強制引用の要求にどう対処すべきか

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強制引用の要求にどう対処すべきか

本記事前半では、編集者から求められた参考文献の追加が、強制引用なのか妥当なアドバイスなのかを見分ける方法を説明しました。後半では、編集者から強制引用を求められた場合の対処法をご紹介します。一般に強制引用の要求は、論文が「要修正」の判定を受けた際に、その他の修正要求とともに伝えられます。著者は、これらの要求にどう対応すべきでしょうか。要求の「一部」に対処するための最善策は、すべての指摘にまんべんなく対応することです。つまり、疑わしい参考文献の追加要求を切り離すことなく、すべての修正要求に丁寧に対応することが肝心です。


「本論文は修正次第で出版に値する」と書かれたレターを受け取って最初にすべきことは、(もちろん、この段階までたどり着いた喜びをしばし噛み締めた後で)コメントの内容を慎重に精査することです。多くの著者が犯しがちな最大の過ちは、コメントを一度読んだら、それを脇に置いて修正作業を始めてしまうことです。こうすると、修正の方向性が編集者の意図とずれてしまう結果となります。そうした事態を防ぐために、ワープロソフトで3列の表を作り、以下の3項目を各列に振り分けてみましょう:


(1) 指摘された修正点

(2) 各指摘への対応

(3) 修正箇所


1列目には、指摘されたすべての修正点(大幅も小幅も)を個別にコピー&ペーストしてください。くれぐれも漏れがないよう注意しましょう。単純な文法ミスのような些細な修正点も、個別のセルに貼り付けてください。この作業をしておけば、後で編集者が修正版をレビューするときに、細かい指摘にも丁寧に対応していることをアピールすることができます。この1列目に、追加を要求された参考文献も加えましょう。


2列目には、まず、指摘された修正への採否を明記します。指摘が妥当であると判断したら、「ご指摘は論文の説得力を強化するものなので、この通りに修正いたします」などの文言を添えましょう。そして、修正したテキストをコピー&ペーストしてください。


3列目には、修正/削除を行なった箇所(何ページの何段目の何行目か)を記入します。


以上のような表を作成することで、編集者は、修正版を一からレビューし直す手間を省くことができ、また、すべての指摘事項に対応されているかどうかも一目で確認することができます。


ここからは、主題である引用/参考文献の追加要求への対処法に移りましょう。推薦された参考文献が妥当と思われる場合は、査読者/編集者に論文の質向上の機会を与えてもらったことに謝意を示しつつ、指摘の通りに引用を加えましょう。推薦された参考文献を加えることが不適当であると判断した場合は、以下のように対処してください。コメントへの返答文で、要求に従えない旨を表明し、「ご推薦頂いた参考文献の全文を精査し慎重に検討した結果、同文献は、以下の理由で拙稿との関連性が認められないと判断いたしました。[要求に従えない理由を具体的に説明する。扱っている試料や方法論、テーマが異なる、参考文献として古すぎる、など]」といった文面を加えてください。


何より重要なのは、異議の中で、推薦された文献が不適当であることを示すエビデンスを添えることです。以下に例文を紹介します:


「拙稿では小児を対象にしていますが、ご推薦頂いた論文では成人を対象にしています。指導教官と相談した結果、対象年齢の範囲外の知見を引用することで、本仮説の妥当性を複雑化させるべきではないと判断いたしました」


「拙稿では2010年に提唱された新規メソッドに則っていますが、推薦文献では、同メソッドが登場する前のアプローチが採用されています」


細心の注意が必要な対応であることは確かなので、科学的妥当性の観点のみから説明するようにしましょう。編集者が自誌のインパクトファクターを高めようとしていることを追及するような表現は避け、正面から応じてください。「編集者も人間だから間違いを犯すこともあるだろう」という程度の心持ちで臨むようにしましょう。


とくに、まだキャリアの浅い若手研究者は、不適切な参考文献の追加に同意することで、自らの科学的清廉性を貶めるようなことは避けてください。「編集者は清廉性という強固な土台を拠り所として責務を果たしている」ことを前提と考え、自誌の地位を高める目論みを切り取ろうとするのではなく、受けた指摘の一つ一つに真摯に対応するようにしましょう。


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