「家に帰りたい。制服を脱ぎ捨てて、この場を去りたい」

「家に帰りたい。制服を脱ぎ捨てて、この場を去りたい」

私は、ブラジル南部にある平凡な公立大学の研究者です。ニュースをよく見ている方は、このプロフィールだけで、私がこの記事で何を書こうとしているのを予測できるはずです。ピンとこない方は、ぜひ続きを読んでみてください。


科学者になること、大学で教鞭を振るうことは、昔からの夢でした。これほど重要でやりがいのある仕事は、ほかにないと信じていました。そしてその夢は、2011年に叶いました。当時は、大学の改善と拡張を目指す政府の方針によって、公立大学に潤沢な予算が割り当てられていました。ブラジル史上初めて、大学がさまざまな層の人を受け入れ始め、ブラジル中の低所得層の学生が、進学と学位取得を目指すことのできる時代でした。しかし、残念ながら、科学や研究にその恩恵が下りてくることはありませんでした。


ブラジルは、研究者が研究費を獲得する機会に乏しく、最先端の研究を実施できるテクノロジーとインフラを備えた研究所や大学は、ほとんどありません。つまり、私を含めた研究者たちは、最低限の環境で研究を行なっているということです。私たちが持っているのは、強い目的意識だけです。幸いにも、研究者の目的意識の強さは尋常ではありません。目的意識と、世界をより良くしたいという意思の固さは、誰にも負けませんが、最低限の設備(たとえば、イス数脚、顕微鏡数台、精密天秤1台、発芽試験用のグロースチャンバー1台程度の備品)しかない小さなラボで活動し、必要な消耗品や機材などは自費で賄っているのです。


私たちは、学部生・院生の教育と指導、次の会議日程を決めるためだけの長く退屈な会議への出席、教育とも研究とも無関係な職務などのタスクをすべてこなしながら、論文を書いています。しかし、論文がようやく出版されたときは、それまで流した汗や涙や血が、すべて報われた気分になります。待ちに待った赤ちゃんが生まれてきてくれたような感覚です。とはいえ、この子の誕生を祝福してくれる人はいないかもしれませんし、非難されることだってあります。それでも、私はその子のことを誇りに思うのです。


そんな中で、ボルソナロ政権が発足しました。この政権は、公立大学を、マリファナを吸っているだけの連中が集まって混沌を生んでいる場所と見なしており、教員の給与も高すぎると考えています。教育や研究への予算削減では飽き足らず、私たちの給与まで下げようとしているのです。何より残念なのは、国民の多くが、その政策を支持しており、私たち教員が役立たずだと思っているということです。


今、私たちはパンデミックの真っただ中にいます。研究者や医療従事者はスーパーヒーロのような存在のはずなのに、政府にとってはそうではないようです。何千件もの奨学金が消滅し、私たちの給与を下げようとする動きも再び浮上しています。国民は、私たちが何年も研究を重ねた結果に基づく判断や意見を信じず、新型コロナウイルス感染症が「ただの風邪」で、「死ぬのは、遅かれ早かれ死ぬことになっている高齢者だけ」と言っている人間に耳を傾けているのです。


私はもう疲れました。怒り、罪悪感、無力感、無能感に襲われ、叫び出したい気分です。


[著者注:この記事のタイトルは、ピンクフロイドのアルバム『The Wall』に収録されている曲『Stop』の歌詞を引用したものです。]

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