世界に飛び出すとき―研究者のためのキャリアアドバイス

世界に飛び出すとき―研究者のためのキャリアアドバイス

競争が激しい学問の世界で、研究者はただ研究さえしていれば良いわけではありません。研究者として、管理業務を行う機会も多いものです。研究者仲間や実験室のメンバーとの連携を図り、資金を確保し、論文を出版した実績を残し、学会に出席し、専門を同じくする人たちとのネットワークを広げ、今後の研究のための公募を探し、そして「この研究が終わったらどうするのか?」という、自分のキャリアについての大きな問いに対する答えを探さなくてはならないのです。研究者の多くは、研究を続けるか、あるいは学問の世界から出て研究職以外の仕事を開拓するかという、キャリア上の究極の決断を迫られます。大学を離れてキャリアを築くことを選べば、販売やマーケティングなど、研究に全く関係のない道に入ることになるかもしれません。一方、研究を続けることを選んでも、安定したポスドクの地位や教職の獲得、研究資金の確保など、それなりの困難がつきまといます。キャリアの選択肢を模索することは、考えただけでもストレスとなります。でも、正しいキャリアを選ばなければと心配する必要はありません。あなたと同じ道を歩んでいった人は大勢います。彼らの経験とアドバイスは、様々なキャリアの中から選ばなければならないというジレンマを解消する助けとなるでしょう。

Naturejobs Career Expo 2014のワークショップ「学問の世界におけるキャリアパス」では、4人の研究者が、研究生活を終えた後の選択によってキャリアが形成されていった過程や、現在の職におけるプラス面・マイナス面について語ってくれました。キャリアに関する彼らの経験とアドバイスは以下の通りです。

<研究が好きなら研究を続ける>
ジム・アシャーウッド(Jim Usherwood)博士(英国王立獣医化大学、ウェルカムトラスト・シニア・リサーチフェロー)は、研究に情熱を燃やし、それを仕事にしました。自分の仕事(と研究)を存分に楽しんでいますが、資金を確保するためには論文書かなければならず、論文を書くためには資金を確保しなければならないという悪循環に対処しなければならないことについて忠告してくれました。

<学術界における研究以外のキャリア>
アニタ・ホール(Anita Hall)博士(インペリアル・カレッジ・ロンドン、シニア・ティーチングフェロー)は、博士課程修了後、指導業務に限定したポジションに志願して講師になりました。「教えることは、研究よりもずっと解放的」と感じています。ホール博士の職務には、講座内容の計画、指導、評価、キャリア相談などがあります。

<両方の”いいとこ取り”をする―教えながら研究する>


ルイーズ・ホースフォール(Louise Horsfall)博士(エジンバラ大学バイオテクノロジー分野講師、Horsfall研究室)は、どちらの世界にも興味があったので、両方とも選びました。二役こなすのは大変ですが、教えることによって「研究で広い視野が得られる」と感じています。

<ビジネスの素質がある人の選択肢>
ロレーン・カー(Lorraine Kerr)博士(エジンバラ大学生物科学学部、実験担当統合プロジェクトマネージャー)は、研究施設を管理し、バイオテクノロジー企業と連携してビジネス関係を構築する仕事をしています。企業家としてのスキルを活かす研究者の典型的な事例です。

 

自分に合ったキャリアパスとは、必要なスキルを持っているというだけでなく、それを活用しつつやる気を持続させることができ、自分の可能性を最大限に引き出すことができるものです。競争で優位に立つためのアドバイスとして、ワークショップのパネリストたちは次のように語っています。

移動を厭わない
居場所を変えると、新しい人々、スキル、仕事の機会に出会うことになり、それが学問の世界でのキャリア形成に役立ちます。カー博士の言うように、「常に移動しなければならないわけではない」ですが、移動という考えを厭わず、機会があれば検討すべきです。外国に行く場合は、戻った時にネットワークを一から構築し直さなくてもいいように、自国の同僚たちと連絡を取り続けた方が良い、とホール博士はアドバイスしています。

メンターを見つける
ホースフォール博士によると、研究者の人生において、メンターは重要な役割を果たします。研究者には「自分の現状から離れたところにいる他人からの励まし」が必要だからです。メンターを見つけるプログラムが大学にあれば、利用しましょう。学問の世界にいる先輩で、個人的成長を助けてくれる人とつながりを持つことが大切です。

調子の良い時・悪い時に備える
困難に直面する場面や、生産性の低下を感じる局面もあるでしょう。資金難に備えて、予備の財源や助成金を確保しておくのが得策です。アシャーウッド博士は、そんな時「一緒にビールを飲める友達」が大事だと強調します。上を向いて進み続けましょう。

学問の世界における女性
男性優位の学術界で、不利だと感じている女性研究者は数多くいます。自分を信じ、自分の可能性を自覚し、興味の対象を追求することでしか、道は開かれません。拒絶されても、受け流しましょう。学問の世界では、助成金の申請、論文の投稿、求人への応募などの場面において、拒絶は避けられません。現在、学術界の様々な領域でアテナSWAN憲章が支持され、STEM分野の研究・就職の機会における女性の公平な登用を支援しています。

 

他の職業における決断と同様、学問の世界で自分に合ったキャリアにたどり着くカギは、自分自身です。自分にとっての優先事項を選び、自分が最も駆り立てられるもの―研究、管理運営、指導、相談、起業など―が何なのかを理解することです。選択肢はいくつかありますので、自分のスキルを活用して、独自のキャリアパスを築いても良いでしょう。もしあなたが、教えることが得意で、管理能力もあるならば、両方の道を検討することも可能でしょう。あるいは開拓精神に富み、実験が好きなら、才能を生かせるベンチャー企業を見つけるのも良いでしょう。自分が必要とされていると感じられるキャリアを選択しましょう。さらには、自らがリーダーとなり、自分だけの道を切り開いて行ってください!

こちらの記事「Dr. Eddyのお悩み相談:大学に残るか、産業界でポストを得るか」も併せてお読みください。

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