成功する研究者の12の資質

成功する研究者の12の資質

研究者としてのあなたの夢は何ですか?難病の治療法を開発すること、歴史に名を刻む発明をすること、それともノーベル賞を取ることでしょうか?――では、その夢を叶えるために必要なものは何だと思いますか?


成功を収めた科学者たちには、共通するいくつかの資質があるようです。これらの資質は、その人たちを研究者たらしめるものであり、それぞれの分野で成功を収める一因となったものです。ある資質を顕著に持っている研究者もいれば、そうでもない研究者もいますが、皆一定のレベルで、すべての資質を兼ね備えています。それらの資質がどのようなものなのか、そしてあなたの資質がどの著名研究者と共通しているのか、知りたくありませんか?その答えを探っていきましょう。


好奇心


子どもの頃、おもちゃや人形を分解してその内部がどうなっているのかを観察したり、音がどこから出ているのかを確かめたりしたことを思い出してください。研究者は、そんな子どものような知的好奇心を持ち続けています。自然界のさまざまな現象に魅了され、それらについて「もっと知りたい」という欲求に駆られているのです。知的好奇心に満ち溢れた研究者は、知識や情報の探求を止めることはありません。知的好奇心の強い研究者は、自分の専門分野だけでなく、ほかの分野にも興味を持ちます。なぜなら、自分が抱えている課題のヒントがどこに転がっているか分からないからです。アイザック・ニュートンは果樹園で、アルキメデスは浴槽で、それぞれのソリューションを見つけました。研究者は、知的好奇心を常に持ち続けているのです。


知への渇望


成功する研究者は、問題、概念、現象をあらゆる角度から理解するために、貪欲な知的好奇心を持っているとともに、知を深く掘り下げることを切望しています。実際、この想いが新たな問題を浮かび上がらせ、真相を暴き出すことにつながっています。この知への渇望は、我々人類が世界について知っていることは僅かであり、まだまだ学ぶべきことがたくさんあるという考えに起因するものでしょう。


チャールズ・ダーウィンは、自身最大の成果となった進化論につながる研究を、22歳の頃に開始しました。彼は基礎的な観測をいくつか終えるだけでは満足せず、その後の数十年を、さまざまな種の進化の過程に関するさらなる知識を得たいという欲望を満たすために捧げました。探求開始から28年後の50歳の頃に、ようやく革命的著書である「種の起源」を出版するに至ったのです。


分析力


「分析する」ことは、「学ぶ」こと、「観察する」ことであり、学んで観察したものを活用して、意義ある結論を導き出すことです。分析は、点と点をつないで線にすることで全体像をつかみ、自らが納得できる瞬間(アハ体験)を得るための作業です。アルキメデスが浴槽の中で偶然の発見をしたのは、それまでの知識や学びを総動員して、すべてをつなぎ合わせることができたからです。彼は、王冠が純金でできているかどうかを調べるよう王様から命じられ、この問題に何日も頭を悩ませていました。ある日風呂に入ったアルキメデスは、バスタブから水が溢れ出る様子を見て、水が溢れ出した要因を分析し、この原理を使って金の純度を調べる方法を思い付いたのです。これこそまさに、アハ体験というものでしょう。


革新性


革新性とは、新たな視点で物事を見ること、いわゆる「new pair of eyes(新鮮な目)」を持つことです。これまでにも、革新性は多くの発明や発見のきっかけとなってきました。ニュートンは、ほとんどの人にとってはありふれた光景である「木から落ちるリンゴ」を、重力というレンズを通して見た結果、運動の3法則を導き出しました。革新性を持った研究者は、大発見や大発明がどこからでも生まれ得ることを知っています。重要なのは、よく見ることです。中国人研究者のトゥ・ヨウヨウ(Tu Youyou)氏は、最新の研究からではなく、古代中国の薬草に関する書物から得た知識を活かしてマラリアの治療法に関する画期的研究を行い、ノーベル医学・生理学賞(2015年)を受賞しました。


適応力


物事を新たな視点から見ることが革新性であるなら、自分が置かれている新たな状況にどれだけ素早く適切に対応できるかが適応力です。研究者には、さまざまな困難が押し寄せてきます。助成金申請書を書くために研究の焦点を変更する必要性に迫られたり、チャンスをつかむために海外に引っ越す必要があったり、査読者の指摘によって研究をまったく異なるアプローチで進めることになったりなど、さまざまな困難に直面します。適応力は、研究者としてのパフォーマンスや、どの程度成功できるかを決定付けるものになります。


クエイド・アザム大学(パキスタン、イスラマバード)生命工学部長のザブタ・カーン・シンワリ(Zabta Khan Shinwari)氏は、適応力の達人です。シンワリ氏は、指導教官の助言をもとに分子系統分類学で博士号を取得し、90年代半ば、当時急成長を遂げていたバイオテクノロジー分野に移りました。その分野で研究を続ける中で、研究の倫理的側面が科学的発見と同じくらい重要であると気付き、それを契機として生命倫理分野に舵を切ります。そして、この決断が後のUNESCOアヴィセンナ科学倫理賞2015年)の受賞につながりました。また、余談ですが、シンワリ氏は京都大学で博士号を取得するために、日本語と日本での生活に、なんとわずか2年半で適応しました。このエピソードについては、こちらの記事でご覧頂けます。


