能があると考えられています。

 

査読者の尊重:査読者はほとんどの場合、無償で査読業務を行なっています。一部の出版社では、査読者にアーカイブへのアクセスを無料で提供しています。査読者を認めることに力を入れる組織(Publons  ReviewerCreditsなど)は、査読者の貢献を認知し、具体的に報いることを目指しています。

 

査読の複雑さ:査読を行うのは容易なことではありません。査読には、虚偽を発見し、欠陥のある内容が報告されるのを防ぎ、真の発見を広める手助けをする責務があります。さらに、研究を重ねる人々の血と汗と涙と金銭と長年の努力の賜物である研究論文に対し、建設的なコメントをする必要があります。これらのことは、査読の重要性を示すとともに、査読の複雑さを示すものでもあります。

 

近年、研究の重大な問題点を査読で発見できなかったなど、さまざまな理由から査読が批判されています。不首尾の理由として、査読者が分野で名を上げようとしていた人物であったこと、膨大な作業量に対応していたこと、投稿論文数の増加に対して査読者の数が増えていないことなどが挙げられます。

 

また、査読に関するその他の懸念事項として、透明性が十分でないことや、査読者が客観的であることが極めて難しいため(時には不可能)、結果として査読者の主観的な意見が査読に反映されてしまうことが指摘されています。一方、都合がつかない、利益相反があるなどの理由から、査読を引き受けられないこともあります。

 

査読プロセスに対する最大の批判は、プロセスに時間がかかる(数週間から数ヵ月、場合によっては数年に及ぶ)ことです。さらに、ハゲタカジャーナルが跋扈していることから、健全な査読プロセスが採用されていることの確認に手間取るケースもあります。

 

まとめ:査読は、研究コミュニケーションのプロセスにおける重要なステップであり、科学を進歩させる役割を担っています。査読自体の重要性には議論の余地がありませんが、学術出版界が査読をめぐる重大な課題に直面しているという事実にも変わりはありません。これらの課題は、検証済みの信頼できる研究を広める妨げになるだけでなく、査読者として貢献しようという意欲を失わせる可能性もあるでしょう。

 

おすすめの参考文献

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