「サイエンス・エディターはどうすれば業界の急速な発展についていけるか? 思っているより簡単です!」

「サイエンス・エディターはどうすれば業界の急速な発展についていけるか? 思っているより簡単です!」

ジョーン・マーシュ(Joan Marsh)博士は、欧州科学編集者協会(European Association of Science Editors (EASE))の協会長をなさっています。EASEは、様々な経歴、言語的伝統、専門的経験を持ちながらも、科学のコミュニケーションと編集への関心を共有している人々のコミュニティです。マーシュ博士は新しく立ち上げたジャーナルThe Lancet Psychiatryの副編集長もされています。ケンブリッジ大学時代にNatural Sciences を読み、ロンドンの国立医学研究所(National Institute for Medical Research)で博士号を取得しました。シバ協会(ロンドン)で科学編集者として7年間勤務する間に編集について学びました。その頃博士は、EASEに入会し、サイエンス・ライティングを教えるのに興味を持つようになり、その後マレーシア、タイ、ベトナムを旅行した2年間の間に追及することになりました。香港のJoan then worked for Excerpta Medica社に2年間勤務した後ロンドンに戻り、John Wiley & Sons 社で企画編集者として働き始め、14年間の勤務をAssociate Publishing Directorで終えました。 
 


インタビューの中では、EASEでの刺激的な仕事、エディターを成長させるため提供しているリソース、そしてThe Lancet Psychiatry が精神医学の新たな始まりとなるのはなぜか、についてお話していただきます。



ヨーロッパの内外で科学編集の強化を図るためEASEが果たす役割について概観を説明していただけますか?

EASEではエディターのみなさん、時には著者の方々を支援するため、多様なリソースを作成しています。EASEの季刊誌 European Science Editingは、未発表の研究、評論、その他エディターの興味を引く論文を掲載しています。科学編集に関連のある書籍やジャーナル論文を会員に知らせるEditors’ Bookshelfをインターネット上に設け、ジャーナルの各号でまとめています。EASEではインターネット上に活発なフォーラムを用意しており、そこで他のエディターにアドバイスや 援助を求めることも可能です。私たちが作った著者向けガイドラインは、出版業界の道を歩み始めた人への明快で簡潔な説明を書いたもので、22の言語で利用できます。

EASEでは定期的に会議を開いており、会員はそこで優れた編集実践や科学編集における最新の動向を学ぶことができます。これらに加え、ワークショップも行われ、統計学、ジャーナル運営、言語表現の校閲といった特別なテーマを扱っています。一番最近では、ソン・ホ氏(Sun Huh)と韓国科学編集者会議(Korean Council of Science Editors)のご厚意で、ジャーナル編集におけるITツールに関するワークショップを開催しました。


ヨーロッパの外の著者、編集者、その他の人々はどうしたらEASEから利益を得ることができますか?

ヨーロッパ以外の人でもぜひEASEに入会してください。地理的制限はありません。私たちが提供するリソースの多くはインターネットで無料利用できます。European Science Editing も発行後6ヶ月たてばネット上で読むことができます。


2年前、EASE地域支部(Regional Chapters)プログラムを立ち上げましたね。これまでに、メキシコ、ロシア、クロアチア、イタリアに支部ができています。どういう経緯でEASEはこうしたプログラムに関心を持つようになったのですか?一つの地域がどのように、また、なぜ地域支部になるのですか?

地域支部はEASEの現在の副協会長アナ・マルシック(Ana Marusic)によって提唱されたものです。クロアチアには、会議や、情報の共有や、互いから広く学ぶことにより恩恵を受けると思われるのに、正会員の資格が得られず、さらに/あるいはクロアチア以外の会議に行くことができない科学・医学ジャーナルのエディターがたくさんいます。ですから、EASEの傘下でクロアチア内の地域会議を促進することを意図していました。そのことにより地方会議の注目が高まり、そうした会議を開催したり会議へ出席したりするための、助成金やその他のサポーを獲得できるようになります。こうして、私たちは2012年にエストニアのタリンでの会議で地域支部プログラムを立ち上げたのです。EASEのウェブサイトに専用ページを設けるほか、可能であれば他にも支援を提供しています。ただし、経済的なサポートは行っていません。

地域支部の体制と活動に対して確固たる指針はありません。ロシア支部は様々な都市で働きリソースも限られた個々の編集者から構成されており、そのため共同で行う活動の歴史はほとんどありませんでしたが、協力しようとし始めています。一方メキシコ支部はAMERBAC(メキシコ生物医学ジャーナル編集者協会;the Mexican Association of Biomedical Journal Editors)の会員で構成されています。現在、彼らはEuropean Science Editing のアブストラクトをスペイン語に翻訳していますが、これは刺激的な新展開です。



EASEが後援するMembership Schemeについて読者に教えていただけますか?また、開発地域への関心を引き起こしたものは何だったのですか?

