科学政策の意思決定の指針となる「研究の研究」プロジェクト
Research on Research Institute(RoRI)は、研究の知識、理解、応用の強化を目的として新設された、助成団体や研究者および技術者のための国際コンソーシアムです。RoRIは、資金提供の決定や研究の最適化をどのように進め、研究の恩恵をいかにしてより多くの人々に届けるかといった重要課題に関する知見を提供することを目指しています。さらには、世界中の個人や組織や政府が、研究や科学政策について十分な情報に基づいて判断できるようになることを目指しています。
ウェルカムトラスト、シェフィールド大学、ライデン大学科学技術研究所(CWTS)、Digital Science社が共同で起ち上げたRoRIは、取り組みの一環として、世界中の助成団体を結集させることに力を入れており、現在までに11組織がRoRIとの連携に関心を寄せています。
RoRIのディレクターで、シェフィールド大学学術政策部門デジタルサイエンス・プロフェッサーのジェイムズ・ウィルスドン(James Wilsdon)氏は、「“研究の研究”は新しいものではありません。そこから多くを得られることもありますが、実を結ばないこともあります」と述べた上で、RoRIのような存在の必要性を強調しています。RoRIは、さまざまな利害関係者同士がうまく連携しながら活動できる環境の整備を目指しているのです。
そうしたビジョンに沿って、RoRIは研究のさまざまな側面に関する次のような目的を掲げています:
- 研究:世界中の研究システムに「研究の研究」(RoR)のための機能を構築し、支援し、拡張させる
- 橋渡し:内外の戦略的パートナーのリソースと、RoR機能を結びつける
- イノベーション:パートナーと協力しながら、新たなツール、指標、資金調達方法、評価フレームワークを開発し、テストする
- 仲介:政策立案者や一般市民が、RoRのデータやエビデンスを利用できるよう支援する
- 促進:さまざまな利害関係者がRoRによる学び、ネットワーキング、コラボレーションを実践するための、独立した空間の創出
現在RoRのウェブサイトでは、上記の目的を早期に達成するための2つのツール、「Research Funding Landscape」と「Health Research Funding Landscape」が公開されています。これらのツールでは、世界中の研究分野に資金がどのように分配されているかを把握することができます。また、各分野における個別の資金提供者を詳しく見ることができるので、比較や機会の検討を行うことができます。
これらのツールとは別に、RoRIは、プログラムやウェビナーなどを主催するほか、「supporting priority settings in science(科学における優先順位設定の補助)」や「need for better methods of tracking PhD outcomes(博士号取得者の追跡方法改善の必要性)」をはじめとするワーキングペーパーも発表しています。オープンサイエンスの原則に基づき、RoRIを通して出版された論文は、すべて無料ダウンロードが可能です。
RoRIは、世界の研究情勢が、予算の減少、オープンアクセス化の流れ、学際的研究の増加、国際協力への期待の高まりといった課題に直面したときに、重要な役割を果たすことになるでしょう。研究者や研究組織がこれらの要求や機会に応えようとするなかで、RoRIがどのようなサポートをするのか、今後の動向に注目したいと思います。
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