集中力


目標を定めることと、目標を見失わないことは、まったくの別物です。その違いは集中力にあります。清華大学(北京)基礎医学部長でAIDS総合研究センター長のリンキ・ザン(Linqi Zhang)氏は、成功する研究者とそうでない研究者を分けるものは、集中力だと考えています。ザン氏は、一途さ(single-mindedness)こそが問題解決に必要なものだと信じており、「あまりにも高い山に直面すると、普通の人は迂回することを考えますが、成功する研究者は、どれだけ時間がかかろうと、それを登るための方法を考えます」と述べています。


集中力があれば、出だしでのつまづき、途中での行き詰まり、リジェクト判定、論文の修正要求といったあらゆる困難に直面しても、研究の全体像やより大きなゴールを見据え続けることができます。なぜなら、最後に自分が立っていたい場所が明確だからです。


忍耐力


科学で成功するための資質を1つだけ挙げるとするなら、それは忍耐力です。これは、その他の分野にも当てはまるでしょう。偉大な科学的発見には何年もかかることがあるので、生まれたアイデアの芽を実らせるには、長期に渡る忍耐力が必要になります。忍耐力とは、研究の途上で何があってもあきらめない力、そして、直面するすべての障害を乗り越えるために努力する力です。


ラジウムとポロニウムを発見したマリー・キュリーは、驚異的な忍耐力で、この2つの元素の発見に至りました。彼女は若い頃、ドイツ占領下のポーランドに住む若い女性という立場で、計り知れない偏見や逆境に耐えていました。その後も、夫のピエールを事故で亡くし、失意のどん底に落とされました。それでも揺らぐことなく研究を続け、その忍耐力によって、2度のノーベル賞受賞という偉業を成し遂げたのです。


共同力


近年のノーベル賞やラスカー医学研究賞、あるいはその他の主要な科学賞を見ると、共同研究で成り立っている研究が増えていることが分かります。科学は進化しており、高度に専門化しているだけでなく、学際化も進んでいます。研究者は、科学的知識を得るため、新たな分野や課題を追求するため、論文を出版するため、被引用数を増やすためなど、さまざまな理由で共同研究を行います。さまざまな分野の選りすぐりの頭脳が力を合わせて問題解決に臨む共同研究は、気候変動や感染症の流行といった世界的課題の解決にも役立ちます。こうした動向は、国際共同研究から生まれた共著論文が増加しているという事実にも反映されています。共同力が前進する力になることは、明らかです。


コミュニケーション力


優秀な研究者は、優秀なコミュニケーターでなければなりません。研究者は、少なくとも編集者、査読者、共著者、資金提供者とコミュニケーションを取る必要があります。また、論文を通して読者に研究をうまく伝えることも必要です。

魅力的なアブストラクトがあれば、論文に興味を持ってもらいやすくなるので、より多くの読者を集め、被引用数を増やすことにつながります。助成金申請書がよく書けていれば、しっかり検討してもらうことができ、受諾につながりやすくなるでしょう。その他にも、科学をコミュニティ内外の人々に届けるには、さまざまなコミュニケーションスタイルを身に付ける必要があります。学会では、分野に通じた聴衆に向けて研究をプレゼンする方法を心得ていなければなりません。一方で、記者や一般の人には、より分かりやすい手法で研究を伝えなければなりません。


今日では、研究を幅広く伝えるためのコミュニケーション手段がいくつもあります。たとえば、ブログや動画などのマルチメディア形式のもの、より視覚的なインフォグラフィックやグラフィックアブストラクト、あるいは聴覚的なポッドキャストなどがあるので、自分に合ったものを選ぶことができます。


先見性


発明や発見ができるのは、科学者がその可能性や必要性を早い段階で見通せるからです。2019年のノーベル化学賞を受賞したスタンリー・ウィッティンガム(Stanley Whittingham)氏、ジョン・グッドイナフ(John Goodenough)氏、吉野彰氏が自分たちの発明の必要性に初めて気付いたのは、1970年代に起きた世界的な石油危機の頃でした。この危機は、将来的に化石燃料への依存から脱却する必要があること明確にしました。それから30年が経ってさまざまな発展を遂げた世界に、彼らは、現在ではコンピューターや車などの幅広い機器に動力を与えているリチウムイオン電池という発明品を贈りました。先見の明とは、先を見越すことであり、そのビジョンを現実にするために努力するということです。


誠実さ


誠実さは、科学の柱となるものの1つです。「Great science is built by standing on the shoulders of giants(偉大な科学は巨人の肩の上に乗っている)」という言葉がありますが、この「肩」に誠実さが欠けていたとしたら、その上に立つものがさらに発展することは望めないでしょう。自分の専門分野に情熱を注ぎ、懸命に研究を行い、生み出せるインパクトの可能性を理解している研究者は、誠実さに突き動かされているものです。そんな研究者は、どんなときでも(きわめて競争的な状況でも)最善の倫理的慣行に従います。その行動は、他者への手本となっています。


情熱


偉大な研究と偉大な研究者の核にあるのは、情熱です。さまざまな挫折や困難に直面してもその歩みを止めないのは、より深く掘り下げたい、分野や社会に変化をもたらしたいという情熱があるからこそです。


トーマス・エジソンが失敗を繰り返しながら電球の発明に至ったのも、情熱があったからです。マリー・キュリーが逆境や災難を乗り越えられたのも、ダーウィンが30年に渡って生物の進化の研究を掘り下げ続けられたのも、ヨウヨウ氏が1600年前まで遡って治療法を発見したのも、情熱があったからです。


どうか、自分の目標に近付くための道を歩み続けてください。そして、その道を進み過程で、成長し続けてください!


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