グローバルな研究拠点として台頭:カタール

グローバルな研究拠点として台頭:カタール

昨今の世界経済は過渡期にあり、革新・成長・開発の原動力としての知識の重要性は確実に高まっています。発展途上国の多くは、天然資源への依存から脱却して人的資源にシフトしようとしています。湾岸諸国も例外ではありません。中東の国々は長年にわたって原油・天然ガス資源に依存してきましたが、二酸化炭素(CO2)排出量ゼロを目指す時代に備えて、教育や研究への投資を増やしています。エルゼビアから出版されたある論文によると、カタールはそのような方向に着実に歩みを進めています。77ヶ国の分析に基づいたこの論文では、カタールは世界一魅力的な研究拠点であると述べられています。


カタールでの研究は、数十年前までは取るに足らない件数しかありませんでした。しかし、1995年に革新的な政府が政権を握ると状況は変化し始め、2003年に改革派の新憲法が認められました。2008年には「カタール国家ビジョン2030」(Qatar National Vision 2030)が策定され、人的資源を育てるために教育・研究部門を強化する取り組みが開始されました。カタールは実に、湾岸地域で初めて、知識経済という概念を展望の土台に据える国となったのです。


エルゼビアの論文によると、カタールに入国する研究者の割合(18%)は、出国する研究者の割合(7%)を上回っています。研究者の純流入率は11%で、カタールが研究拠点として魅力の高い地域であることを示しています。カタールは研究者にとって、なぜそれほど魅力的なのでしょうか?


研究投資の拡大

カタールは、世界経済の低迷期にあっても国内総生産(GDP)の伸び率の高い、世界で最も豊かな国の1つです。現在は石油・ガス業界の収益のうち2.8%を研究支援に投資しており、これは年間1億ドルほどにのぼります。この投資は、国内や中東地域、さらに世界の利益となる研究を増やし、研究界での国際的地位を確立するという目的で行われています。


最先端の施設と機関

国家ビジョンに沿って、インフラや施設にも投資が行われています。カタール財団(Qatar Foundation)は、世界ランキング上位の有名大学(コーネル大学、カーネギーメロン大学、ジョージタウン大学など)の分校キャンパスを国内に設置しました。政府は基礎レベルから研究を発展させようとしており、新たな研究機関における組織のインフラ構築を支援しています。このような背景により、研究を促す支援体制が整えられています。


潤沢な資金

研究の最先端をいく米国や英国といった国々でも今日では研究資金の確保が困難になっていますが、カタールでは資金を得ることが比較的容易です。カタール国立研究基金(Qatar National Research Fund、QNRF)は、設立された2006年からの6年間で、700件以上の研究プロジェクトに6億ドル以上を拠出しています。QNRFが実施する「国家重要研究プログラム」(National Priorities Research Program)は、1~3年間の研究プロジェクトに年間で最大35万ドルまでの支援を行なっています。


共同研究モデル

「国家重要研究プログラム(National Priorities Research Program)」では、平均85万ドルの助成金を提供して国際共同研究を奨励しています。この助成金のうち、35%まではカタール国外での使用が可能で、残りは国内の研究機関で使われます。同プログラムは、官民が提携してカタール内外で協力関係を構築することを奨励しています。この共同研究モデルは、国内の研究文化が育ち、世界の研究者から注目を集めているという点で成果がみられます。


給与の魅力

カタールは国民1人あたりの所得が世界で最も高い国で、生活水準は中東諸国で第2位です。研究者の給与は欧米諸国に準じており、所得税がないので実質所得はさらに高くなっています。大学教授(教員)は基本給に加えて手当があり、住宅・通勤費も支給されます。寛大な有給休暇制度も整っています。


地域・文化の魅力

カタールの人口の83%は、一時滞在者である外国人で、そうした人々が高学歴労働力の大部分を占めています。このためにコスモポリタンな雰囲気があり、外国人にとって安心感のある、おおらかな国際的環境があります。また、カタールは欧州・アジア・アフリカの中心に位置し、相互の関係性も良好なため、世界を旅するにも最適な場所といえます。これは、カタールにやってくる研究者にとってプラスアルファの魅力となっています。


急成長を遂げる「ナレッジシティ(知識都市)」、ドーハ

政府による大規模投資により、ドーハは世界で最も急成長を遂げている都市の1つです。また、教育を受けた高度な技術を持つ労働力もあるため、ナレッジシティ(knowledge cityとして)急速に台頭しています。カタール基金(Qatar Foundation)の取り組みである「教育都市」(Education City)は、ドーハ中心部から離れた郊外に位置しており、教育機関から研究機関までの文教施設や、国際的な大学の分校が集められています。そして、研究の共有を促し、さらに大学が企業や研究機関との連携を深めるよう支援するフォーラムの役割を果たしています。そのような環境に身を置けることは、研究者にとって魅力的な点といえるでしょう。

 

以上のような状況からは明るい展望が見えるものの、カタールにおける知識経済の成長と維持は、移民への依存度が高くなっています。潤沢な資本があることは非常に有利な点ですが、財政面と知力面の両面で、リソースを効果的かつ効率的に分配することがカギとなっています。知識経済を目指して国が前進できるかどうかは、政府が世界から集まった才能をいかにうまく活かし、つなぎとめられるかにかかっています。


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