ジャーナルの投稿規定は倫理問題に十分配慮しているか?

ジャーナルの投稿規定は倫理問題に十分配慮しているか?

以下の記事は、学術誌Learned Publishing 7月号に掲載された下記論文の内容を要約したものです。Yang, WU; Zou, Qiang, The ethical issues in instructions for authors of Chinese biomedical journals, Learned Publishing, Volume 28, Number 3.


学術出版界における不正行為が増加していますが、倫理的な出版を行うためには、著者、ジャーナル、編集者に等しく責任があることは広く認識されています。ジャーナルは、著者がすべきこと・してはいけないことがはっきりと分かるように、明確な著者向けの指針(投稿規定)を作成するべきです。著者は、倫理規定を理解し、順守しなければなりません。編集者は、全ての倫理的問題が順守されているかを確認しなければなりません。ジャーナルの投稿規定は、出版倫理規定の順守において重要な役割を果たします。しかしながら残念なことに、ジャーナルが投稿規定を軽視していることもよくあります。

そんな中、中国語の生物医学ジャーナル各誌の投稿規定に関する調査がLearned Publishingの7月号に掲載されているのを見つけました。現在、中国の研究量は世界第2位に位置しています。国際ジャーナルの編集者は、中国からの論文投稿の増加を目の当たりにしてきました。しかしながら、それに伴って、中国人著者が書いた原稿に関する問題が議論されるようになりました。更に、意図的どうかは定かではありませんが、中国人著者が倫理規定を十分に守っていないことが分かってきました。例えば剽窃は、中国人著者が書いた原稿でよく見られる問題です。

国際ジャーナルで出版するための英語論文を執筆する前に、自分の出身地域のジャーナルで論文を出版する研究者は多くいます。その結果、出版倫理に対する全般的な考え方は、これらのローカルジャーナルの倫理規定に基づいたものになりがちです。このことから、中国の生物医学系ジャーナルの投稿規定を調査し、それらの指針が国際基準に見合っているどうかを確認することは意義深いことだと思われます。以下がその調査の概要です。


中国生物医学ジャーナルの投稿規定における倫理問題

サンプル数:生物医学ジャーナル229誌

データ収集

  • データは全て手作業で収集した
  • 26ジャーナルはジャーナルのウェブサイトからデータを収集した
  • 137ジャーナルは冊子体のジャーナルからデータを収集した(2014年)
  • 66ジャーナルはそれ以前の冊子体からデータを収集した  

本調査でチェックした倫理問題14項目は以下の通り
ICMJE, WAME, および COPEの提言に基づく)

  • オーサーシップ(著者資格)
  • 二重投稿
  • プライバシーと守秘義務
  • データの整合性
  • 被験者の保護
  • 重複出版
  • 査読のルール
  • 掲載の撤回
  • 利益相反
  • 剽窃
  • 他言語での二次出版
  • 治験登録
  • 実験動物の保護
  • 著者の守秘義務に対する配慮

調査の限界

  • 本調査では、画像改ざん、商業的な資金助成、代筆等の倫理問題は扱わない
  • データは投稿規定からのみ収集した。それ以外の部分に指針が記載していた可能性もあるが、本調査ではその点は考慮しない。
  • 中国語のジャーナルのみを調査対象とした。中国の出版社は英文ジャーナルも数多く出版しているが、それらは対象外とした。

結果

  • 倫理問題として最も多く言及されていたものは、オーサーシップ(85.6%)、二重投稿(83%)、プライバシーと守秘義務(62.4%)であった。
  • 言及が少なかったものは、治験登録(11.3%)、実験動物の保護(10%)、著者の守秘義務に対する配慮(9.6%)であった。
  • CMAPHジャーナルと非CMAPHジャーナルには有意な差がみられたが、オーサーシップは両グループで同じ回数だけ言及されていた。実験動物の保護に関しては、どちらでもほとんど言及されていなかった。
  • その他
    - オーサーシップ:196誌中84誌で、ICMJEの稿規定を参照するよう規定していた(そのうち49誌はCMAPHジャーナル)
    - 治験登録を求めているのは26誌のみで、うち23誌はCONSORT声明を求めていた。
    - EQUATORネットワークの指針に沿ってデータの特定・選別・抽出・統合を方法セクションに書くよう求めているのは1誌のみだった。
    - その他の倫理問題12項目については1、2行で説明されているのみで、詳細な説明や手引きはなかった。

結論

  • 投稿規定を定期的に更新しないジャーナルは30%。1誌は、過去10年間一度も投稿規定を変更していなかった。
  • 50%以上のジャーナルがオーサーシップ、二重投稿、プライバシーと守秘義務、データの整合性について言及していた。
  • ICMJEによる最新の著者向けガイドライン(2013)に基づいて投稿規定を更新していたジャーナルはなかった。
  • 治験登録は最初の患者の登録が開始される前に行われなければならないことは、ICMJEによって10年以上前に提案されている。しかし、このことが投稿規定に含まれているジャーナルは11.3%のみであった。
  • CMAPHジャーナルの分析結果を見ると非CMAPHジャーナルより結果が良いように見えるが、それでも出版倫理に十分な注意を払っているとは言えない。


これらの結果から、中国語の生物医学ジャーナルは出版倫理に十分な注意を払っていないことがわかります。国際投稿規定が存在するにもかかわらず、投稿規定にこれらの規定を取り入れているジャーナルは多くありません。更に、多くの項目はごく簡潔に書かれているだけなので、それらの指針に具体的にどのように従ったらよいのかが著者に明確に伝わるようになっていません。これでは、中国人著者が出版倫理に注意を払わないようになるだけでなく、国際社会で著者に求められていることを正確に理解することが難しくなるでしょう。

出版投稿規定に従わない著者がいるのは事実ですが、ジャーナルや出版社が明確な指針を提供しているか、そして定期的に更新しているかどうかを確認することも必要です。そうすることで、出版倫理や出版投稿規定に対する著者の意識が高まり、理解も深まって行くでしょう。

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