追試の掲載が稀である理由とは?

追試の掲載が稀である理由とは?

こんにち、科学は急速に進歩し、新しい発見が毎日のように明らかにされています。こうした状況の中、追試が科学の発展において重要な部分を担っていることが判明されるかもしれません。いかなる発見や研究であっても、その妥当性は科学においてきわめて重要です。たとえば、心理学者ダリル・ベム(Daryl Bem)が行い論議を呼んだ研究 が注目を集めているのは、その結果を再現することができなかったからです。ある研究者がある時点で得る結果は、異なる状況下では得られない可能性があるということが生じるのかもしれません。ですから、確立された結果として認められるためには、その結果が再現可能でなければならないのです。

 

確立された結果の再現に取り組む研究を、追試(replication studies)といいます。追試では、ある研究と方法は同じにしますが、別の被験者や別の状況のような、異なる変数を使って、その研究を繰り返します。こうすることで、その研究が、場所、文化、年齢層、性別などが違っても一般化されるのかそうでないのかを判明することができます。科学の論文でほとんどの場合、『方法』が詳しく書かれていますが、その理由の1つとして、再現可能性を求める気もちがあります。方法で提供される情報により、他の研究者がその研究を再度行い、正確かどうか評価することができるのです。

 

科学論文の多くが査読を受けていますが、論文で使用された方法や得られた結果を検証(実証)するためには、査読だけでは十分ではありません。それで、この検証プロセスにおいて追試が不可欠なのです。カリフォルニアのスタンフォード大学医学部の疫学者ジョン・イオアニディス(John Ioannidis)は、発表された研究結果の大部分が誤りであると報告しています 。結果の再現に成功することによって、もとの研究者が何ら不正行為を行っておらず、研究結果も偶然の結果ではないということが証明されるのです。さらにまた、追試を行うことで、特定の変数を使用したために生じたかもしれないランダムパターンを排除することも可能です。ある研究を遠くはなれたところでも再現できれば、その発見を別の状況で応用することが可能ということにもなります。さらに言うと、追試が新しい研究を呼び起こすこともあります。例を挙げると、A薬が腸チフス菌に効果があることを示す研究を繰り返す研究者がいたとして、その研究者は腸チフス菌に別の薬をテストしようとを考えるかもしれません。あるいは、腸チフス菌についてもっと詳しく研究し、新たな発見を確立するかもしれません。こうして、さらなる研究が生み出され、(もともとの)研究も改良される可能性があります。

 

それでは、科学にとってこれほど有益なものなのに、なぜ追試を着手され、掲載される追試がこんなに少ないのでしょうか? 一番の理由は、追試の掲載に対する偏った考え(バイアス)です。追試は画期的な結果を報告しないため、たいていのジャーナルは追試をつまらないものと思っています。ですからジャーナルに好かれていないのかもしれません。その上、研究者は、革新的な結果を生み出しそうなプロジェクトを追求したがります。そうしたプロジェクトならば、有名になりますし、助成金を獲得させてくれるでしょう。したがって、追試が行われ掲載されるのは、追試ではない研究に比べると非常に稀になるのです。

 

追試は、科学の進歩において重要な面を担っていると考えられていますから、追試に対する一般的な見解は変わるべきだと考える研究者もいます。ハーバード大学教授のゲイリー・キング(Gary King)の言葉によると、「再現(repetition)は、それ自体を目的とみないで、研究で使われる方法、もとの研究の著者の考え方、著者が直面したはずの複雑な問題、そうした問題に対処するため考え出された解決策に精通する方法としてとらえる、というところに秘訣がある。ひとつの実験、あるいは研究全体を追試することは、研究とはどういうものか様子を知ろうとしている若手研究者にとって有益な場合がある」、とのことです。こうした考えを支持する研究者は、追試に対する見返りがあり、追試が科学に対し価値ある貢献をしているとみなされるならば、研究者も先行研究の結果の実証に関心を持つだろう、と思っています。

 

新しい理論や発見は絶えず発表されていますが、正しくて、将来の発見の基礎となるような研究を見つけ出すのが現代の課題です。追試が一役買い、科学をより信頼性が高く確実なものにするため役に立つのが、まさにこの点です。

 

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