若手研究者に体系的トレーニングが必要な理由

若手研究者に体系的トレーニングが必要な理由

終身雇用であろうとなかろうと、世界の研究者たちはきわめて競争の激しい環境で活動しており、高インパクトファクターのジャーナルで論文を出版しなければならないというプレッシャーにさらされています。エディテージは、世界の約7000名の研究者を対象とした、学術出版に関するアンケート調査を実施し、その結果をまとめたグローバル調査報告書を発表しました。この報告書は、とくに非英語圏出身の研究者が直面している問題とその重大さに注目しています。調査結果から明らかになったのは、研究者(とくに若手研究者)に対する適切な教育リソースやトレーニングが不足しているということでした。


たとえば、研究/学術職の在職期間が5年以内の若手研究者は、キャリアがより長い研究者に比べ、リサーチクエスチョンの設定などの段階で、はるかに困難を感じていることが分かりました。また、オープンアクセス(OA)についての知識が十分でないケースも多く、OA出版に対する理解が不足していることや、OA誌での出版経験がないことが明らかになりました。さらに懸念すべきなのは、出版倫理への理解/意識が総じて低かった点です。


回答者の67%が、「困難に直面した場合は、指導教官や先輩/同僚を頼る」と回答していました。しかし、若手研究者(とくに一流機関に所属していない若手研究者)の全員が、適切に導いてくれる高度な能力と経験を持つ指導者に出会えるわけではありません。回答者の1人はこの点について、次のように述べています:


「学術出版の何たるかを理解するには、研究グループの一員でいるか、経験豊富な指導者の近くにいる必要があると考えています。科学出版のブラックボックスをオープンにする方法があれば、一流大学で有能な指導者の下で学ぶ場合と、中流大学で並の指導者の下で学ぶ場合の差を縮めることができると思います」


解決方法やヒントを、インターネットで調べると答えた回答者も同程度の割合で存在していました。この方法は、情報を素早く手軽に得る手段として便利なように思えますが、実際は、研究者の時間の使い方として好ましくないと言えるでしょう。なぜなら、オンライン上にある膨大な情報の中から、重要で関連度が高いと思われるものを取捨選択する必要があり、この作業には何時間もかかる可能性が高いからです。さらに、学術ライティングのようなテーマに関しては、オンライン上の膨大なリソースのすべてが最新情報でなおかつ信頼に足るものであるとは限らないので、逆に混乱してしまうことになりかねないのです。


時間に追われがちな若手研究者にとって、ベテラン研究者や終身雇用権を持つ研究者が手にしているような権利・リソース・財政支援が得られない環境では、論文を出版することは楽な道のりではないでしょう。


「(重要なのは)若手研究者がよりアクセスしやすいプロセスを作ることです。論文出版の足がかりをつかむことは、時間がかかるだけでなく、ときに研究者のやる気を削ぐほど困難なものです」


若手研究者には、研究や出版戦略の計画の立て方、ジャーナル選び、ジャーナル編集者とのコミュニケーション、投稿の準備、(場合によっては外国語での)論文執筆、リジェクトやネガティブな査読結果への対応など、学ぶべきことが非常に多くあります。前に進むためには、これらのノウハウを素早く習得しなければならないのです。


アンケート調査では、「学術出版にどのような変化を期待するか?」という問いを設けました。回答の中には、とくに若手研究者への教育/トレーニングの必要性を述べる声がありました。


「博士課程在籍中の若手研究者に対して、学術出版のプロセスを明確にしてほしい」


「学術出版に関する体系的なトレーニングを、(卒業後の)あらゆるレベルのプロフェッショナルトレーニングに組み込むべき」


「学生の間に、学術出版関連のガイダンス、ワークショップなどの機会がもっと提供されるべき」


以下に、研究者たちが期待していることを簡単にまとめました:
 

  1. 学術出版産業の何たるかを説明してくれる体系的かつ継続的なトレーニング/コースの提供
  2. ハゲタカジャーナルへの認識を高め、それを判別/回避するためのガイダンスを提供するトレーニング/リソース
  3. 大学院生をはじめとする(とくに非英語圏の)研究者を対象とした、科学論文を書くための体系的・継続的なトレーニングの提供
  4. 研究の方法論に関する無料のコース/リソースの提供


エディテージ・インサイトに頻繁に寄せられる質問の傾向と頻度を考えると、このような回答が得られるのはとくに驚くべきことではありません。学術出版について理解することは、研究者人生を送る上で欠かせないことです。したがって、若手研究者をサポートするベストな方法の1つは、学術出版について知っておくべきあらゆることに関する体系的なトレーニングを、大学院在籍中に提供することです。


高等教育機関・研究組織・助成団体は、このような現状の不備を認識した上で、何も対策を取っていない場合は、学生や若手研究者が質の高いトレーニングやリソースという支援を確実に受けられるような措置を講じるべきでしょう。教育機関/研究機関は、コース/リソースを開発し、組織内で正式な指導プログラムを提供するなどの対策が取れるはずです。あるいは、学術出版に関する質の高い教育リソースやトレーニングプログラムを提供している組織と提携/連携することもできるでしょう。


このような対策を取ることで、意欲的な研究者がキャリアをスタートさせるための準備を整えやすくなり、これまで見られた不利益の一部を解消することができるはずです。結果的に、時間や労力を節約することにつながるので、ストレスが軽減され、研究により一層集中できる環境が生まれるでしょう。


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