ジョー・ロイスリエン博士:人類を一歩前進させるための出版

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ジョー・ロイスリエン博士:人類を一歩前進させるための出版

ジョー・ロイスリエン博士(Dr. Jo Røislien)は、テレビ、ラジオ、活字メディアでお馴染みの、世界的に有名な科学コミュニケーターです。複雑なトピック、知識の普及、自身の研究に関するコミュニケーションについて、講義を行なっています。

ノルウェー人のロイスリエン博士は、数学者であり、バイオ統計学者であり、医学研究者でもあり、ノルウェー科学技術大学(Norwegian University of Science and Technology, NTNU)の石油工学・応用地球物理学部から地球統計学博士号を授与されています。現在はスタバンゲル大学保健科学科准教授で、オスロ大学の麻薬中毒研究センターと生物統計学部に所属しています。著書や詳しい経歴については、インタビューの第1回をご覧ください。

全3回にわたるインタビューの第1回と2回では、データと統計分析の課題や、価値ある研究を支えていくために学者が念頭に置いておくべき根本的概念について、有意義な見解を述べています。最終回の今回は、博士のお気に入りの研究ツールの他、査読者としての立場からの役立つアドバイスを紹介してくれました。

お気に入りの研究ツールは何ですか?

私はR言語一筋です。特に珍しいものを使っているわけではありません。実家の居間にMS-DOSのコンピュータがあり、中学校でプログラミングの授業を選択するよう母親から言われるという、そんな環境で育ちました。大学生の頃は、音楽プログラミングの黎明期でした。作曲や録音をするためには、コンピュータを部品から組み立てなければなりませんでした。ですから、まあ、コンピュータには詳しいと思います。プログラミングはほとんどR言語で行いますが、必要に応じてC++、Matlabなども使います。他のソフトやツールも試したことがありますが、結局Rに戻ります。このプログラムに慣れ親しんでいるため、どのツールよりも柔軟に使いこなせるからだと思います。

でも一番のツールは、物理的なものではなく、精神的なものです。ものごと全てに対する、自分の好奇心です。私は、興味を抱いたものがあれば、必要以上に様々な疑問を解き明かし、どんな方面にでも向かっていきます。その結果、取り組んでいる課題に関する斬新で創造的なアイディアや解決策を思いつくことがよくあります。ある課題に取り組んでいたとき、標準的なやり方ではなく、別の案を思いついたので、それについてどう思うか同僚に聞いてみたところ、彼は首を振りながらこう答えました:「ジョー、君は決して楽な道を選ぼうとしないね」。私にとって、それは褒め言葉です。彼はそういうつもりで言ったのではないと思いますが。

無数の問題を解くことができる標準的な方法論的ツールもたくさんあります。でも私は、標準的な方法では解決できない問題や、新たな方法や改良した方法を使った方がデータをより有効に活用できそうな問題に興味を惹かれます。こうした傾向は、どんなツールを用いても直すことができません。考えるためのツールは、あなたの耳と耳の間にあり、あなたがその心の山を登ってくるのを心待ちにしているのです。

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NTNUの研究プログラムで数学・物理専攻の学生に講義をするジョー・ロイスリエン博士。講義は、科学者が苦労する「一般向けに統計・確率の話をする」というテーマ。(写真提供:NTNU)

査読付きの国際学術誌に論文を掲載したいと望む研究者にアドバイスをお願いします。

私にとって、キーワードは「敬意」(respect)です。査読(ピアレビュー)は通常、直接的には知らない研究仲間(ピア)が、自分の研究時間を割いて、出版の価値があるかどうかを判断するために他人の論文を読んでくれているということです。ですから、それだけの価値があるようなものにする必要があると思います。

完璧な論文である必要はありません。完璧な論文など存在しませんから。ただ査読者としては、完璧にするための努力の痕跡を見たいのです。査読者を、校正者として利用しないでください。学術誌の方針を読み、自分の論文がその方針に合っているか確認しましょう。査読者としての私の時間に、敬意を払ってほしいのです。私は自分のためではなく、あなたのために論文を読んでいるのですから。

掲載そのもの、つまり出版物に名前を載せることが目的なのではありません。それが重要なら、ブログを始めてください。私たちが論文を発表するのは、伝えなければならないことがあるからです。また、自分たちの仕事が人類を一歩前進させるのに役立つと心から信じているからです。知識というお城に、意味のある新たな煉瓦を一つずつ積み上げていると確信しているからなのです。

 

ロイスリエン博士、ありがとうございました。

本シリーズのインタビュアーは Alagi Patelです。

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