EASEは私が思い出せるより長い間、members schemeの後援をしてきました。スキーマは、他の人をEASEの正会員にするため代わりに支払いしたいと考える現会員の善意によって成立しています。数年前に基準を明確にし、後援の機会を最大限に利用しようとしています。後援会員として2、3年間誰かを支援し、その人たちが知識とスキルを向上できるようにすることを意図しています。その後は、その人たちが自分で正会員の費用を支払えるようになるか、あるいは自分たちの得た利益を示すことで雇用主に投資の正当性を証明できるよう、期待しています。


EASEは利用可能なリソースを提供することで科学編集者の支援に取り組み、ツールもいくつかすでに作成しています。今必要なことを見つけるためにどうやって時代を先取りしているのですか?


基本的には、EASEが支援すべき取り組み(イニシアティヴ)を提案するため、私たちは会員に頼っています。

私たちが行った一番最近の取り組みは、シリン・ヘイダリ(Shirin Heidari)が主導するジェンダー・ポリシー・グループ(Gender Policy Group)の仕事です。彼らは、著者およびエディター向けの共通基準(Common Standards)の準備に約2年かけてきました。この共通基準が運用されれば、著者は、研究の対象者(人も動物も)の性別について詳しいデータを載せるよう推奨されるでしょう。エディターは必要に応じて、そうしたデータが論文に書かれているか確認するよう指導を受けるでしょう。ジャーナルや学会のスタッフは、査読者、編集委員会のメンバー、招待レビュー(編集委員会から執筆依頼を受けたレビュー)の著者などに、もっと女性を含めるよう勧められることでしょう。


博士が楽しみに思われるその他のリソース、あるいは話題になっていて進行中のテーマはありますか?

スプリットでの会議 (2014年6月13日-15日)で、ピッパ・スマート(Pippa Smart)氏が エディターの専門的な発達の継続(continued professional development for editors)に関する講習会を行っていました。こうした講習会を運営するのは私たちにとって初めてのことです。いくつかすばらしい発表が行われたので、そこから何か生まれたかもしれません。


EASEの会員の大部分を占めるエディターには様々なタイプがありますが、そうした多様なグループ(の要求)に応じ、どんなことを提供しているのですか?

会員調査の結果によると、たいていの会員がEuropean Science Editingを、一番重要で利益になるととらえています。ジャーナルの内容に関しては、興味の違いを反映して、人により好みの箇所が異なります。フリーのエディターは、インターネットや会議の場で、他のエディターと交流の機会を持つことを重要視しています。そうでないエディターにとっては、オーサーシップや盗作の問題に関し、著者や大学の委員会に対応するとき、EASEを引き合いに出せるのが、大いに役立つということです。


EASEは、科学ジャーナルと何かしら関係がある人の集まり(an integrated pool)間に交流を提供する、数少ない場の一つです。このような場が、もしあるとしたら、どのような利得をもたらすか、お話いただけませんか?

この20年で、科学出版業界には変化がたくさん見られましたし、今も進化し続けています。エディターが互いに学びあい、小さなジャーナルのエディターが大きな出版社で起きている展開について聞き、フリーのエディターが出版社のエディターと交流し、様々な学問分野のエディターが別の分野で起きている出来事について耳にする、こうした機会を提供するのがEASEです。


EASE以外にも、今年6月に創刊された新しいジャーナルLancet Psychiatryで副編集長をなさっていますね。このジャーナルについて情報がほしい読者に、(内容を)少し教えていただけませんか?なぜ「精神医学の新たな始まり」なのですか?

グローバル・メンタルヘルスについて2回のシリーズを設けていることからわかるように、The Lancet はメンタルヘルスを、医学の中で最も重要なテーマの一つととらえています。The Lancet Psychiatry は、この分野でのより多くの研究発表を可能にするでしょう。同様に、専門家のレビューや、研究を文脈の中でとらえるための見解の発表も可能にし、それにより、サービスの向上と、精神疾患を患うすべての人の生活の改善を助けることになるでしょう。The Lancet Psychiatry は他の学会や利益団体と関係していない独立した出版物ですので、あるテーマについてあらゆる角度から取り上げることができます。たとえば、第1号では自殺について3本のレビューを掲載していますが、それぞれ神経生物学的基礎、心理学的側面、自殺による死別の社会的意味から自殺を取り上げています。精神医学は、生物学的、心理学的、社会的な対処の相対的なメリットに関する議論で分裂することが間々あります。The Lancet Psychiatry ではこれらすべてを扱えます。


科学編集者、副編集長、Associate Publishing Director、科学編集者協会の協会長をつとめてこられたご経験から、著者によりよいサービスを提供するためスキルアップしたい、あるいはサービスの質を維持したいと思っている科学編集者に、アドバイスを何かいただけないでしょうか。


良い文章を読むことです。ジョージ・オーウェルのように古典的な作者の文章、エコノミストみたいにうまく執筆/編集された出版物、両方とも読みましょう。編集者団体の会員になることを通じて、専門とする分野の進歩に対応できるようにします。会議やワークショップにはできる限り参加しましょう。常に新しい考えを取り入れるようにしながらも、批判の目を忘れずに。最新の動向すべてを追いかけてはいけません。大いに楽しむことです!


 


インタビューは Alagi Patelが行いました。

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