Editorial Manager: 学術出版界の構造化を押し進める

Editorial Manager: 学術出版界の構造化を押し進める

Editorial Manager(EM)は、投稿・査読システムとして広く利用されており、御社の主力製品でもあります。EMが長年の間にどのように進化してきたのか、そしてEMが最善のワークフロー問題解決ツールといわれる理由を教えてください。

「進化」というのは実に的確な言葉ですね!出版社の中には、ソフトウェア開発は一度行えばメンテナンスは最小限でよいという、時代遅れの考え方をしているところも多くあります。しかし過去15年で、ソフトウェアの提供という概念が大きく変わりました。「退屈」な出版ワークフローシステムのソフトでさえ、ビジネスモデルの変化や新しい基準、新しいUI(ユーザーインターフェース)、基盤となるテクノロジー環境の変化などに対応するため、常にアップグレードの必要に迫られるようになったのです。

このため、Ariesは毎年、新技術に600万ドル以上を投資しています。また、ユーザーグループの会合を年3回開催し(ボストン、ロンドン、東京で、Atlas Corporationとの提携で開催)、ユーザーからワークフローの問題点について話を聞きます。例えば、昨年はシステム管理者の方から、複数の学術誌に関わるEメールを管理するのが大変であると聞きました。それに応えて、複数の学術誌からの書類を一括管理できるグローバルな編集ツールを開発しました。

言い換えれば、我々の進化は、顧客のニーズに耳を傾け、そのニーズに対応するべく、順序立てて資金を投資してきた結果なのです。

ここ数年は、著者の投稿原稿を学術誌が構成する際のサポートツールの開発に関わっておられます。2009年のインタビューでは、Editorial Managerのような投稿システムによって、原稿を構成するプロセスがどう改善されるのかについてお聞きしました。このような流れの中で、新製品であるEM Ingestはどのような位置づけにあるのでしょうか?

自動原稿構成のための解決方法を見つけることは、学術ワークフローシステムの「聖杯」(探求)といえるもので、まだその途上にあるというのが正直なところです。我々はまだ、著者が投稿した生原稿を、整ったXMLに確実かつ自動的に変換できるツールについて試行錯誤し、分析している最中です。JATS (NLM DTD) が原稿構成の事実上の基準としてほとんどの学術誌に受け入れられており、著者識別の基準として確立されつつあることは、歓迎すべき動向です。

これらの市場や技術のダイナミックス(変遷)の中で、Aries社は最近、EM Ingestサービスを開始しました。EM Ingestの背後にある考えは単純なものです。編集専門会社のような、認可された第三者が著者の原稿に価値を加え、Editorial Managerを利用するあらゆる学術誌に、著者に代わって最終原稿を直接投稿できるというものです。これにより、第三者が校正や研究領域に関わる詳細なチェックを投稿前に行なって、原稿を充実したものにできるだけでなく、よりよい構成にすることも可能です。著者にとっても、追加されたメタデータ(FundRefなど)をキーボードで再入力したり、識別したりしなくてもよいというメリットがあります。資金提供元や機関の圧力により、そのようなデータの追加が学術誌から要求されるケースは増えています。この過程を図で説明すると、以下のようになります。

オプション1: 著者が学術誌に直接投稿する ⇒ Editorial Manager

オプション2: 著者が投稿パートナーを介して投稿する

投稿パートナー

例:・校正サービス
  ・査読前サービス
  ・学術誌選択サービス
  ・出版社ブランドのポータルサイト
  ・共同執筆ツール


サービスを取り込む

ファイル & JATS XML

Editorial Manager

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EM Ingestのような新しいツールやサービスが、出版活動体制にどのような変化をもたらすとお考えですか?

個人的には、世界の学術誌への投稿の30%以上は、出版社の投稿システムに著者が直接手入力するのではなく、投稿を取り扱う提携先(パートナー)を通して行われるようになるだろうと思っています。このほうが著者にとって便利で、原稿の構成を直接行うことが可能となり、正確なメタデータを取り込むことができます。JATSやORCIDのような基準により、すでにそれが可能となっています。また、革新的な原稿執筆や共同作業のためのツールの開発も考えています。これらのツールを利用すれば、正確で構成の整ったメタデータがツール上に保存されるため、原稿をそのまま直接、学術誌の査読システムに移動させた方が、効率も良くなるはずです。

この記事を読んでいる読者のために、Ariesの概要について説明してください。どのようなことができ、STM(科学・技術・医学)分野ではどのぐらいの歴史がありますか?

