研究論文を発見されやすくするツール:Kudos

研究論文を発見されやすくするツール:Kudos

毎年、何百万本という論文が出版されていますが、実際に認識され、引用され、利用される論文はごくわずかです。論文の影響力を最大限に高めるため、研究者はオンラインなどのネットワークを活用し、自分の論文が発見され、読まれるように頭を働かせなければなりません。


今回は、研究者・研究機関・資金助成機関が出版論文の認知度とインパクトを最大限に高める手助けをするオンライン・サービス「Kudos」を共同で創設した、メリンダ・ケネウェイ(Melinda Kenneway)氏とチャーリー・ラップル(Charlie Rapple)氏にお話を伺いました。インタビュー前半の今回は、Kudosの概要と、Kudosがどのように出版論文を発見しやすくしているのかをお聞きしました。ユーザーは、Kudosを通じて自分の行動の効果をモニターすることで、より良い戦略を練ることができます。その目的は、出版論文の利用と引用を増加させ、研究のインパクトを増大させることにあります。


メリンダ・ケネウェイ(エグゼクティブディレクター)氏は学術出版への情熱を持っています。実験心理学で学位を取得した後、学術界に入り、その道をひたすら進んできました。ケネウェイ氏はオックスフォード大学出版局ジャーナル部門のマーケティング部長であり、出版社・研究機関・学会のための専門マーケティング代理店の共同創設者でもあります。


チャーリー・ラップル(営業・マーケティング部長)氏は、新しい出版形態やテクノロジーについて調べることが大好きです。UKSG(英国逐次刊行物グループ)でのボランティアや学術誌“Learned Publishing”の編集者(Associate Editor)としても熱心に活動しています。過去には、Publishing Technology社のグループマーケティング長、CatchWord社の電子出版・アカウント管理、Ingenta社のリンク付け・製品管理などの業務を経験しました。ラップル氏は、マーケティング分野での外交学修士号を取得しています。

Kudos創設のきっかけは何ですか?学術出版のどのような根本的課題を解決しようと思ったのでしょうか。

ケネウェイ氏:学術コミュニケーション業界で業界コンサルタントとして長年働いてきた私たち(チャーリー・ラップル、デイビッド・ソマー(David Sommer)は、読まれもせず引用もされない優れた研究が大量にあるという問題に気づいていました。どの出版社の読者統計を見ても、一部の論文しか利用されないという状況が当たり前になっています。読まれることのない論文の列は延びていくばかりで、実用化の機会はいつまでたっても巡ってきません。


これには多くの原因があります。第1に、現在オンライン上で利用可能な研究論文の量が膨大であること。毎年およそ200万本の論文が出版されています。第2に、これらの出版物は複雑で専門的な性質を持つため、その論文が読者に関係のあるものかどうかを即座に判断するのが難しいということ。特にその論文がニッチな分野のものであり、自分の専門外の内容であればなおさらです。


我々はまた、印刷出版をオンライン環境にシフトし、コンテンツを検索エンジン向けに最適化することに大きな努力を払ってきました。しかし、論文の読者層を育む過程に、研究者自身が直接関わる機会が欠けているように思えました。研究者はたいてい、自分の論文が発見され、読まれるようにするための知識やネットワークを持っているはずです。ただ、それを包括的に生かすためのツールや、そのような宣伝(アウトリーチ)活動の効果を評価するためのツールを持っていなかったのです。


この溝を埋めるのがKudosです。Kudosでは、研究者が自分の研究をシンプルな言葉で説明するので、論文を見つけて読む読者層が最大限まで広がります。出版社のウェブサイトに掲載される正規バージョンの論文のリンクをシェアし、クリックスルー、ダウンロード、引用、マスコミ報道など、様々な指標でこの活動のインパクトを追跡することができます。このようにして、自分の論文のインパクトを増加させるためには何が効果的かを学んでいくことができるのです。すでに論文の伝達に成功している研究者もいますが、研究が「セレブ化」してしまう、つまり研究の質よりコミュニケーションスキルで成功したのではないかという懸念が出される可能性もあります。Kudosは、分野や専門知識の水準に関係なくすべての研究者が使える標準ツールを提供することで、現場の公平性が保たれるようにしています。また、研究者は情報伝達のための複数のツール(コミュニケーション・チャンネル)を利用していると思いますが、その場合はどの取り組みが結果に結びついたのかをたどることが難しくなります。Kudosでは、1つの画面を見れば、どのような宣伝努力が効果的なのかが分かるようになっています。出版社やプラットフォームに関係なく利用できるので、複数のシステムを扱う煩わしさもなく、出版社のサービスに依存するということにもなりません。

研究者の論文を発見されやすくするという、Kudosの概要を教えてください。

ラップル氏:Kudosとは、研究者の論文が確実に発見され、読まれ、引用されるようにするためのアウトリーチ・ツールです。Kudosを利用すると、研究者は以下のようなことができます。


1. 何についての研究論文なのか、そしてそれがなぜ重要なのかをシンプルな言葉で説明します。こうすることで、専門家もそうでない人も、研究の意義を理解しやすくなります。シンプルな表現のコンテンツが著者のためになる例をお見せしましょう。図1と図2を比べてみてください。図1は論文のアブストラクトです。表2は、同じ論文をKudosでシンプルに説明したものです。非専門家にとって、シンプルな表現での説明の方が理解しやすいことは明らかですね。

図1

Research paper abstract

図2

Kudos plain text summary of a research paper


また、Kudosでは、抄録・インデックスサービスや、Europe PubMed Centralなどの研究機関レポジトリとの連携を強化し、シンプルな表現のコンテンツを追加したものを収録し、論文へのリンクを貼って、研究が発見される確率を改善させようと考えています。


