ISMTE: 編集実務者のための倫理的な査読管理基準を確立する

ISMTE: 編集実務者のための倫理的な査読管理基準を確立する

編集実務者のための国際編集者会議(ISMTE)は、同業者たちにダイナミックなネットワークと、日々の業務に役立つ実用的で便利なリソースを提供しています。編集実務者にとってISMTEがどれほど価値のあるものか、ISMTE会長のクリステン・オーバーストリート氏の話から学びましょう。

ISMTEの概要と、会長としての優先事項について教えて頂けますか?

学術誌の査読や編集業務を管理する人々がネットワークを広げる機会を提供し、その専門性を高めることがISMTEの目的です。顔を合わせられる機会である年次大会、各地でのグループ・ミーティング、そしてディスカッション・フォーラムなどを通して、仲間とのネットワークの機会を提供しています。また、日常業務に取り入れられる基準や、業界で役立つ実用的なリソースについて話し合い、発展させる機会も提供しています。

ISMTEの会長としての優先事項には、委員会、マーケティング、パートナーシップ(提携先)の開発、そして会員のための価値ある活動などが挙げられます。意欲的な会員と役員のおかげで、10ある委員会の活動は活発で、年次大会の計画、各地のグループやミーティング、会員に提供するリソースの開発、そしてISMTEの各種任務(例:、賞、ポスター、専門能力開発プログラム、資金の確保など)を遂行するべく計画を立てています。ISMTEのメリットをアピールするため、週刊でEメールを流したり、ニュースレター(EON)の記事を年度ごとにまとめたものを発行したりしています。またEditor’s Choiceの記事を簡体字中国語に訳す計画もあります。Editageとの提携など、出版分野の他機関との提携を進めることも重要です。これらの取り組みは、会員に新しい情報、教育、リソース、ネットワークの機会を提供しており、会員のメリットとなっています。また会員は、これらの取り組みによって、ISMTEが何を提供しているのかを知り、そのメリットを享受することができます。そして、ISMTEに貢献してもらえるよう、会員に積極的な関わりを促すことにもなります。

2014年、理事会は、以下のような目標の達成に全力で取り組むことを決定しました。
1) 3年以内に3大陸で3回大会を開催する。(2016年には、北アメリカ、ヨーロッパ、アジアで大会を開催する予定)
2) EONの記事を他の言語でも提供する。
3) 会員数を1000名に増やす。
4) 地方・地域グループを増やす。
5) 資金提供元を増やす。
6) 専門家としての能力開発の機会を増やす。

ISMTEが取り組んでいる学術コミュニケーションの課題には、どのようなものがありますか?

編集実務の専門家は、出版倫理に大いに関心を寄せています。重要なのは、査読プロセスに関わる利害関係者全員に、規定の倫理方針に関する教育をしなければならないということです。ISMTEはCOPEと提携し、2014年・2015年に、北米とヨーロッパでの年次大会で会員向けの教育セッションを開催しました。編集実務の専門家は、著者、査読者、編集者が学術誌の方針を順守するサポートをするために、倫理規定について認識しておく必要があります。

ISMTEの会員特典にはどのようなものがありますか?どのような人が会員になれるのでしょうか。

ISMTEの会員になると、仲間とのネットワークの機会、月刊ニュースレターの良質な記事、EON、教育やトレーニングの機会、同業者と情報交換ができるフォーラム、業界ニュースの発信源にアクセスでき、さらに会員限定のスポンサー割引を受けられるという特典があります。査読プロセスに関わっている人や、学術出版の経験がある人なら、誰でも会員になれます

会員の概要を教えてください。

現在、5大陸から500名が会員になっています。編集部で働く人や、学術コミュニケーションの査読プロセスに何らかの形で関わっている人が会員となっています。ISMTEは国際的な機関ですが、さらなる国際化を進めようとしています。

