論文の影響力を測る新しい指標は、インパクト・ファクターを超えることができるか?

論文の影響力を測る新しい指標は、インパクト・ファクターを超えることができるか?

インパクト・ファクターやh指数のような、ジャーナルや研究者のインパクトを測る指標は、研究者であれば誰でもなじみのあるものです。しかしながら、よく知られているにもかかわらず、これら引用に基づくビブリオメトリクス(計量書誌学)は、様々な理由から批判にさらされています。

例えば、人文科学のような分野では、研究のインパクトを適切に測ることができないといった理由です。オンライン上での論文発表が増えるなか、研究のインパクトは論文の引用を越えて拡大しています。サイエンス・ブログ、ソーシャル・ネットワーク・サービス、オンライン・フォーラムなどを通じ、学術出版物は人々に利用され、議論され、シェアされています。こうしたなか、伝統的な引用による指標だけでは、ある研究が世界に及ぼす影響を正確に測ることはできません。総称してオルトメトリクス(
altmetrics )と呼ばれる様々な指標は、こうした考えから生み出されたものです。これらの指標は、学術文献がオンライン上でどのように利用されているのか、そのパターンを分析することを可能にします。

オルトメトリクス(altmetrics)という言葉は、2012年にノース・カロライナ大学の大学院生、ジェイソン・プリーム(Jason Priem)氏がツイッター上で生み出した言葉です。オルトメトリクスは、デジタル上の研究の足跡と言えるでしょう。つまり、ある研究論文がオンライン上の様々なプラットフォームで引用され、ツイートされ、「いいね!」され、シェアされ、ブックマークされ、ダウンロードされ、言及され、レビューされ、あるいは議論された回数を測定するものです。これらのデータを、オープンアクセスのジャーナルや学術引用データベース、ソーシャルメディアなど、様々なオープンソースのウェブサービスから収集します。AltmetricImpactStory のようなウェブ上のアプリケーションも、自分の研究の影響力を追跡するのに役立ちます。 また、レポジトリに組み込むことができる無料のウィジェットを提供してくれます。

オルトメトリクスを使う利点として、次の三点が挙げられます。

  • フィードバックを瞬時に収集できる
    インパクト・ファクターのようなビブリオメトリクスでは算出に長い時間がかかるのに対し、オルトメトリクスでは自分の研究が同業者に与える影響のフィードバックをリアルタイムで受け取ることが可能です。
     
  • 一般読者に対する研究インパクトも報告してくれる
    科学ジャーナルの読者の多くは研究者であり、科学の発展はその研究と密接に関係のある人だけで共有されています。しかし、オンラインでの議論は学生、政策立案者、業界の代表、一般人からもフォローされています。オルトメトリクスは、こうしたあらゆる 読者層へのインパクトを測定します。
     
  • 共同研究者の発見に役立つ
    オルトメトリクスでは、誰が自分の研究に興味を持っているかを追跡できるので、共同研究者やパートナーになってくれそうな人を探すのに役立ちます。


オルトメトリクスが、ある論文の最終的な引用数の指標にもなりうると考える研究者もいます。彼らによると、同業者の間や社会で関心を持たれ刺激を与える論文は、引用されることが多い傾向にあります。

しかしながら、オルトメトリクスには問題点もいくつかあります。

  • 研究の真のインパクトを把握できるのかという点で、オンラインやソーシャルメディアの信頼性に疑念を持つ人もいます。さらに、オルトメトリクスを算出するためにツイートや「いいね!」をどうやって比較するか、明確な方途はまだありません。
     
  • 引用数がジャーナルによってコントロールされる懸念があるように、オルトメトリクスも容易に改ざんされる可能性があると懸念されています。
     
  • オルトメトリクスは論文やブログ記事がオンライン上で議論される「回数」だけを考慮しており、それらの反応がポジティブなものか、ネガティブなものかは考慮されていません。これは、ビブリオメトリクスも抱えている問題です。
     
  • 興味深い論文を単に読む、あるいはコメントするだけでは、さらなる研究や共同研究のようなものになるとは限らない、と思っている人もいます。反対に、オンラインで激しく議論されていなくても、大きなインパクトを有する論文もあるのです。               

オルトメトリクスが研究者や出版の専門家の間で関心を持たれているのは、間違いがありません。欧米で行われる学会の会議ではディスカッションの話題としてよく取り上げられています。インパクト・ファクターに代わる指標となるかどうかについて見方は分かれていますが、オルトメトリクスの使用が増えれば大きなメリットがあるとみている人は多いようです。シュプリンガー社で神経科学の編集者をしているマーティン・ローランド(Martijn Roelandse)氏によれば、オルトメトリクスは、伝統的な指標に代わるものではなく、むしろ補完的なものであり、これまで引用に焦点をあて過ぎたために見落とされてきた、様々なインパクトを測る指標として機能するだろうとしています。

さて、あなたはオルトメトリクスについてどう思われますか? 伝統的な指標に代わるものでしょうか? それとも補完的な役割をする指標でしょうか? 

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