Ariesは、1986年にAriesのCEO(代表取締役)兼社長のリンドン・ホルムズ(Lyndon Holmes)氏によって創設されました。同社は長年にわたって学術出版を重視し、力を注いできました。学術界関連機関のCSE、SSP、STM、ISMTEなどのメンバーでもあります。

Ariesは、学術出版のワークフローシステムに特化した、Software-as-a-Service(必要な機能を必要な分だけ利用できるようにしたソフトウェア)の会社です。Ariesのシステムは、6000誌以上の学術誌で投稿や査読のために利用されています。何百万人もの著者、査読者、編集者が、毎年このシステム上でやり取りを行っています。我々の顧客には、大手商業出版社のSpringer、Wiley VCH、Elsevierなどだけでなく、American Psychological Association、American Meteorological Society、Society for General Microbiologyなど、多くの学会も含まれています。また、オープンアクセス出版社も多く、PLOS、BMC、Cogentなどが含まれます。

Ariesの各製品の違いは何でしょうか?それぞれどんな機能がありますか?

弊社の主力製品はEditorial Managerです。2001年に初めて発表され、原稿投稿と査読のために利用されています。数年前、学術誌のワークフロー上の問題解決策を更に向上させる必要性に気づき、ProduXion Managerという新しいツールを開発し、受理後の論文追跡支援が可能となりました。ProduXion Managerにより、出版社は高額な後方支援であるコンテンツ管理システムを自社で用意し、管理する必要性がなくなります。例えば、Wolters Kluwer社は同社が利用していたシステム(Documentum®)をProduXion Managerに変更し、300誌に利用しています。

Ariesのシステムは、原稿のワークフローの土台を提供しますので、それに付随する様々な問題、例えば剽窃検知、自動引用チェック及びフォーマット、APC(Article Publication Charge、論文掲載料)処理などを提供することができます。これは通常、他のビジネスパートナーと協力しながら行います。

Ariesはヨーロッパ・ユーザーグループの年次会合をしばらく前に開催しました。ユーザーグループは、Ariesのようなテクノロジー会社をどのように助けているのか、ユーザーグループはどのような人々で構成されているのか、会合ではどのようなことが行われるのか教えて頂けますか?

真似ることは最高の褒め言葉といいますよね。ですから、実は、アイデアは、学術出版のユーザーグループ会合のパイオニアであるHighWireから得たと認めましょう。ユーザーグループには2つの機能があります。1つ目が、Ariesの新しい開発や取り組みについての情報をユーザーに提供する機会ができること。2つ目が(こちらの方が重要なのですが)、顧客のニーズに丁重に耳を傾ける機会を得られることです。最も人気のあるセッションは「ワークショップ」で、参加者が少人数のグループに分かれ、Ariesの製品管理代表者と一緒に、ユースケースや改善の余地のある点、望ましい解決方法について話し合います。市場調査に何百万ドルもかけたりず、ユーザーグループ会合を開いた方がずっと良いと思いませんか?

Editorial Managerユーザーグループ会合(2015年6月18・19日、マサチューセッツ州ボストン)の情報

AriesとEditorial Managerの、3年後の展望を教えてください。ワクワクするような新しい開発計画はありますか?

学術研究の強固な文化的風潮のため、変化は少しずつです。Ariesは、毎年6百万ドル以上を投資し、UI強化、オープン査読などの新しいワークフローのためのツール、学術誌間での原稿のやり取りの増加、学術誌事務の効率化、基準の採用強化などに取り組んで行く予定です。EditageがEM Ingestを採用した最初の投稿提携先となり、Ariesはとても喜ばしく思っています!将来的には、EM Ingestを採用するEditageのような機関が増え、専門分野での論文コンテンツ検証の協力関係が広がっていくでしょう。ORCIDのシングルサインオン(EMからではなく直接ORCIDからサインオンできるフォーマット)は、既にEditorial Managerを利用している500誌以上の学術誌で利用されていますが、著者には大変便利なものなので、今後急速な利用拡大が見込まれます。APC処理は一種の疑似購読モデルへと変化していき、Copyright Clearance Center (CCC)からオープンアクセス化するためのRightsLinkなどのツールとの統合により、Editorial Manager APC APIも、そのような移行を支援するでしょう。学術出版の基準が浮かび上がってきたことで、ついに効率的な共同作業が可能となったということが、特筆すべきテーマだといえます。

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