ISMTEの提供する編集専門家向け教育プログラムについて教えてください。

ISMTEは、編集の専門家のための教育プログラムの機会や情報を会員に提供することに力を注いでいます。略語の解説からスケジュール管理に至るまでの題材を網羅した情報源をウェブサイト上で提供しています。ポッドキャストや図の質、倫理、そしてソーシャルメディアに関するトレーニングを提供しているリソースもあります。求職中の人と雇用者を引き合わせる場も提供しています。年次大会では、参加者の専門性を高めることができるようなプログラムを提供しています。今話題になっていることに関するセッションや、エクセルのワークショップといった双方向型のセッション、そして普遍的なテーマである倫理や査読・編集部の効率的な運営などのセッションがあります。私たちは常に新しい情報を探しており、そのような情報を会員のニーズに基づいて提供する方法を模索しています。編集実務者のための認定証や資格取得といった制度が必要かどうかについて、会員にアンケートをとる予定もあります。

ISMTEのウェブサイトで利用できる主なリソースを教えてください。

ISMTEでは以下のようなリソースを提供しています:

日常業務に役立つリソース

http://www.ismte.org/?page=UsefulResources

トレーニング用リソース

http://www.ismte.org/?page=Training

求職者向けリソース

http://careers.ismte.org/home/index.cfm?site_id=7287

今後の年次大会に関する情報

http://www.ismte.org/?page=2015NAConference
http://www.ismte.org/?page=2015EUConf

ISMTEの提供する各賞

http://www.ismte.org/?page=ISMTEAwards

ISMTEのニュースレター「EON」

http://ismte.site-ym.com/?page=ISMTENewsletter

編集部の起ち上げに関する情報

http://ismte.site-ym.com/?page=EditorialOffice

各地のグループの探し方

http://ismte.site-ym.com/?page=LocalGroups

…他にもまだ多くのリソースがあります。新しいウェブサイトをぜひご覧ください。

www.ismte.org

 

ISMTEを、地域別の機関ではなく、国際的な機関として設立した理由は何でしょうか?

ISMTEが2007年に設立され、2008年に活動を開始した当時は、編集実務の専門家のための機関は存在しませんでした。現在ISMTEの会員となっている人々は、自分たちのニーズが完全に満たされないまま、編集者や編集長、出版業界の他の専門職向けの大会に参加していました。ISMTEは、実用的で活用しやすいリソースを提供することで、日々編集部で仕事をし、学術誌の査読プロセス管理に関わっている人々のニーズを満たしているのです。

ISMTEの目的の一つに、編集実務に携わるスタッフのための基準を確立することがあります。課題を特定し、解決方法を共有し、その中から基準を選び、国際基準として確立して行くプロセスの中で、重要なのはどの段階でしょうか?

編集実務担当者の課題は、年次大会やディスカッション・フォーラムで特定されることが多いです。共有されたテーマやリソースは、後日COPEの倫理問題処理に関するフローチャートのような形にまとめられます。とくにリソースがない場合は、個人あるいはグループで記事を書いてEONに掲載することもできます。以下はこれまでの例です。

編集事務局の人材管理について
編集者の進め方を把握する
学術誌のデザインを見直す時期とは?
査読報告書を学術誌の改良に活かす

月刊EONに掲載される記事は、基準を見出して導入するための貴重なリソースとなります。またISMTEの委員会では、図の質などに関するテーマの教育ビデオや、会員にとって必要な課題に関するポッドキャストを作成するなどしています。

ヨーロッパ大会計画委員会及び北米大会計画委員会ができた背景を教えてください。

2008年に活動を開始して以来、ISMTEは、皆が直接会える年次大会を年2回開催してきました。1回は北米、もう1回はヨーロッパで開催してきました。毎年、各大会の計画や講演者の招聘のための特別委員会を設け、どちらの大会も成功させてきました。変化の速い出版という分野の新たな展開や、それが編集の専門家に与える影響について、会員が話を聞くことができる貴重な機会となってきたと思います。2016年には、アジアで開催される3番目の年次大会が加わります。

ISMTEの年次大会では、世界中から管理面と実務面を担当する編集者が集います。今年の大会について教えて頂けますか?

2015年の北米大会では、全体会議、分科会、ワークショップを組み合わせて、悪徳出版社、中国の出版文化、論文著者の視点、著者を狙った悪徳業者、倫理、リソースの限られた小規模ジャーナルへの支援、査読者や編集委員に最大限に活躍してもらう方法、著者向けインストラクションの準備、ポスターによる研究発表・プレゼンテーションなどが行われました。

また、2015年ヨーロッパ大会は「スキルを高め、知識を得る」というテーマで開催されました。


インタビューはAlagi Patelが担当しました。

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