2. Eメールやオンライン、ソーシャルネットワークを利用して出版物をシェア(共有)します。個別のリンクを作成し、論文をシェアする過程をきちんと追跡できるようにします。これにより、研究者はどのようなシェア努力が成功したのかを把握できます。こうして、フェイスブックの方がツイッターより効果的だとか、ResearchGateよりもEメールが良いなどという風に、研究者自身が学ぶことを支援しています。Kudosは、論文テキスト全文ではなく、リンクのシェアを奨励しています。こうしておけば、著作権違反の問題を避けられるからです。出版社は著作権違反に関する取り締まりを強化しているので、ここで研究者にリスクが及ぶことは避けたいと思っています。


3. ダウンロード数、引用数、オルトメトリクスなどの様々な指標を用いて、取り組みの効果を測定します。図3は、Kudosが出版社に報告する集約レポートです。どの論文がどのチャンネル(フェイスブック、ツイッター、Eメールなど)で共有され、どのような効果があったのか(紹介数、つまりシェアリンクのクリック数など)を報告します。

図3

Kudos article performance report


下記の図4は、論文に関するKudosのツイートです。

図4

Kudos article promotion tweet


下記の図5は、著者がKudosを通じて努力した結果、Kudosと出版社のウェブサイトで閲覧の増加につながったということを示しています。Altmetricのスコアの伸びや「被引用回数」(“Times Cited”)も示されています。

図5

Kudos article performance metrics

研究者がKudosを利用する方法を具体的に教えてください。どのようなワークフローになっているのでしょうか?

ラップル氏:Kudos利用のワークフローは、簡単な登録手続きから始まります。肩書、名前、研究分野、キャリアレベル、所属機関を登録します。これは、あなたのKudosの利用努力を研究機関が支援し、成果が増幅されることにつながります。それから、説明を加えてシェアしたい論文を選びます。そのためには、あなたのKudosアカウントとORCIDアカウントを連携させる(こうすると、ORCIDにある論文はすべてKudosに自動的に追加される)か、自分の名前とキーワードで検索を行います。ジャーナル論文、書籍の一部の章、学会論文など、CrossRef DOIを持つものなら形式は問いません。出版物を特定したら、次の4つのことを行います。
 

  • 短いタイトルをつける
  • 「何についての研究なのか」と「なぜ重要なのか」を説明する
  • 個人的な「視点」(例:なぜこの研究分野に興味があるのか、このプロジェクトにおけるあなたの具体的な役割は何か)
  • 論文を見つけやすくし、その内容の理解を助ける関連情報へのリンクを貼る(例:出版後に判明した、研究プロセスからの気づき)。Kudosは、後から分かった情報を既存の出版物にリンクできるというユニークな手段を提供している。


これらの入力項目は必須ではありませんが、当然ながら、論文に加える情報が多いほど、発見され読まれる可能性は高まります。このプロセスにかかる時間は、だいたい15分ほどです。


この初回ワークフローの最後に、研究論文などに追跡可能なリンクをつけ、ソーシャルメディアでシェアします(Kudosのウェブサイトから直接行うこともできますし、ツイッター/フェイスブック/リンクトインのアカウントをKudosアカウントと連携させることでも可能です)。あるいは、このリンクをEメールや学術ネットワーク、ブログ記事、研究機関のウェブサイト、文献目録や講義ノートなどのオフライン文書にコピーすることもできます。この追跡可能なリンクをシェアすることで、1、2日後には、Kudosの自分のページや出版社のウェブサイトでの閲覧数、Altmetricのスコア、シェア努力の成果を測定することができます。ゆくゆくは引用数も測定できるようになります。先に述べたように、研究者がシェアするのは研究の説明へのリンクだけです。ユーザーはそれを見て、出版社のウェブサイトで全文を読むかどうかを決めます(ユーザーあるいはその所属機関がアクセス権を持っている場合に限る)。こうすれば、論文をシェアする前に出版社から同意を取り付ける必要もありませんし、著作権違反のリスクもありません。

出版社や資金助成機関は、Kudosの利用でどのような利益が得られますか?

ケネウェイ氏:出版社、資金助成機関、大学、企業がKudosと提携し、ダッシュボードにアクセスすると、Kudosを通して行われた自分たちの研究コミュニティの活動状況を見ることができます。研究者のアウトリーチ活動をさらに後押しして拡大させ、論文の読者層を増やすためのツールを利用することもできます。我々の顧客である某出版社が行なった調査では、Kudosのツールを利用した研究者は、その出版社のウェブサイトからの閲覧数を3~4倍にすることができたと報告しています。


また、Kudosのレポートを利用することで、出版社や研究機関はソーシャルメディアで論文の再共有をしやすくなります。また、宣伝やマーケティングに力を入れることで利益の見込めそうな、注目度の高い論文を特定できるようになります。そうすれば、出版社は著者サービスを向上させ、著者との関係を強化させることができるでしょう。著者がKudosに入力した独自のコンテンツが出版社や研究機関のウェブサイトに再掲載されれば、レポジトリやその他のデジタルリソースに付加価値がつくことにもなります。


論文が発見されるように積極的な宣伝活動を行うことは、多くの研究者にとって新しい活動です。理想的なのは、出版社や研究機関が著者にKudosの利用を促してくれることです。そうすれば、研究者は出版社や研究機関から支援されていると感じ、出版社や研究機関にとっては、出版活動や資金助成の対象となる研究のインパクトが増加することになり、あらゆる立場の人が利益を得ることになるからです。


次回のインタビューでは、研究インパクトの測定に関するトレンドと、研究のアウトリーチを増やすためのオンライン/オフラインネットワークの利用について伺います。

 

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