オープンアクセスについて研究者なら知っておきたいこと

オープンアクセスについて研究者なら知っておきたいこと

オープンアクセスは、研究の継続的な発展を促しつつ人々が科学的知見に触れる機会を増やすために、誰でも研究にアクセスできるようにするべきだという前提に基づいています1論文出版には、従来からの購読型とオープンアクセス型の2つのモデルがあります。この2つのモデルについて、研究者はその長所と短所も含めてよく知っておく必要がありますが、条件等について分かりにくい部分もあるかもしれません。そこでこの記事では、オープンアクセスの種類とその概要について説明するとともに、ジャーナルへの論文投稿時に購読モデルかオープンアクセスモデルかを選ぶ際に考慮すべきポイントについて解説します。


購読モデルとオープンクセスモデルの基本

 

購読モデルは、ジャーナルコンテンツにアクセスするために読者が料金を支払う従来からある方式です。具体的には、研究機関図書館ジャーナル一括購読契約を結んでいて、学生や研究者はその契約に基づいてジャーナルコンテンツにアクセスできるという形態が一般的です。ただ、研究機関とのつながりない人や、購読対象になっていないジャーナルを読みたい場合は、別途料金を支払わなければなりませんこのモデルでは通常、著作権は著者からジャーナルに譲渡されます。

 

オープンアクセスモデルは、誰でも無料で論文を読める方式です。通常、オープンアクセスジャーナルに論文を掲載するためには論文掲載料(APC)を支払う必要があります著作権は、著者が保持するケースが一般的です。オープンアクセスジャーナル主に、共有と再利用を可能するクリエイティブコモンズライセンス使用されます。オープンアクセスモデルの種類については後ほど触れます。



学術出版トレンド

 

STM Global Brief2によると、2019に出版された学術論文の30%以上がオープンアクセス公開されました。英国などの一部の国ではその割合はさらにいものでした。研究へのパブリックアクセスが引き続き促されていることを考えると、この割合まだまだえていくでしょう

 

オープンアクセスは、研究への平等なアクセスを大きく前進させたという意味で、学術出版における重要な変化と言えます。従来の購読モデルによるアクセス年々高額になっており、とくに発展途上国の研究機関にとっては法外な価格になっています。そのような中で、オープンアクセスは研究への公平なアクセス機会を提供しています。

 

完全オープンアクセスですべてのコンテンツを無料で提供するジャーナルもあれば、一部のコンテンツのみを無料提供し、残りを有料で提供しているハイブリッドジャーナルもあります。さらに、一時的な閲覧制限期間を設けたオープンアクセスを適用するジャーナルもあります。



オープンアクセスの種類

 

オープンアクセスには主に、ゴールドモデルとグリーンモデルと呼ばれる2つの種類があります1以下はこ2つのモデルの概要ですが、このほかにもさまざまなバリエーションがあります。通常は、以下で説明した場合を除いて査読が行われます。

 

ゴールドモデルこのタイプのオープンアクセスジャーナルは、読者に無料オンラインコンテンツを提供します。論文掲載料(APC)は通常、著者が負担しますが、著者の所属機関または資金提供期間が賄うことあります。

 

グリーンモデルこのモデルでは、論文は購読ジャーナルで公開され、論文受理後のバージョンが、公開前にオープンアクセスリポジトリに保存されまセルフアーカイブ。この方法は、APC賄えない場合によく使れます。ただし、査読前の論文が保存されることもよくあります。また、セルフアーカイブを許可していないジャーナルもあるので、著者はリポジトリに保存する前にジャーナルに確認する必要があります。

 

この2のモデル以外にもバリエーションがあり、たとえば購読ジャーナルで、特別号や特定の論文が無料で公開されることがあります。また、一部のジャーナルはダイヤモンドまたはプラチナオープンアクセスと呼ばれるモデルを採用し、著者も読者も料金を請求ません。



オープンアクセス

 

オープンアクセスモデルの誕生1991年にさかのぼます。これまでの主な出来事を振り返ってみましょう3

 

