科学ニュースの誤情報「メディアはいかにして人々の理解を形成するか」

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科学ニュースの誤情報「メディアはいかにして人々の理解を形成するか」

学術コミュニティがオープンアクセスやパブリックアクセスのイニシアティヴを通じ、研究データや出版物を一般の人々が利用できるようにしようと努力してきたにおかかわらず、科学的知識についての一般の理解の多くは、メディアに依存しています。しかしながら科学者にとって、主流メディアの報道は、よくても「読むのが苦痛」ですし、ひどい場合は、科学的事実についてあからさまに虚偽の表示をしています。

科学的情報に関するメディア報道が時々引き起こす問題をいくつか見てみましょう。

 

イチに注目、事実は後回し

メディアは、科学的知識をセンセーショナルに取り上げる傾向があり、研究者の多くにそれを非難されています。ニュースを一般人好みにすることで、ニュースの表現方法が明確に形作られてしまうということは、否定できません。科学系の新聞は簡潔で専門的なスタイルで書かれていることが多いですが、ジャーナリストの文章は慎重に事実と意見のバランスをとるというスタイルで、一般の人が面白がりそうな側面を選択的に強調します。さらにツイッター、フェイスブック、ブログなどのインターネット上のソーシャルメディアの出現により、ジャーナリストは読者の関心をつかめる新しい物語を生み出さなければならないという、途方もないプレッシャーにさらされています。
こうしたプレッシャーのせいで、時には科学的正確さを犠牲にして、センセーショナルに書くことが優先されてしまうのかもしれません。たとえば、「がん治療の新薬」というヘッドラインが入ったニュース記事があったとしても、そこにはその新薬が考えうる治療法の一つであって、深刻な副作用も伴うかもしれない、といった関連事実がすべては報告されてはいない可能性もあります。

 

研究を虚偽表示するヘッドライン

さらに、多くのインターネット上のプラットフォームは、主としてヘッドラインに注目しますが、ヘッドラインは時として、あるテーマに関し部分的な見方、あるいはバイアスのかかった見方しか与えていない場合があります。たとえ提示されている情報が嘘ではなくても、研究によればニュースのヘッドラインは、ある主題について完全に誤解を招く見方を読者に示すおそれがある ということです。

ツイッターのニュース・フィードに絶えず流れてくる記事のリンクをクリックする人が、私たちの中にどれだけいるでしょうか?140字のツイートに押し込められた短い情報を読み、読んだ後は次の面白そうな情報に移るというのが、たいていの場合です。絶えず流れ込んでくる情報の中で、情報に追いついていくためにできることは、ほとんどありません。けれども、ヘッドラインを読むだけであればさらなる情報を処理する能力が制限されてしまい、そのため、特定の問題に対しバイアスがかかったりゆがめられたりした解釈が、無意識のうちに形成されてしまうのです。

これを検証しようとした実験によると、「遺伝子組み換え食品に長期的な悪影響を及ぼす可能性あり(“GM foods may have long-term damaging effects”)」というニュース・ヘッドラインは、読者に、遺伝子組み換え食品に対する否定的なバイアスを引き起こしました。その実験では、遺伝子組み換え食品の安全性は、多くの査読つき研究によって確認されてきたが、長期的な健康への影響は不確定なままであると説明されていたのにも関わらずです。

 

過度の単純化という問題

読者にとってわかりやすく、おもしろくするため、科学ジャーナリズムは研究結果を解釈しようとします。ジャーナリストが、ある研究の中で報道価値のあるものを選択し、事実に細心の気を配り、完全に客観的でバランスの取れた視点を提示することが理想です。しかしながら、常にそれがうまくいくわけではありません。ジャーナリストが簡略化しようとするあまり、大事な細部を犠牲にしたり、時にはそのテーマに関する自分自身の意見や推測を表して終わるということもあります。
それにより、テーマに対する一般的な認識がガラッと変わってしまいかねません。科学の発見には複雑さが多くつきまとうものですが、このように報告される中で過度に簡略化されてしまうリスクがあります。たとえば、相関関係を示した研究結果がニュースで因果関係と誤って伝えられるというのは、よくあることです。また、動物を対象にした研究の結果にもとづいて人間の治療が要求されることもあります。

それでは、誤情報はどんな結果をもたらすのでしょうか? ニュース記事の大部分が健康・医療問題、つまり科学的発見と報道の間の格差が、広範囲に渡り有害な結果をもたらしかねない領域の問題であるという事実を考慮すると、情報の誤りはさらにいっそう不安にさせます。こうした誤情報がヘルスケアに対する一般的な態度に作用し 、健康に関連した行動にも影響を与える可能性があります。たとえば、人々のライフスタイルを効果のないものに変えさせてしまう、問題点を告げないために、ある治療様式について間違った期待を患者に抱かせてしまうということが起こりかねません。長い眼で見ると、ある種の治療様式に対する社会的信頼が失われることにもなってしまいます。

その上、科学的情報は、過度の簡略化がわずかであっても、それに続く報道でさらなる誤情報がもたらされる恐れがあります。特に、その記事がソーシャルメディアを通じて急速に広まった場合はそうです。そう考えますと、世界経済フォーラムが2014年グローバルトレンド、トップ10 の1つに「インターネットにおける誤情報の急速な広がり」を選んだのも、何ら不思議なことではありません。 

この問題はいくつか疑問を提起しています: 科学の誤情報に責任があるのはメディアだけか? 信頼のある科学コミュニケーションを保証するため、学術コミュニティは何を行っているか? こうした疑問、またその他の疑問には、今後の記事でお答えしようと思います。

 

「自然科学以外のコミュニティでは科学をどのようにとらえているか?」もお読みください。

 

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