  • 1991 – 米国の物理学者ポール・ギンスパーグ科学論文のオンラインリポジトリを開設。後にArXiv.org名称変更され、現在約200万件の論文登録されている
  • 1993 – 米国オープンソサエティ協会が設立される。2002 年にオープンソサエティ財団(OSF)に改名。OSF自由でオープンなアイデアの交換を世界中で促してい
  • 1997 – オープンアクセス出版の電子データベースScientific Electronic Library Online (SciELO)がブラジルで開始。
  • 1998  – 公的資金を受けた研究へのオープンアクセスを促す非営利の取り組みであるパブリックナレッジプロジェクト (PKP) がカナダで創設される
  • 2000 – 初のオープンアクセス学術出版社と言われるBioMed Central設立2008年にSpringerに買収され、世界最大のオープンアクセス出版社となる
  • 2001 – 従来の出版に代わるものとしてPLOS公共科学図書館が設立され、180か国の科学者が参加。PLOSのジャーナルであるPLOS ONEは現在もっとも多くの論文を出版してい
  • 2002 – オープンアクセスと研究論文に関するポリシーの公式声明であるブダペストオープンアクセスイニシアチブ (BOAI) 公開10 周年を機に具体的な推奨事項がいくつか追加された。
  • 2008 – 国立衛生研究所 (NIH) のパブリックアクセス方針が公式本方針によるとNIH資金提供た研究は公開後12か月以内にフリーアクセスにしなければならない
  • 2012 – アカデミック・スプリング運動の開始。世界中の学術関係者が、従来のジャーナル出版ではなく論文への無料のオンラインアクセスを支持し始めた。米国で開始されたAccess2Researchキャンペーンでは、納税者が資金提供した研究一般に無料公開されべきであると主張
  • 2013 - 2014 – ベルリンとワシントンの学生や若手研究者のグループが、科学研究、データ、教育リソースへのオープンアクセスに関する会議を開催。
  • 2018 – 国際的な研究助成機関の連合体であるcOAlition-S、すべての研究をオープンアクセスにすることを目指すプランSを発表。


論文出版形式決めるに考えるべきこと

 

論文をどこで発表するかを決めるのは難しいプロセスですまた、どのような形式を選んだとしても、それぞれに長所と短所があります。論文投稿先を決る際3つのポイントを紹介します4

 

  • 掲載料オープンアクセスは必ずしも無料というわけではありません。通常は著者が費用を負担しますが、所属機関や助成機関が賄うことるので、投稿前に対象ジャーナルに確認しましょう。倫理的にまっとうなオープンアクセスジャーナル費用について事前に明確に示しています。
  • 著作権オープンアクセス出版では、著作権は著者が保持します。ただし、ジャーナルが採用するライセンスによっては、読者によるコンテンツ使用に制限があるので、ジャーナルが提供するライセンスに注意する必要があります。一般的に使用されるライセンスは、クリエイティブコモンズライセンスです。
  • ハゲタカジャーナルハゲタカジャーナルへの投稿は避けましょう。ハゲタカジャーナルは虚偽の内容や曖昧で誤解を招く情報を提供し通常の慣行から逸脱した振舞いをします論文投稿する際は、ジャーナルについて事前によく調べましょう


オープンアクセス関連のリソース

 

以下、オープンアクセスに関するデータベースとリソースですぜひ参考にしてください。

 


参考資料

 

1. Majumder K. An early career researcher's guide to open access publishing. Editage Insights.

https://www.editage.com/insights/a-young-researchers-guide-to-open-access-publishing [Accessed October 4, 2022]

2. STM Global Brief 2021. https://www.stm-assoc.org/2022_08_24_STM_White_Report_a4_v15.pdf

3. Cold Spring Harbor Library. Open Access: History & Policies. https://cshl.libguides.com/open_access/history_policy#:~:text=The%20open%20access%20movement%20began,open%20source%20and%20open%20courseware [Accessed October 4, 2022]

4. Editage Insights. INFOGRAPHIC: Open access explained: Why publish open access? https://www.editage.com/insights/open-access-explained-why-publish-open-access [Accessed October 4, 2022]

 

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